今回は夫と愛人を殺した女と女をひき逃げで殺しかけた男の関係性を描いたサスペンスなのかと思ったらユーモアあり、ファンタジーありな内容で、退屈させられるシーンが無く、伏線の張りや回収、一捻り効いた展開、キャスティングの妙、どこを切り取っても非の打ちどころが無かったピンク映画の傑作を紹介します。

犯す女 愚者の群れ

主演:浜崎真緒

出演:守屋文雄/和田光沙/細川佳央/山本宗介/佐久間恵美/久保獅子/麻木貴仁/水無月凛。


・あらすじ
(情報が少ないので出来る限り頑張って結末まで書きました。)

ある日の夜、人妻である葉月果純はある事情からスリッパを履いたまま、酒を片手に自宅のマンションへと帰ろうとしていました。果純は玄関の前で「おかえり…ただいま…」と呟き、酒を置くと、部屋の中に入りました。しかし部屋の中は真っ暗で、夫の姿はどこにもいません。彼女が長い廊下を歩いていると、どこからか、女性の喘ぎ声が漏れていることに気づきました。彼女は自分たち夫妻の寝室に入ると、愛人の琴美と共にベッドの上で体を重ねている愛する夫、修平の姿がありました。それを見て、夫が別の女を連れ込んでると知った彼女は台所にあったワインを一口飲むと、包丁を持って2人のいる寝室に押し入りしました。


果純は裸体の修平と琴美を包丁で何度も刺したあと、返り血を浴び、血塗れになりました。果純は殺害現場である寝室で包丁を捨てると、シャワーを浴びて血を洗い流し、浴槽に浸かりました。果純は酒を飲みながら入浴していましたが、浴槽の中に潜って息を止めました。ほどなくして息が苦しくなり、果純は耐えられなくなると、顔をあげて息を吸いました。彼女はクローゼットから新品の服に着替えると、寝室に行き、カバンに必要なものを詰め込みます。その最中、彼女は棚の上に夫婦仲が良かった頃の自分と夫の写真を見つけますが、その写真を写真たてごと床に叩きつけます。彼女は修平と琴美の死体を見つめると、酒を一口飲みました。


その矢先、隣人からの通報を受けて駆けつけた警官が様子を見ようと葉月夫妻の部屋に訪ねてきました。仕方なく果純は玄関に行って応対すると、向かいの家の住人が夫婦喧嘩をしていたからだと警官に説明します。しかし警官は「念のため、ちょっと中見せてもいいですかね?」と確認のために部屋の中が見たいと言い出しす。果純は渋々警官を部屋の中まで通しますが、隙を突いて酒瓶で警官の頭を殴り付けました。幸い、警官は気を失っていたものの、果純は手ぶらでマンションから飛び出しました。

その頃、近くの小さな工場に勤めている中年の男性、容一はその後輩の鎌田を連れて白いバンを運転していました。気弱な西岡容一は女性経験がない素人童貞で、後輩の鎌田に脅され、金を巻き上げられている日々を送っていました。一方で、鎌田は工場で事務をしている吉田光子と関係を持っていましたが、容一や光子から金を巻き上げてはキャバ嬢の"ミキティー"を喜ばせようとブランド品のバッグを買い与えていたのでした。その日は積み込んでいる部品をお得意先へと運送しており、運転中、容一は「鎌田くん、彼女いるよね?」とスマホで"ミキティー"の写真を見ている鎌田に言いますが、鎌田は「あいつ40過ぎてんすよ。身の程を知れって。金貸してくれっから利子代わりにぶち込んでるだけ。」と吉田を唆して犯しているうえ、彼女から金を巻き上げていることを説明します。鎌田は吉田が生理中でもやりたがる女だと彼女を悪く言いました。するとその直後、"ミキティー"から誘いのメールが入りました。鎌田は「なんでこんな時間になってんすかぁ!西岡さんの作業が遅せぇからっしょ!あんなん取り付けるのにどんだけ時間かかってんすか?つーか、あれぐらいだったらひとりでいけよ!」と出発から遅れたのは作業が時間をかけている容一のせいだと責め立て、"ミキティー"と寝るために早く走るよう文句を言いました。口うるさい鎌田の言葉を聞いていた容一はハンドルを握り続けますが、鎌田は容一が近道に進まなかったことに苛立ち、強引にハンドルを奪おうとしました。その拍子で白いバンはブロック塀の角をこすったことで車体を傷つけてしまい、鎌田は「あーあ、べんしょ~。」と呟き、容一は鎌田のせいだと責め立てますが、鎌田は反省する素振りを見せません。そして鎌田は再び強引にハンドルを奪おうとし、容一は嫌がりますが、2人は白いバンの前にいた果純に気づかず、彼女を轢いてしまいます。


