ぼくの前後に過去から未来へとのびるタイムラインがあります。

そのタイムラインにドローンのように浮かんで過去へと遡ります。

 

自分史を探る旅。

中3の冬ころに時のドローンを飛ばします。

*******************************

双六をして想いの1つも遂げた日の続きです。

 

まさか双六を続けてやるわけにもゆかず、

僕は床に座り、彼女は僕の勉強机の椅子に座っていました。

彼女が近くにいるといい香りがしました。

 

何となく手持ち無沙汰で、

彼女は肩に掛かるロングヘアを手ぐしですいていました。

 

「あっ、枝毛がある。はさみある?」

彼女は何本かを切って、くずかごに捨てました。

長いままの髪の毛も数本、一緒に捨てていました。

 

僕の家は高台にあり、部屋は2階でした。

まどからの景色は遮るものもなく開けていました。

「景色、いいね」とつぶやく彼女。

窓から外を見ている彼女の横顔を、

ぼくは眺めていました。

 

黄昏の静かさをいまでも覚えています。

二人とも黙っままで夕方の中にいました。

 

 

夕食を家族みんなで食べてから

はやっていたグループサウンズのレコードを聴きました。

 

けっこうマニアックな激しいリズムの曲をかけたところ、

彼女はゴーゴーガール(!)のように長い髪を振って踊ってくれました。

驚くほど上手でした。

 

意外な側面を見た気がしたものです。

踊りがからきしダメな僕は、

黙ってギターを弾きました。

 

あたかも僕の伴奏で踊る、

彼女がうれしかった。

 

 

「そろそろ帰る」

「送ってくよ」

 

家から最寄り駅までは2kmくらいありました。

バスもあったのですが、僕らは歩いて行くことにしました。

 

彼女は僕の右側に来ました。

僕より10cmくらい小柄でした。

僕は彼女を守るように道の右側を歩きます。

車通りも少なく、たまに通るのはタクシーくらい。

車が通り過ぎると風で彼女の香りがします。

 

話も途絶えがちで、

僕らは黙って歩いていました。

たまに、肩と肩が触れる。

 

そっと肩に手を置きました。

 

それだけするのに、どれほどの勇気と決心が必要だったことでしょう。

何度か腕を伸ばしかけては、引っ込め、

拒絶されたらどうしようと震えながら、

 

それでも、

なんとか肩を抱いてみたいという誘惑に耐えきれずに、

決行しました。

 

一瞬、

彼女がビクッとしたように感じたのは、

考えすぎでしょうか。

 

道は緩やかに左にカーブしていて、

折から通りかかった車のヘッドライトに、

向かいの家の側壁に僕らの影が映りました。

 

僕と彼女の長い髪に、

肩のところで二人が一緒に融合しているシルエット。

 

影絵を見るようです。

「みて、僕らの影」と言いたかったけど、

黙って歩いて行く。

 

黄昏の時間と同じように、

時は過ぎて、

何事もなく駅に着いてしまいました。

 

切符を買って、

2つ先の駅まで一緒に行きました。

二人ともさっきから無言です。

 

なぜか二人とも前を見たまま、

わざとお互いを見られない、

不思議な拘束状態。

 

電車に乗ってもだまったまま。

二人の時間は貴重なのに、

いっぱい話をしたいだろうに、

なぜか語れない。

 

しゃべれない。

見ることが出来ない…

 

二重に改札のある駅でした。

僕らが乗ったのは私鉄だったため、

駅の外に出るにはいったん私鉄の改札を乗車券を見せて抜けて、

改めて国鉄(JRではないですよ)のホームに抜けてから、

別途改札を通るのが近道でした。

 

しかし、

僕は彼女を先導しつつ私鉄の改札口でキップを渡してしまったのです。

当然彼女も僕にならいます。

 

当然、本来出るべき改札口に出られないことになりました。

「あれれ、キップがないよ」

「あなたが渡すから、わたしも渡しちゃった!」

 

ここでクスクス笑っちゃうのが彼女のいいところです。

決した怒ったりはしない。

 

僕らの間の妙な緊張はいっきに解消しました。

 

「ゴメンね」

僕は万感の思いを込めて言いました。

「何が?」 彼女は無邪気に僕を見上げて言いました。

きっと分かっていたのにと今でも僕は思います。

 

「何が?」って。 

 

「何でも無いよ」

彼女は黙って笑っていました。

 

遠回りしてバス停まで行きました。

「ここでいいよ」

「だいじょうぶ?」

「うん、平気だよ」

 

乗り込んで手を振る彼女をポケットに手をつっこんで見ていました。

 

バスが出る前に歩き始めて、

ふと振り返ると目が合いました。

 

