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Part2:風船売りおばちゃん
NYからメキシコの首都、メキシコシティに異動したのはサマーシーズンの7月でした。
シティは標高2,200m以上の超高地なので日差しは強いけど湿気は少なく、木陰はひんやり気持ちいい季節です。
赴任した時、僕はスペイン語をほとんど話せませんでした。
メキシコはスペイン語圏といえど北米からすぐ下に位置しており、しかも首都なら多少なりとも英語は通じるだろうとたかを括ってました。
この楽観的な考えは間違えで、レストランやスーパー、多くの生活圏で英語は通じませんでした。お陰で生活立ち上げの数ヶ月は非常に苦労しました。
スターバックスの店員に“How much?“が通じなかった時は本当に焦りました。
このあたりの経験も非常に面白いのでメキシコ生活編の本で書きたいと思います。
さて、シティではポランコ(Polanco)という比較的治安が良く、外国からの駐在員が多く住む地区に賃貸マンションを見つけて家族と住みました。
会社のオフィスもポランコ内で、道路が渋滞していなければ家から車で10分です。
僕は赴任当初、オフィスでスペイン語講習を受けました。月曜日から金曜日まで毎日6時間、ローカル(現地人)による1対1の個人指導は逃げ場がなく、きつい時間でした。
そして時を同じくしてスペイン語を必死で習得しようとする妻がいました。
妻の語学習得方法は“ローカルと話す“が基本です。
大家さん、スーパーのレジ係、レストランのスタッフ、ショップの店員、誰とでも積極的に話しかけてスペイン語を教えてもらいます。
積極的に現地人に話しかける妻は毎日2歳の息子をストローラーに乗せて連れて行く近所の公園で、風船売りのおばちゃんと知り合いになりました。
メキシコ人は基本的に愛情深く子供を慈しんでくれます。
風船売りのおばちゃんも、毎日挨拶する妻と息子を覚えて顔をみると話しかけてくれるようになりました。
ある日、おばちゃんはスペイン語がわからない妻に携帯のGoogle翻訳を使って衝撃的な情報を教えてくれました。
「あそこにカメラでずっと子供達を撮影している男がいるだろう。あれは誘拐する子供を探しているから、絶対写真に撮られちゃダメだよ」
前章で触れましたが、メキシコでは身代金目的の誘拐がビジネスになっています。
しかし、子供の誘拐は遙かに恐ろしい目的があることを行きつけの美容院(日本人の美容師さん)で髪を切ってもらってる時に教えてもらいました。
美容師さんはローカルと結婚し、子供も産んでメキシコに現地化した方でとても情報通でした。
美容師さん「今日の新聞一面みた?」
僕「スペイン語わからないので読んでないです」
美容師さん「怪しいトラックを警察が止めて荷物を検めたら中から目と内臓を取られた子供の死体が大量に出てきたって記事だった、
メキシコの子供の誘拐は身代金要求して警察沙汰になるリスクを避けて、子供の臓器売買ビジネスに変わってるみたい」
一瞬、リアルに息子(2歳)が誘拐されることを想像してしまい、寒気がして言葉が出ませんでした。
メキシコに滞在した3年間、スーパーでも公園でも、1秒たりとも息子から目を離さないように妻と心がけました。
それでもほんの一瞬、目を話した隙に息子が視界から消えた時などは本気のパニックです。
頭が真っ白になってとにかく大声で呼びながらダッシュで息子を探します。
読者の方は“気をつけてるのになんで目を話すんだよ“
と思われるかもしれませんが、生活の中で2歳児の男の子から完璧に目を離さないというのは、無理です。
“え、本当にいない!? なんで!? うそ、まさか、冗談だろ!?
スーパーで遠くに友達を見つけたとかで勝手に走っていなくなっただけと分かった時は涙目になって本気で叱ったりもしました。
あれから数年経ち、日本に帰国した今では笑い話ですが、改めて日本の治安の良さは奇跡のような水準と感心します。