容一と鎌田は白いバンから降りると、容一は救急車を呼ぶよう意見しますが、鎌田は「遅いすよ。西岡さん、人殺しだから。」と告げ、「これ逃げらんないすよ。こういう車の塗料ですぐバレるんだから。テレビで言ってんじゃ。日本の警察は優秀なんですよ。」と容一に言います。鎌田が果純を白いバンに積むよう命じると、突っ立っていた容一は言う通りに従い、果純を後部座席に運びました。その後、車中で鎌田は死体を埋める場所を探そうとカーナビで調べていると、最適な場所があることに気づき、「ほらここ、湖の近くだから土が柔らけぇし、人なんて来ねぇからサクッと埋めればOK牧場っしょ!」と車に戻ってきた容一に教えました。容一は鎌田がさっき「日本の警察は優秀なんですよ。」と言っていたことを指摘しますが、鎌田は「死体が見つかんなきゃ事件になんねぇって!俺だって巻き込まれたら面倒臭いっす。」と言いました。鎌田は「湖に沈めるのはNGっすよ。重しつけても、(体内に溜まった)ガスで浮いてくるらしいっすから。埋めたほうがぜってぇお得っす。」と教え、ちゃんと車を鉄工所に戻すよう頼むと、"ミキティー"に会いに行こうと車から降りました。戸惑う容一は鎌田を引き止めようとしますが、鎌田は「俺、タクシー拾うんで。ちゃんと拾っといてください。しくったら西岡さん、人生お仕舞いっすよ。」と吐き捨て、その場から立ち去りました。

容一は鎌田に指定された場所に行こうとカーナビで目的地を設定していましたが、死んでいるはずの果純が「埋める気ですか?」と声をかけてきました。果純は生きていて、容一と鎌田は気絶している果純を見て死んでいると勘違いしていただけだったのです。容一は果純が生きていることに驚き、大声で「すいません!」と何度も言い、病院に行こうと軽傷の果純に提案しますが、果純は遠慮しました。果純はトラックから降り、右足を引きづりながら立ち去ろうとしますが、近くのパトカーのサイレンの音が響き渡り、警察に捕まるのを恐れた果純は容一のトラックに戻ります。行く宛がなかった彼女は自分を連れて車を動かすよう容一に頼み、容一は彼女を連れて白いバンを走らせました。走行中、容一が「どこまでお送りすればいいか?」と質問すると、果純は結婚してるのかと容一に確認しました。容一が独身で一人暮らしであることを知った彼女は自宅に向かうよう頼み、容一は自宅のアパートに到着すると、彼女を自分の部屋に上がらせました。

果純は台所の蛇口で水を飲むと、コートのポケットからピルケースを取り出し、ピルケースに保管されていた薬を服用しました。彼女が寒がると、容一は部屋にあった石油ストーブをつけ、「すぐ暖かくなりますから。」と布団に潜り込む果純に言いました。容一は救急箱を持って果純の手当てにあたろうとしますが、果純は拒絶すると、「あなたのせいです。何かしたら殺しますよ。本当に殺しちゃうんだから。」と容一を責めました。


