「生きる」という名前の犬が昨日死んだ。
冗談のような話だが。もちろん冗談ではない。
彼の名前は「リヴ」「live」だ。
名前を付けたのは2番目の姉で、当時中学1年だった姉は「長生きしてほしい」という事で
「生きる」という英単語を調べ「live」を見つけた。
「live」って「住む」じゃないの? 多分こんな会話してたと思う。
自分は全く英語なんて無縁の小学5年だったので特に気にしなかったが、
後に中学に上がって英語の授業が有ったときもの凄く違和感の有った英単語だ。
「生きる」と「住む」全然違う意味なのに英語だと同じなの!?と。
そんな意味をもったリヴは思い通り長生きしてくれた方だと思う。
18年だ。
最初来たとき母犬と離れたせいか、夜中ずっとキュンキュン鳴いてた。
3日もするとケロッとして餌をくれる僕らにすっかり懐いてた。
犬ってやつは・・・
リブは大きくなるにつれ、力が強くなった。小さかった自分は散歩は引きずられて走ってた。どんなに全力で走っても全く追いつけず、ただただ、引っ張られていた。
自分の首が首輪で絞められてるのにそれでも走るもんだからゼイゼイヒューヒュー言ってる。
犬ってやつは・・・
近所の空き地でリードを離すともの凄いスピードで駆けていた。
追いかければ逃げて、逃げては追いかけてきて。
暫く放置して走る姿が見えなくなり、何をしてるか見に行くと体をやたらと地面に擦り付けてる。
体がかゆいのかと思って体を掻いてやると手が異様に臭くなる。
臭い謎の物体に体を擦り付けてたのだ。
犬ってやつは・・・
一度離すとなかなか捕まらない。最後の最後でジャーキー系の犬用おやつで釣ってリードを付ける。多分気が済んでから食べに来てたと思う。
犬ってやつは・・・
こんな追いかけっこが出来る空き地がリブは好きだったんだろう。
空き地の近くに行くだけで大興奮。行く予定無くても引っ張られる。
でも最後にこの空き地に一緒に行ったのはいつだったか。
覚えてない。思い出せない。
高校に入ってからは自分の事優先で、部活やバイト、遊び。
「ちゃんと世話するから!」おやくそくのお約束で飼っても結局こうなる。
たまの散歩も面倒に。でも自分の都合で行きたい時は長く行く。
そんな勝手な自分にも構わず、遅くに家に帰って来た時、早くに家を出るとき、いつでもしっぽをこれでもか!というほどブンブン振り回す。
犬ってやつは・・・
群馬に行ってからはより一層。
時々帰って来て散歩に行くと、いつの間にか走っても自分の方が早い事に気がつく。
走ってもすぐに歩こうとするようになる。
そして散歩中走る事すらしなくなった。まぁ、歩くのが散「歩」であるが。
段々と目に見えて老いが来た。
口先の毛がおじいさんの様に白くなってきた。
いつの間にか目が白く濁ってきた。
耳が遠くなってきた。
会うたびにまた老けてくリヴが悲しかった。
今年の春は食欲が無くやせ細り、正直夏が正念場と思ったが、例年より暑く無かったのが良かったのか、なんとか越えられた。
でも今月の頭、とうとう歩けなくなったと連絡が来た。
歩く事も立つ事も出来ず、食事も水もあまり取らずに只只弱っていった。
覚悟していた時が近づいた。長くは無いと思っていても、歩けなくなったリヴを実際に見るのはとても辛く、写真も撮るか撮らないか悩んだ。でも結局一枚だけ残した。
それがやはり最後の写真になった。
立っている写真を、走っているビデオをもっと撮れば良かった。
こんな歩けなくなった写真は撮りたく無かった。
そんな事を思っても遅いのもわかっているつもりだったけど、やっぱりそう思ってしまう。
母がリヴの最後を看取る事が出来た。リヴは母の休日を見計らったのだろう。
知らせを受けても涙は出ず。まだ実感もない。
ブログにもfaceboookにも書かないつもりだったけど、やはり一度考えると眠れず、最後にあの空き地を一緒に走ったのはいつだったろう。と思い出しても思い出せず。
結局こういった形で思いを書き綴る事に。
人間捌け口が必要な生き物で、結局留めている事が出来ない。
犬は言葉にする事も出来ないのに・・・。
犬ってやつは・・・本当に人間の心を奪っていく。
犬ってやつは・・・
最後は看取れなくてごめんな。というか大人になって構ってやれんでごめんな。
ありがとう。リヴ。
2014.11.20