ミネルヴァが残した座標、B06-32で発見されたのは、地下シェルターだった。
ただしそれだけでは無く、得体の知れない、と言っても人間なのだが、とにかく謎の男がそこで暮らしていたのである。
子供達の第一印象は、ほとんどが「変な人」であった。
確かに、この男がミネルヴァなら色々と事態は進展するのであろうが、冒険小説に偽装したガイドブックを作ったような、高度な知識を持っているようには見えない。
はたしてその考えは正解であった。
エマの「あなたがミネルヴァさん?」と言う問いに、俺はW・ミネルヴァでは無い、と無慈悲な回答をよこす男。
おまけにここにはミネルヴァはおろか、男以外は誰もいない無人のシェルターだと言う。
男が何者か?と言う事に関して言えば、彼はエマ達の先輩だった。所謂、農園からの脱走者だ。
仲間は全員死亡したと、なかなかハードな事を告げる彼は、何をしてもムダだから、ここにミネルヴァ関連のヒントとなるペンを置いて出て行けと言う。
取り付く島も無いとはこの事だ。
出て行かないと殺すとまで言われ、逆に殺す気など無いと看破したエマは、何をしてもムダじゃない、家族も仲間も希望もムダでは無いと啖呵を切る。
男は何やらトラウマを刺激されたようで、「ルーカス」「奴ら」と言う謎の単語を口にし、昏倒してしまった。
完全に変な人ですねこれは…。その間にエマ達はシェルターの調査を行う。
結論から言えば、ここは安心・安全が担保された拠点だった。水・食料・風呂や畑等の施設もあり、自活の為の環境が整っている。
そこに先ほど昏倒した、エマ達からはオジサン呼ばわりの男が戻って来る。レイとエマの考えはこうだ。
男は、脱走者としての先輩であり、尚且つ13年間をたった一人で生き残ってきた経験者だ。
この男をガイドとして、次の目的地「A08-63」へ到達しようと言うのだ。
取引に応じるつもり等まるで無い男だが、レイがシェルターの破壊装置を修理した、と告げると顔色が変わる。
そう、どちらにしろ、怪物の跋扈するこの世界ではシェルター無しに安心して暮らす事はできないのだから、これ以上ない取引材料になる。
ただ取引と言えば聞こえは良いが、これは一方的な脅しだ。
取引とは互いに差し出す物があって成り立つ物なので、子供達も中々にしたたかだと感心する他無い。
しぶしぶガイドの役目を了承した男が、エマとレイを武器庫へと案内する。
自分は案内だけで、二人を助ける気は無い。だから好きな武器を選べ。
ソンジュの薫陶から、逃げる事を優先した二人が選んだのは、かさばらない拳銃とナイフ、弓だった。
ここからは全滅のリスクを避け、エマとレイ、そしてこの男だけで目標のA08-63へ向かう事となる。
年下を残していくのは不安だが、どちらにしろ子供が何人いても厳しい事は間違いない。
守る者が無い方が、動き易くもなるだろうと思うと、やはり並大抵の胆力では無い。
目標地点までの日程は、最速の四日を見込んで走る三人。
シェルターのオッサンはやはり相当に鍛えられているらしく、エマとレイはついていくのがやっとであった。
そして、休む間もなく野良の人食い鬼が山ほど生息していると言う森に分け入る事になる。
子供なんだから休ませてやれよとは思うが、オッサンも命がかかっているし、チンタラしていては危険だ。
だからと言って絶望を味あわせる為に、どっちかが死んだら適当に引き返すと言うのも結構外道な思考だし、「順調なのはつまらない」とやや危険な方向に思考が向いている。
彼はきっと、トラウマらしき事件で人間性を喪ってしまったのだ、とは推測できるが、それでもちょっと危険すぎやしませんかね。
いつまでも行程が順調に行くはずも無く、三人の前に野良の人食い鬼が現れる。
オジサンは難なく撃退するが「今のダメージ再生するから」「奴ら仲間呼ぶから」「俺は助けないから」と中々致命的な発言の後、高見の見物を決め込んだ。
そう言う大事な事は最初に言っておいて欲しいが、二人とも死んだらシェルターを破壊すると言われているのに、そこまでヤバそうな事態に陥っても良いのだろうか?
一人だけなら楽勝で助けられる程の実力や経験があるのか。どちらにしろエマとレイは絶体絶命だ。
ここで7巻は終わりなので、続きはまた8巻で読む事になるだろう。