翌朝、果純が目覚めると、容一はこたつに入ってテレビのニュース番組を観ていましたが、果純が夫と不倫相手を殺害した逃亡したことがニュースで伝えられていました。それに気づいた果純はリモコンでテレビの電源を消します。容一は目覚めた果純に挨拶すると、「仕事行ってきますね。」と言って外出しようとしますが、果純は容一を捕まえて馬乗りすると、警察に通報しないよう容一に言いました。容一は通報しないと正直に約束し、「どうぞ、逃げてください。お願いします。」と果純に告げると、果純は容一が勃起していることに気づき、「下、当たってる。したいの?」と咎めました。容一は「大丈夫です。」と断りますが、果純はブラジャーの下に隠していた胸を露にし、乳首を容一の顔に近づけると、乳首を吸い上げるよう促しました。容一は言われるがままに果純の乳首を吸い、興奮した果純は断りもなく容一のズボンを脱がすと、彼の男性器をしゃぶり始めました。やがて興奮した容一が射精すると、果純は行為を終え、台所の水で口をゆすいだあと、「すごい。いっぱい出てる。」と言いました。容一が「すいません。」と詫びると、果純は自分を匿ってくれるよう容一に頼みました。轢き逃げで果純を殺しかけた容一は断ることができず、彼女の頼みを引き受けるのでした。


日中、勤務先の工場で鎌田は事務員の光子から金を巻き上げていました。彼は工場から独立して自分の会社を立ち上げるために使いたいと吉田に話していて、光子は借りた金を返すよう鎌田に求めていましたが、鎌田にその気はありませんでした。鎌田は光子を"みっちゃん"と呼び、光子は鎌田を"かまちゃん"と呼んでいました。2人は鉄工所のなかで愛し合うと、鎌田はいつものように吉田をバックで犯しますが、彼は犯されている吉田がよだれを垂らし、快楽を得ている隙に携帯で"ミキティー"の写真を見つめていました。


その後、鎌田は黙々と作業をしている容一を背後から脅かしました。鎌田は果純をちゃんと埋めたかを容一に確認すると、「ニュース見ました。ってか、ウケますよね。どうせあの女、死刑だったんですよ。むしろいいことしたんですよ。」と笑いながら果純を非難しました。容一は鎌田の話に合わせようと愛想笑いをしますが、鎌田は顔色を変えて容一の頭を叩くと、「笑わないでくださいよ。あんたのせいで昨夜"ミキティー"とヤれなかったんすよ。」と容一を責めました。鎌田は"ミキティー"から"セリーヌ"というブランド品のバッグを買ってくれたらヤらせてあげると言われていて、頼まれていたブランド品のバッグが20万もするバッグだと容一に伝えると、容一はまた鎌田の前で笑ってしまい、鎌田はまた容一の頭を叩きました。鎌田はいつものように容一から金を巻き上げようとしますが、容一の財布を調べると、財布に入っていたお札が1万円札3枚しかないことに気づき、「じゃあ分割で20万。払わなきゃ全部バラすから。」と恐喝しました。鎌田は容一の3万円を手にすると、財布を返し、その場から去っていきます。



同じ頃、容一の部屋で隠れていた果純は食事を済ませると、冷蔵庫でお酒を探していました。果純はアルコール中毒だったのです。我慢できなかった彼女は容一の貯金箱を壊し、お金を奪うと、外に出ますが、ふと近隣の部屋のポストに入っていた新聞を見ると、自分が起こした事件が新聞で大きく取り上げられていることを知ります。アパートの住人がやって来ると、彼女は気づかれないよう新聞で自分の顔を隠しました。


