読み返し、むせ返す | Acknowledgment Distance Torment

読み返し、むせ返す

読むことは財産。


忘れやすいものだから。
人なんていうのは忘れやすい生き物だから。
原付の鍵をちゃんとポケットにしまったのかどうかさえ、すぐに忘れる僕だから。


読むことは財産。
書くことは遺産。

学校の授業は基本的に嫌いだったけど、僕は人並みには文字が読める。

悠久の歴史の系譜も、泣かせたいだけの三文小説も、大好きな人の過去さえも。
ぺらりぺらりと寝転びながら、僕はそれを体感できる。


できないことは干渉だけで、出来上がった作品はあまりにも美しく、どこまでも崩れやすいけど、決して風化していかない。

わがままな僕は手を加えたくて、臆病な僕は泣くのが嫌で、とうとう自分で綴りだす。

いじわるな僕は歴史を変えたくて、ろくでなしの僕は他人を泣かせたくて、寂しがりな僕は。

大好きな人との未来を作りたくて。


そんなものは歴史には残らずに、むしろ大好きな人を泣かせ、その人を苦しめる未来になりかねないけれど……

読むことは財産。
書くことは遺産。

得たものは自分へ。願わくばあなたへ。
今日も海辺の街を疾る列車で、隠れて僕は涙する。