彼女の口が動きました。

こう言っていた。

「あ、り、が、と…」

 

僕は走り出します。

 

ホームを駆け抜け、

来た電車に飛び乗り、

降りてからも2kmの道のりを猛ダッシュで走り通しました。

 

跳ぶように駈けました。

 

 

帰宅して、

ややあって、

自室にもどって、

椅子に座って、

茫然として虚脱していました。

 

今日一日を思い出しながら、

夢とも現ともつかぬ世界に入り込んでいました。

 

ふと気づくと、

彼女のほのかな香りがします。

 

足下のかごからでした。

細い髪の毛がありました。

 

ひろってみるといい香りがしました。

触れてしごくとキュッっと音がしました。

 

当時書いていた日記に挟み込んだことを白状しておきます。

 

次はいつ会えるんだろう。

 

なんとなくボーとしつつ、

予想に反してその夜は瞬殺で寝てしまいました。

言い知れぬ緊張があったんでしょうね。

 

 

次はいつ会えるんだろう。

人生の不安はただこれだけだった……

 

 

 

P.S. 髪の毛がどうなったかなと当時の日記帳を探しました。

ありました。でも数本あったのが、1本くらいしか見当たりません。

溶けちゃったのかな。1本あればクローン作れるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これまでにストレスってなんだろう

とか

ストレスによって引き起こされる疾患について書いてきました。

 

今回は、

ストレスに対処する方法(コーピング)を教科書的に書きます。

 

通常ストレスコーピングと呼ばれる方法は.

「問題焦点型コーピング」と「情動焦点型コーピング」の2つです。

 

1.「問題焦点型コーピング」とは、ストレスの元になるものをなくすことです。

当たり前と言えば当たり前ですが、

ストレスの原因がなくなるわけですからもっとも効果的です。

もっとも、言うは易く行うは難しで、

実際に根本的なストレス源を取り除くことは困難な場合が多いようです。

 

 

2.「情動焦点型コーピング」とは、ストレス源を取り除くことが困難な場合に、

ストレス源の受け止め方を変えて行こうとする方法です。

難しく言うと認知の構造を変える、

平たく言うと考えかたや感じ方を変えてしまおうとすることです。

 

これも、自分なりに納得できるのなら良いのですが、

しょうがないとあきらめてがまんするのは、そのこと自体がストレスになり、

上手なコーピングになりません。

 

 

ストレス源を取り除くことは出来ない、

といって

そのストレス源の見方を変えることも出来ない場合もあると思います。

 

そんなときは、

全く別のことで気分転換をするしかないですね。

人によって違うと思いますが、

いわゆるストレス解消手段は持っているべきです。

 

 

さんざん引っ張っておいてこのような回答しかできないのは、

非常に心苦しいのですが、

ひとりひとりみんな違うと言うことです。

最初に教科書的と書いたのもそんな理由からです。

 

大事なことは、心身の健康は早いうちに不調に気づくと言うこと。

そして多くの場合、不調の原因がストレスから生じていると言うことです。

 

近年一定規模の会社では、

厚労省ストレスチェック制度に従って、

毎年1回チェックが行われています。

結果も個人宛にもらえるはずです。

けっしてないがしろにしないで、

要注意の結果が出ていたらぜひとも相談を受けて下さい。

 

また、そのような機会が無い方も、

これまでに書いてきたように、

自分自身のこころや身体に現れる変化を見極めて

早め早めの対応を心がけるようにして下さい。

 

まとめると次のようになります。

①自分のタイプを知ること。人間はいつでも、健康を害したり、病気なる可能性を持っていることを知ること。

②健康や病気は、そのほとんどが、ストレスや心身の疲労によって起こる。

③心身の健康管理をしてくれる人を見つけ、その人のいうことに必ず耳を傾ける努力をすること。

④健康管理や健康づくりのためといわれることには、お金を惜しまないこと。

⑤こうした関係の医師やスタッフと親しくなること。

 

その人にとっての、

本当の人生の目的、幸せとは何だろうと考えることも大事ですね。

私でよければいつでも相談に乗りますよ(笑)

 

 

 

 

 

 

ぼくの前後に過去から未来へとのびるタイムラインがあります。

そのタイムラインにドローンのように浮かんで過去へと遡ります。

 

自分史を探る旅。

中3の冬ころに時のドローンを飛ばします。

*******************************

久しぶりに彼女に会います。

 

ちょうどブログにこの話題を書くくらいの間隔で、

ぼくらはかろうじて会うことが出来ました。

いつも何らかの事情で逢えない日々が続いていました。

 

携帯もメールも無い当時、

デートの約束は電話でした。

子機もなく有線の黒電話。

 