危険を感じた果純は慌てて容一の部屋に戻り、ポケットに入れていた容一のお金を捨てました。果純が台所のシンク下収納を調べると、中には賞味期限切れの料理酒がありました。彼女はそれをグラスに注いで飲むと、意外と飲めることに気づき、容器にあった残りの料理酒を全部グラスに注いで飲みました。飲み終えると、まだまだアルコール類があると思った彼女はシンク下収納を調べますが、収納の奥が隣の部屋の収納と繋がっていることに気づき、シンク下に潜り込むと、隣の部屋に行こうと這って歩きました。彼女はシンク下収納から隣の部屋に入りますが、間もなくして、死んだはずの果純の夫、修平が台所にいる果純の前に現れます。容一の部屋の台所のシンク下収納は過去の世界に繋がっており、果純は修平がまだ生きていた頃の果純の部屋に来ていたのです。修平が「何してるの?」と声をかけると、驚いた果純は「何でもない。」と取り繕います。



仕事で疲れきっている修平は夕食を作ってくれるよう頼むと、「そういや?どうする?温泉旅行?お前が退院したら行こうって言ってただろう。」と冷蔵庫から野菜を取り出していた果純に持ちかけました。驚いた果純は「いつでも大丈夫。あなたの仕事の都合がいい時で。」と答えます。修平が「新婚旅行で行った旅館、覚えてる?」と聞くと、果純は「覚えてるよ。」と答えます。野菜を切ろうとしていた果純は台所に包丁が見当たらないことに気づき、包丁がどこにあるかをテーブルにいる夫に尋ねました。修平が「ここだろ?」と答えると、果純は振り返りますが、果純の目に映っていたのは包丁が刺さったまま下半身裸で不倫相手の琴美をバックで犯している修平の姿でした。琴美は喘ぎ声を出しながら「もっと!もっと突いて!」と夫に要求しており、修平は「これ、いい感じにさせてるから。抜いちゃダメだぞ!抜いたら血がバーッて、俺死んじゃうよ。俺が死んだらお前、悲しいだろ?」と果純に告げます。彼はその行為を中断させると、果純に歩み寄り、「悲しくないの?」と問いかけると、戸惑う果純は「分かんない。」と答えました。すると果純の夫は「そうなの?じゃあ、抜くよ。」と言って自ら腹部に刺さっていた包丁を抜きました。果純は返り血を浴び、血塗れになります。その時、果純は容一の部屋の台所で目を覚ましました。どうやら果純は賞味期限切れの料理酒を飲んだせいか、意識を失い、悪い夢を見ていたようだったのです。気分を悪くした果純はトイレに行って豪快に吐き出しました。


その日の夜、仕事を終え、買い物を済ませた容一が自宅のアパートに戻ると、部屋は暗くなっていました。容一は段差に足を躓きつつ、台所の電気をつけると、自分の貯金箱が壊されていることや冷蔵庫が開けっぱなしになっていることを知ります。そして彼は居間の電気をつけると、果純の名前を呼びました。すると押し入れから微かに物音がするのに気づき、押し入れの襖を開けると、押し入れの隅でうずくまっていた果純の姿がありました。果純は容一に携帯を貸してくれるよう要求し、容一が携帯を渡すと、果純は警察に通報していないかを確認しました。容一は「しないって言ったじゃないですか。信じてください。」と訴えると、果純は容一に携帯を返しました。容一が果純の洋服と夕食の食材を買ってきたことを伝えると、押し入れから出た果純は容一が買ってきたもののなかからお酒がないか必死で探し、容一は「ごめんなさい、すぐ買ってきます。」と買ってこなかったことを果純に謝ったうえ、コンビニに行って酒を買いに行こうとしましたが、果純は容一を引き止めると、お酒を断ち切りたいと宣言します。果純は自分が今晩の夕食を作ると容一に言い出し、容一はほうきとちりとりで割れた貯金箱を片付けました。

