父とは、割りと仲が良かったし、嫌いでもなかった。
でも父は、私にとって、駄目な大人の代表だったし、
最大の反面教師だった。
こんな大人になっちゃいけない、と、ずっと思いながら大きくなった。
野球がうまくて、野球は父から教えてもらった。
若い頃はボクシングもやっていた。プロになることを薦められたりもしたらしい。
昔はカッコよくて、女の子にかなりモテたとのこと。
若い頃の写真を見ると、確かにカッコいい。
本人も女の子が大好きだったし、かなり遊んでいたらしい。
それなのに、なのか、それだから、なのか、
私には、恋愛に関して、メチャメチャ厳しかった。
文学好きで読書家。文章を書くのもうまかった。
特に、太宰が大好きだった。
ユーモアもあり、人をよく笑わせたけれど、
他愛のない笑いというよりは、ブラックユーモアが多かった。
頭が良く、仕事もできた。
ラジオの深夜放送を掛けながら、仕事をしていた父の姿をよく覚えている。
立派な家庭に生まれて、何不自由なく育った。
溢れる才能を持ち、他人からみれば羨ましいくらいの人生を送っていながら、
それなのに、何か満たされないものを常に抱えていた。
太宰は、ただ作品が好きというより、
傾倒している、と言って良かった。
人生まで地で行くような、退廃的な人生を送り、
身体を壊して60代で死んでいった。
晩年は、死ぬまでに自伝小説を書きたい、と言い続けて、
結局、書けずに死んでしまった。
若い頃から入院を繰り返していたこともあったのかもしれないけれど、
社会的な生活もできず、大人として責務も果たせなかった。
だから、こんな大人になっちゃいけない、と、私はずっと思っていた。
ファザコンという言葉は、私の対局にある言葉だと思っているのだけれど。
あるときふと、あなたは父と似てるんじゃないかな、と思った。
失礼だよね。
父のようなダメな人間と一緒にしたら、気を悪くするよね。
でもね、なんとなく印象が重なるの。
あなたのことを考えていて、
久しぶりに父のことを思い出したんだもん。