今朝の読売新聞の社説です。
これを読んでいて、いかに日本発の記事のみを集約して、現地法体制の現状を把握しないで書いているか、本当に腹が立っています。
が、自分自身で行動する時間がない。

ので、ここにいくつか記してみたいと思います。

>>政府は法整備の際、日本人の権利が一方的に損なわれないよう配慮すべきだ。

まさにその通りだと思います。
外国の運用はどうなっているのか?
自国から連れ去られたケースと、自国に連れ帰ってきたケースでダブルスタンダード運用をしていないのか、一度調べていただきたい。その上で、自国民を保護するという政府の本当の役割を果たしてほしい。


>>欧米の司法当局は、離婚した日本人に子連れでの帰国を禁じたり、無断で子どもと帰国した母親を「誘拐犯」と見なしたりすることがある。

アメリカが一番顕著ですが、『面会交流は親の権利』として確立しており、離婚後も隔週で別居親の面会交流を実施させるために、別居親と違う州に転居するのであれば、別居親の同意が必要という足かせが履かされるのです。

誘拐犯というのは、面会交流の権利を侵害すると『実子誘拐罪』として刑法処罰をするためにあります。面会交流ができないことをもって相手を処罰するということであれば、これは『子どもの最善の利益』に該当しないと私は考えます。ただし、実親の等身大な姿を見せ、子どもに現実の姿を見せるのが『子どもの最善の利益』と考える人も少なくないようです。

>>日本から子どもが外国に連れ去られても、日本人の親は相手国の協力を期待できない。
>>
>>条約に加盟すれば、政府間で国際ルールに基づき、こうした問題の解決を図ることになる。

これは一方的な見方です。これよりも数が多く、トラブルが多発している日本人父&外国人母(主にアジア諸国)のケースがまったく考慮されていません。アジアで子奪取ハーグ条約を批准している国が少ないという現実を見てください。

>>返還の是非は、子どもが現にいる国の裁判で決まる。政府は、DVの恐れがあれば、返還を拒否できる仕組みを関連法案に盛り込む考えだ。妥当だろう。

条約は30年前に作られたものです。当時想定をしていなかったモラハラや精神的DVに対して、どのように対応していくのか、また、様々な報告があがっているように、外国では『自国民の子どもは自国の政府が責任を負うのが大原則のため、離婚時に外国人母に引き渡して外国に連れて行かれるのであれば、自国の児童養護施設や里親に任せたほうが、子どもの最善の利益にかなう』という考え方があり、結果として外国籍だとして不利になる現実に対して、どうやって自国民保護を行うのか、提示してほしいと考えます。

>>親権を巡る裁判は、元の居住国で行われるため、不安を抱く日本人の母親は多い。在外公館が、現地の弁護士を紹介するといった支援を行うことも必要だ。

まりんこさんのブログを紹介します。
http://ameblo.jp/kokusai-rikon/entry-10915033275.html#main

日本の在外公館が、『民事不介入の原則により、お手伝いすることはできない』の態度を改めるかどうかに掛かっています。もっと言えば、日本の在外公館の原則は『現地国とトラブルを起こさず、見えるところで友好が図られていれば、それが日本国にとって最善の利益である』という勘違いしている考えであり、これが『在外公館は日本国民の公僕であり、仕事の基本は現地での日本人の権利侵害がないかチェックをし、あればそれを現地国と折衝して正していく』ということを忘れてしまっているところで、実際に支援をしていただけるのか?
上記事例に対して外務省は明確な意思表示をするべきだと考えます。

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http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110614-OYT1T00034.htm
 国際結婚の破綻で、両親が国を隔てて子どもの親権を争うケースにどう対応するか――。

 政府が、その解決のための国際ルールであるハーグ条約加盟に向け、関連する国内法の整備に入った。

 来年にも加盟が実現すれば、一歩前進と言えよう。政府は法整備の際、日本人の権利が一方的に損なわれないよう配慮すべきだ。

 「国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約」は、16歳未満の子どもを、一方の親が無断で外国に連れ去ることを禁じている。居住国から出国した子どもの返還を親が求めた場合、条約加盟国は原則、協力する義務を負う。

 親権争いは、元居住国の裁判で決着させるのが、子どもに望ましいとの考え方によるものだ。加盟国は80を超す。日本は欧米各国から加盟を求められていた。

 米国では、離婚した日本人が、子どもを連れて帰国し、トラブルとなった事例が約100件に上る。日本が未加盟のため、外国人の親は、子どもの返還どころか、面会もしづらい。

 このため、欧米の司法当局は、離婚した日本人に子連れでの帰国を禁じたり、無断で子どもと帰国した母親を「誘拐犯」と見なしたりすることがある。

 逆に、日本から子どもが外国に連れ去られても、日本人の親は相手国の協力を期待できない。

 条約に加盟すれば、政府間で国際ルールに基づき、こうした問題の解決を図ることになる。

 条約は、返還拒否の条件として「子どもに身体的、精神的な害がある」ことなどを挙げている。だが、配偶者間の家庭内暴力(DV)については言及していない。

 日本が加盟を長年見送ってきたのは、外国人の元夫によるDVが原因で、日本人の母親が帰国するケースが多かったからだ。母親には、子ども連れで同じ環境に戻ることへの懸念が強い。

 返還の是非は、子どもが現にいる国の裁判で決まる。政府は、DVの恐れがあれば、返還を拒否できる仕組みを関連法案に盛り込む考えだ。妥当だろう。

 加盟後は、外務省が、日本に連れ戻された子どもの居場所の特定や、裁判手続きの手助けといった役割を担う。外務省には不慣れな国内業務が多い。政府内の連携が欠かせない。

 親権を巡る裁判は、元の居住国で行われるため、不安を抱く日本人の母親は多い。在外公館が、現地の弁護士を紹介するといった支援を行うことも必要だ。

(2011年6月14日01時20分 読売新聞)