その後、果純は自分で夕食を作ると、容一と一緒に食卓を囲みました。料理の腕前に自信が無く、アルコール中毒で味覚異常があった果純は「美味しくないでしょ?」と呟きますが、容一は「いや、うまいですよ。」と言いました。果純は「私、舌がバカになってて味がよく分かんない。」と味覚異常だと容一に話すと、容一は「本当にうまいですよ。」と果純の料理を褒めました。容一は「そうか。果純さん、主婦ですよね。すいません。」と果純に謝ります。果純は容一が自分の名前を知っていることに疑問に思いますが、容一はテレビのニュースで知ったと答えます。果純は今朝、容一がニュースを観た時に自分の名前を知ったことを悟り、容一は自分の名前を名乗りました。

その夜、容一はこたつで睡眠を取り、果純は布団の上で寝ていましたが、睡眠障害に襲われていた果純は眠れずにいました。果純は目を覚ますと、所持していた薬を服用しました。果純の様子を見ていた容一が「大丈夫ですか?」と心配して声をかけると、果純は「大丈夫。」と答えました。容一が「お酒ですか?」と聞くと、果純は「それもテレビでやってた?」と質問で返し、容一はニュースでやっていなかったと答えます。実は果純は夫と不倫相手を殺す前、アルコール中毒を治すために専門病棟に入院し、断酒生活を送っていましたが、治療を続けても、お酒を断ち切れずにいました。事件当時、彼女は専門病棟から抜け出していたのです。果純は「私がアル中病棟抜け出して、旦那と浮気相手の女を殺したの知ってるんでしょ?」と聞くと、容一は「はい。」と答え、果純が「私、有名人?」と尋ねると、容一は「そうですね。」と答えました。果純は容一に背中を向けると自分がアルコール中毒になった理由を打ち明けました。

「こんなつもり、無かったんだ。最初は普通に幸せだったの。でもさ、あの人、「仕事。」って言って。全然帰ってこなくなっちゃって。そりゃあ、寂しくなるでしょ。友達もいないし、1日中家にいて、テレビ観てるだけだし、それで毎日、睡眠薬とお酒飲むようになっちゃって。気づいたら入院させられてて。あの人、全然会いに来てくれないの。それでもさ、やり直せるって思っちゃったんだね。家帰って、何も無かったかのように、「ただいま」って、ご飯作って、エッチして、そしたらお酒、やめられると思っちゃったんだよね。」


果純は愛する夫が不倫し、頼りになる友達もおらず、孤独を募らせていたことから酒に溺れてしまっていたのです。果純が打ち明けている間、容一はこたつから抜け出すと、果純の隣に居座りました。彼は誇らしげな表情で「大丈夫です。俺が守りますから。もう寂しい思いなんかさせない。」と言って果純を抱き寄せますが、困惑した果純はそれを嫌がりました。果純が容一を突き飛ばすと、容一は「すいません。ほんとすいません。」と謝りました。容一はトイレに行くと布団に潜っていた果純に伝えると、トイレで自慰行為を働いていましたが、不審に思った果純にその様子を見られてしまいます。容一は「すいません。」と謝りますが、果純は容一の前で涙を流すと、「諦めないで…バカ。もういい。」と告げ、布団のなかへと戻っていきました。果純の反応を見た容一は泣いている果純の元に歩み寄ると、彼女を抱き寄せ、唇を重ねました。果純はそれを受け入れ、容一は果純の胸を揉み、乳首を吸い上げると、彼女が身につけていたスウェットを剥がし、胸に手をかざしながら彼女の陰部を舐め回します。そして容一は果純のパンツを脱がすと、挿入しようと試みますが、果純は痛がる素振りを見せました。容一は「痛いですか?」と訊ねると、果純は「ずっとしてなかったから。」と答え、容一は「すいません。」と謝りますが、果純は「諦めないで…。」と言いました。容一は自分の性器を果純の陰部に挿入し、「痛い?」と果純に聞くと、果純は「はい。」と言いました。それでも容一は諦めずに果純とセックスし、果純は「外に出して。」と容一に頼みますが、容一は中に出してしまい、「すいません。間に合わなくて。」と果純に謝りました。



