寺
Sさんの作品「明月院」


久しぶりのSさんの作品です。

Sさんの作品の特徴は、見た物の情報を全てご自分のパターンに変換して表現する所です。

独特の「型」を意識の中に持ってらっしゃるようです。

ホント、作品が一種の「様式美」を持っているんですよね。


ただ、それがご自分では良いのかどうか分からないらしく、時々「普通」に描こうとします。

そんな時は全く絵が面白くなくて、「いったい、何をやってらっしゃるんですか ? 」と、聞いてしまいます。

形の一つ一つにまで、自分の思うような作り込みをしている時は凄く楽しいのだそうです。ただ、「これで良いんだろうか ? 」と、不安になると言うのです。

そして、「普通」に描いている時は安心するのだとか。

まさに、アートにおける本質的な問題がSさんの中に投影されているようですね。


既にその価値が確定していて、多くの人々が「いいよね !」と、思ってくれる範疇で表現すれば安心なのは当然かもしれません。

でも、アートって、常に新しい可能性を追い求めて行くモノでもあります。ですから、安心できる所になぞ止まっていたら意味がありません。

とりあえず、自分が面白いと思える事を夢中でやってみるのが一番ですね。


でも、「不安」というのも悪いわけではありません。

強い自分の「型」を持っている方は、ともすると頑固になってしまって、他者の視点が欠けがちだからです。

「自分が良ければそれでいいのだ ! 」と云う感じになってしまうんですよ。

そこに、「ホントに、これで良いのか ? 」と不安に思う心も必要になって来ます。そのおかげで、客観的な視点が生まれて来るわけですね。


結局は、意識の「バランス」が何より大切と云うことでしょう。自分の感覚を信じて突き進む力と、「チョット待てよ」と冷静になる心の余白ですね。

自分なりのバランス感覚が分かって来ると、かなり楽になると思いますよ。

その上で、ご自分の方向性を考えて行かれるのが良いのではないでしょうか。


「安心」できる世界に止まっていたら、自分が楽しいと思える「表現」が出来ないのなら、ためらわずに好きな方へ進んで行くと、面白い世界が開けて行くと思います。

それがこのサークルのテーマでもある、「赤い羊」の生きる道じゃないでしょうか。