小学生から中学生の頃、

本マニアの僕にとって電話は強い味方でした。

本屋にない本を直接出版社に問い合わせたりした話は以前に書きました。

 

しかし、いつの間にか、僕は電話が大嫌いになっていました。

理由は簡単です。

 

当時の電話はだいたい家族団欒の場所にありました。

当然電話をかけているところは見え見えだし、

内容も家族に筒抜けです。

 

誘って断られる、

会えるとしても、いつどこで……、

 

長話になれば電話代を気にしつつ

常に誰かの顔色を窺いつつ、

まるで悪いことをしているような、

いまにもとがめられそうな隠微な行為をしているかのような錯覚にとらわれました。

 

おまけに思ったように良い返事はもらえない。

デートの約束は出来ない。

逢えない、もどかしさ、せつなさ。

やり場のない怒り。

落胆。

 

心理学で言えば、

行動は強化されるよりも消去されることの方が多かった。

勇気を奮い起こしてかけた結果はだめだった。

まさにトラウマの源泉。

 

とにかく電話が悪い、

と僕のこころは決めつけてしまったようです。

 

いまでも、僕は電話が大嫌いです。

触るのも出るのもかけるのも出来ることなら避けたい。

 

 

そんなこんなありましたが、

やっとのことで、僕らはデートのやくそくをしました。

 

ある初冬の日曜日。

駅で会って、彼女は家に遊びに来ました。

 

家で何をするの? と思われるかもしれませんが、

平和な僕らのデートは、

たがいの家に行って、

テレビを見たり、

ゲームをしたり、

アルバムを見たり、

音楽を聴いたり、

見つめ合ったり、

たがいに時間と空間を共有しているだけで満足でした。

 

なんて、他愛なく、可愛らしいんでしょう(笑)

 

それで、十分だったのです。

 

学校では、

友だちとガールフレンドの話題を交わし、

手を握ったかとか、プレゼントをあげたとか、ストッキングをはいていたとか、

もっと勇ましいことを語り合っていた訳ですが、

実践になるとなにもできはしない(笑)

 

この日、僕は一計を案じていました。

双六を作ったのです。

 

数年後に人生ゲームが売り出されましたが、

僕の作った双六は、

まさに後年の人生ゲームのミニ版のようなものでした。

 

「双六しよ」

「いいよ」彼女は気楽に応じてくれました。

サイコロを振って順番にこまをすすめます。

 

停まったコマに指示が書いてあります。

 

”シャレを1つ言う” ⇒ 「ホニャララ」

”好きな果物はなあに” ⇒ 「みかん」

”三回まわってワンという” ⇒ ぐるぐる、ワンワン、

 

今考えると恥ずかしくなるようなシロモノでしたが、

僕も彼女も素直に指示に従います。

 

自分でつくってこんなものまともにやってくれるかと危惧していたのですが、

意外と面白く進みます。

 

 

じつは僕の願望をあるコマに潜ませてありました。

どれくらいの確率で止まるかは、

神のみぞ知る、究極の指示が!!

 

彼女の番。

振ったサイコロの出た目は件のマス目を指しました。

 

 

「やった~~~!」

内心吠える僕。

 

 

そのコマの指示は、

”握手をする”

 

期待しましたか?

 

彼女は手を出しました。

僕も手を出しました。

ふたりは握手をしました。

 

ぼくにとっては一大事でした。

この瞬間をゲームを作っているときから想像し、

断られたらどうしようとか、

いやらしいヤツと思われないだろうかとか、

帰っちゃったら取り返しがつかないぞとか……

 

彼女はいともあっけらかんと僕の手を握りました。

温かく、柔らかな、小さな手でした。

「全然いやがってない!!」

 

 

そのまま握っている手を離さず、

力を込めて引き寄せて、

抱きしめてしまいました。

 

 

というのはドラマの話。

 

「あなたの番よ!」

「はい」

いそいそとサイコロを振る僕。

 

笑っていいですよ。

 

たまさかの至福の時の後、

ゲームは終わりました。

 

僕は念力を乱され、

サイコロの出は最低となり、

彼女に大差をつけられて負けました。

 

彼女は女王となり、

護衛の騎士だったぼくは落ちぶれました。

 

 

「しまった、ゴールに書いておけば良かった」

 

”勝った女王は、忠実な騎士に褒美の口づけをする”

 

後の祭り。

でも、必要十分な双六ゲームでした(笑)

「うふふ、手を握れたもんな」

 

昔の人は、こんな時手を洗わなかったんだよな。

妙に意識して握ったり開いたりしてみて…

 

 

「おやつよ」

と母の声。

 

二人とも仲良く手を洗っておやつを食べましたとさ。

 

 

(この日 まだ続く)