翌日、容一が目を覚ますと、果純は台所で「大丈夫、大丈夫、大丈夫…」と呟きながら容一の弁当を作っていました。容一は果純と一緒に朝食を食べたあと、果純から弁当を受け取り、職場に向かおうと外に出ました。容一がアパートの前で振り返ると、自室の窓には窓際に立って微笑んでいる果純の姿がありました。果純は外にいる容一に向かって手を振りましたが、容一は気づかれないようカーテンを閉めて隠れるよう指示しました。


その日の日中、工場で容一は果純が作った昼食の弁当を食べていました。その傍らには幸せそうに自分で作ったお弁当を鎌田の口に運んでいる光子と彼女に付き合ってあげている鎌田がいました。鎌田は光子のお弁当のおかずを食べていましたが、突然むせ出し、その様子を見た光子は「ごめん、すぐ買ってくるね!」と言ってお茶を買いに行こうとその場から離れました。光子が目を離している間、鎌田はお弁当を手にしますが、弁当に入っていた食べ物を燃やした挙げ句、口に含んでいたおかずを吐き出しました。鎌田は光子をいい気にさせようと芝居を打っていたのです。鎌田はその様子をじろじろ見ていた容一に気づくと、容一が食べていた昼食の弁当が気になり、「その弁当、女デキたんですか?」と容一に質問しました。容一は鎌田が死んだと思っている果純の存在を隠し、自分で作ったと答えます。鎌田が金銭を要求すると、容一は懐から30万円が入った封筒を取り出し、それを鎌田に渡します。容一が「もうこれっきりにしてよ。」と告げると、鎌田は「分かってますって!」と笑顔で応えました。その直後、自販機でお茶を買ってきた光子が鎌田の元に戻ってきました。鎌田にまんまと騙されている光子はお茶を彼に渡すと、鎌田が自分で作った弁当を一切食べてないことを知らないまま、「えー!もう食べちゃったの?」と嬉しそうに鎌田に問いかけました。鎌田は「もう!うまいから一気食いだぜ。」と言って取り繕うのでした。その頃、果純は容一の部屋の中で洗濯物を干していました。彼女はカーテンを開け、外の景色を見つめると、「天気いいなぁ。」と呟いていました。



その夜、仕事を終えた容一は「ただいま、ただいま…」と呟きながら帰り道を走っていました。アパートの自室に戻ると、容一は押し入れの襖にノックし、果純を呼び出しました。果純が押し入れから現れると、「おかえりなさい。」と容一に言い、容一は「ただいま。」と応えます。2人はお互いに抱き合い、唇を重ねると、その場に倒れ込みました。そして再び唇を重ねたあと、容一は乳首を吸い上げ、果純は身につけていた服を全部脱ぐと、騎乗位で容一と肌を重ねていきます。

翌日、休みの日、容一と果純はテレビのニュース番組を観ながらジェンガ(バランスゲーム)で遊んでいました。ニュース番組は警察は夫と不倫相手を殺害した果純の足取りを掴めていないと報じていました。容一はテレビを消すと、「まだ大丈夫。ここまで大丈夫。」とジェンガはまだ倒れないと果純に伝えました。果純は「大丈夫。もう大丈夫。もう大丈夫。」と言ってブロックを1本抜き取ろうとしますが、ジェンガは崩れてしまいました。それを見た果純は落胆します。果純は「ねぇ、エッチしよう。」とこたつに入って横になっている容一を誘いますが、容一は乗り気ではありません。2人はセックスしてから少し時間が経ってからジェンガで遊んでいて、果純が「飽きたぁ?」と訊ねると、容一は「そんなことない。けどさ、さっきしたばっかりだし。」と答えます。果純は容一の隣で横たわり、甘えるように「どっか連れてって?こんなとこずっといたら、キノコ生えてきちゃう?」とお願いすると、容一は突然を仕事を理由に外に出かけますが、少し時間が経つと、容一は自室から戻ってきました。こたつに入って容一の帰りを待っていた果純は「もうヤらせてあげない。」と呟きますが、容一は果純の背中に抱きつくと、「ドライブ行こ。」と果純に告げました。容一は勤務先の鉄工所に行き、果純と出会った時に乗っていた白いバンを借りて戻ってきたのです。


