

本の一部を掲載します
メキシコ駐在中、最大の事件がおきます
Part10:強盗団
ある土曜日の朝、会社の携帯が鳴りました。社長からです。
社長「会社の倉庫が賊に襲われて、商品在庫が盗まれたらしい。これから人事部長と現場の確認に行く。皆は何かあれば連絡するからそれまで動かないように。」
この第一報ではあまり深刻に事態を捉えてませんでしたが、時間とともに甚大な被害が明らかになり青ざめるのでした。
被害額は日本円にしてざっと5億円。盗まれた商品の数は1万個以上。
運びにくい大きな商品以外は根こそぎ盗まれて、広い倉庫の棚はほぼ空っぽになりました。
倉庫にはセキュリティが設置されていたし、そもそもどうやって大量の商品を運んだのでしょうか。
不可解極まるこの事件、全容は次のとおりです。
事件が起きた日、倉庫には通常通り30人前後のローカル(現地人)が作業をしていました。
その内の2人が内通者となり、賊が倉庫に侵入する手引きをしたようです。
具体的にはまずセキュリティシステムを切ります。
次に倉庫裏の搬入口進路を開門、そこに賊の大型トラック(10t車)2台が入ってくるのが動画で確認されました。
トラックを止めると50人近くの賊が下車、一気に倉庫へと入ります。
倉庫で作業していたローカルは賊を確認後、無抵抗のまま縛り上げられ一箇所にまとめられます。
倉庫を制圧した賊は急ぐことなくゆっくり12時間以上かけて商品をトラックへ詰め込み、悠々と去っていったのでした。
事件後、ローカルも含めて皆が茫然自失な状況でしたが、我われ日本人駐在員は2つの対応に集中しました。
ビジネス再開への道筋を立てること、メキシコの公的機関と連動した今後の犯罪対策を練ること。
商品は北米の親会社から輸入していましたが、いきなりメキシコ倉庫の在庫がゼロになる事態なんて誰も想定していない為、補充もすぐにはききません。
けっきょく在庫補充には1ヶ月以上かかり、商戦期向けに立てた販売戦略は全て水の泡となり、ビジネスを通常に戻すには膨大な時間と労力を要しました。
しかし、この本は治安編なのでビジネスに関する内容は割愛し、もう一つの犯罪対策に焦点を合わせます。
事件後、倉庫のセキュリティ強化や作業員の人材雇用など多くの事を見直す検討をしました。
そんな中、僕が担当したのは超高難易度のMissionで“犯人と盗まれた商品を追え“でした。
犯人を追う過程で衝撃の事態が発生するのですが、続きは次章となります。