2022年の春に父の故郷である秋田県湯沢市に両親を連れて行った。その後、母からもう一度、秋田に連れて行ってくれないか、懇願されていて、ゴールデンウィークの出来事がある前から6月に行く事になっていた。


私は父の状態から乗り気では無かったが、楽しみにしている母の事を思うと「止めようか?」とは言えなかった。


2023年6月10日、2泊3日の予定で秋田に向かった。


早朝、千葉の自宅を出発、さいたまの実家で両親をピックアップし、早速、東北道で秋田へ向かった。


北上から秋田道に入り、錦秋湖で遅い昼食、日暮れ前に父の故郷に着いた。昔、父の元で働いていた職人の家へ立ち寄りご挨拶し、我々がその日宿泊する小安峡温泉の旅館で、その職人のご夫婦を夕食にご招待。


昔話に花が咲き、父は終始、にこやかだった。


翌朝、旅館のチェックアウト前に、母がこう言った。


「このまま実家で暮らしていても、子供たちに心配を掛けるだけだから、一緒に施設に入ろうってお父さんに言ったら、そうだな、って言ってくれたの。」(母)


母は嬉しそうだった。夫婦にこやかに会話する姿を見て、私も安心した。


「さいたまに帰ったら、2人で入れる施設を探そうね。」(私)


5月19日に介護保険認定の調査員が実家に来て、その結果がまだ出ていなかった。母と今後の段取りについて話し、父の認定結果が出次第、施設を探す事となった。


「調査員さんが、お父さんより私の方が心配だって言っていたよ。私が先に施設に入った方がいいんじゃないか、って。」(母)


確かに母も父の面倒で疲れ切っていた。


「そうだよね。お母さんも施設に入りたい?」(私)


「うん、子供に迷惑を掛けないように、お父さんと一緒に入って面倒を見たい。」(母)


実は夫婦で高齢者施設に入りたいと言うのは、母の兄夫婦が夫婦で同じ施設に入って上手く暮らしている、と言うことから、母もそうしたいと思っていたようだ。


これまでぼんやりとしていた前途が急に晴れて来た様な気がして、私も嬉しかった。


「じゃ、帰ろうか!」(私)


山深い宿を後にした。