その後、容一と果純はあの白いバンでドライブに出かけました。身元がバレないようサングラスをしていた果純は「この車って、私を跳ねたやつ?」と容一に尋ねると、容一は果純を跳ねた車だと答えました。果純は「あの時、殺してほしかったなぁ?」と言いますが、容一が「本当にそう思ってる?」と訊ねると、果純は「思ってない。」と言いました。次第に容一は口を緩めると、果純の前で笑いだしました。果純は「何笑ってるの?ねぇ、笑うなよ~。」と容一に言いますが、容一は笑い続け、果純は容一と一緒に笑い合います。容一は白いバンを近くの海辺に停め、2人は海辺に立って景色を眺めていました。そこで果純は一隻の豪華客船を見つけると、両手を振り上げ、「おーい!乗せてー!」と海に漂う豪華客船に向かって呼びかけていました。容一も果純と同じように両手を振り上げ、「おーい!」と呼びかけます。2人は車に戻ると、車中で身体を重ねました。その時、果純は「ずっと、一緒にいてくれる?」と容一に訊ねました。容一は「うん、ずっと一緒だ。」と答え、果純は「ありがとう。」と言いました。


1週間後、夕方、その日は果純の誕生日でした。果純は容一が鉄工所で働いている間、自分で自分の誕生日ケーキを作っていました。同じ頃、仕事を終えた容一が鉄工所の休憩所で着替えを済ませ、帰ろうとしていると、事務所のソファーに座っていた鎌田が「最近、"ミキティー"全然メール返してこないんすよね。色々買ってきてやってんのに。どうなんすかこれ?」と容一に相談を持ちかけてきました。しかし容一は無意識に笑ってしまい、鎌田は容一の頬を叩くとと、「笑ってんじゃねぇよ!」と注意しました。腹を立てた鎌田は「風俗奢ってくださいよ。」と容一に頼みますが、容一は鎌田の頼みを断りました。鎌田は「帰ったらセンズリこくだけでしょ?じゃあ金貸してくださいよ。」と金銭を要求すると、容一は断ろうとしますが、鎌田は「断る権利なんかないでしょ?2万でいいっすよ。」と迫り、容一は渋々2万円を渡しました。容一は鉄工所から退勤しました。


その直後、容一とすれ違うように事務員の光子が休憩所にやってきます。鎌田は光子に近寄り、「また前借りいい?」と頼みますが、光子は「今月は給料ありません。私が貸したお金に充てさせていただきましたから。」と言って断ったうえ、貸したお金を返すよう鎌田に訴えました。悪びれる様子を見せないでいる鎌田が光子にキスをすると、光子は鎌田の唇を噛み、「鎌ちゃん、他の女に貢いでるんでしょ?知ってるんだから?調べてもらったんだから!」と鎌田を問い詰めました。鎌田は誰に調べてもらったかを尋ねますが、光子は「誰だっていいでしょ。」と言って答えようとしません。腹を立てた鎌田は光子を流し台のほうへと追いやると、「ごめん、最近構ってやれなかったもんなぁ。」と言って彼女のスカートの中に手を突っ込みました。彼は光子の陰部が濡れていることを知り、「ヌルヌルじゃないか。」と言って濡れた右手を光子の口に突っ込もうとしますが、そこへ休憩所に来た大柄の男性が現れると、男性は吉田を助けようと鎌田を投げ飛ばしました。大柄の男性は「お前、終わってるよ。」と鎌田に告げました。


