貫井徳郎

帯の通り、悲しく、重く、深いお話でした。

何の変哲もない日常の中の、少しずつの怠慢だったり、小さな小さな犯罪だったり。
決して、悪意があったわけではない、いろんな人の行動が、取り返しのつかない事態を招く。

怒りたい、恨みたいのに、その相手が見つからない。
怒りや恨みからの絶望ではなく、それをぶつける相手がいないことへの絶望。
そして、最後にたどり着くもっとも深い絶望。

それでもそこから、一歩前へ進んだラストが印象的でした。

正しいことだけして生きていくことはできないかもしれない。
悪気なく、誰かを傷つけているのかもしれない。
でも、意識せず、誰かを救っていることもあるのかもしれない。
一見、まったく関係のない人たちの、これもある意味、絆、なのかもしれない。