大柄の男性の正体は光子の兄で、ヤクザである彼は光子が鎌田と関係を持っていることを本人から聞き、部下を使って鎌田の身辺調査をしていたのです。彼は鎌田が別の女性と関係を持っていることを知っていて、それを妹にも伝えていました。光子の兄は鎌田を捕まえると、工場にあった油圧プレス機で鎌田の右手の人差し指を痛めつけ、吉田は鎌田の携帯を調べ、鎌田と"ミキティー"のメールのやり取りを見つけると、「鎌ちゃん、信じてたのに!」とショックを受けていました。光子の兄はガスバーナーで鎌田を更に痛めつけようとしますが、鎌田が「お金、返す!」と懇願すると、光子は「私、信じるよ。だって、好きになった人だもん。鎌ちゃん、最後に1回信じてあげるから。お金、返して。」と鎌田に言いました。光子の兄が「いつ返すんだよ?」と迫ると、鎌田は「すぐ!今日中!今日中!」と吉田兄妹に約束しました。光子の兄は慰謝料込みで1000万円持ってくるよう鎌田に要求し、吉田は「鎌ちゃん、待っててあげるから。持ってきて。」と言いつつ、「逃げたらお兄ちゃんに一族郎党皆殺しにしてあげるから。」と鎌田に脅しをかけました。鎌田は工場を出ると、洋服店で果純のドレスを買おうとしていた容一に電話をかけました。携帯に鎌田から電話が入ってることに気づいていましたが、鎌田からの電話を拒否しました。鎌田は「おい、出ろよ!おい、てめぇ!今からそっちに行くから金を用意して待ってろよ!1000万だよ、1000万!出来なかったら女を埋めたことバラすからな!」と留守電を入れ、容一の自宅のアパートへと急ぎます。


一方、吉田兄妹は誰もいない工場のなかで鎌田の帰りを待っていました。光子の兄が側にあった鉄パイプでバッティングの練習をしていると、吉田は「逃げたらあいつとあいつの家族皆殺しにしてね。」と言って鎌田から奪った運転免許証を兄に見せつけました。光子の兄は「それ、面倒くせぇよ。」と言って拒みますが、吉田は「私、忘れないからね。お兄ちゃんに処女奪われたこと。何でも言うこと聞くって約束したよね。」と兄に迫ります。どうやら彼女は兄にレイプされた過去を持っているようでした。吉田は鎌田の居場所が分かるよう彼の携帯の位置情報で位置を割り出したと兄に報告し、光子の兄は「お前、やるじゃん!」と言って喜び、妹に抱きつきました。

一方、自室にいた果純は容一の帰りを待っていました。彼女は部屋の外から足音が聞こえていることに気づき、玄関に向かいましたが、部屋に入ってきたのは容一ではなく、後輩の鎌田でした。鎌田は死んだと思っていた果純が生きていることに驚きますが、容一が警察に追われている果純を助けようと自室に匿っていたのではないかと悟りました。身の危険を感じた果純は鎌田を追い払おうと包丁を手に取り、「帰って。」と訴えますが、果純の事件を知っていた鎌田は「また殺しちゃう?」と告げると、果純を蹴りあげました。果純の包丁は手元から落ち、鎌田は壁際に追いやられている果純が身につけていたパンツに目をやると、「ねぇ?黙っててやるから金貸してよ。」と果純を恐喝しました。しかし事件当時、所持金を持たずに自宅のマンションをあとにした果純に大金を払える余裕はありません。すると鎌田は「じゃあさ、あいつに頼むから、帰ってくるまで…大人しくしといてよ!」言って果純を捕まえると、横に倒し、レイプしようと試みますが、嫌がる果純は抵抗しようと負傷した鎌田の右手を噛みました。怒った鎌田は「優しくしようと思ったのに!なんだとてめぇ!」と言い、負傷した右手に巻いていたタオルで果純の首を絞めました。そして、鎌田は果純をうつ伏せにさせ、ズボンとパンツを脱ぐと、バックで犯したうえ、タオルで彼女の首を絞めて窒息させました。凌辱された果純は苦しみ続け、鎌田は果純を自分の意のままにしようとしていましたが、帰宅してきた容一が包丁でレイプしている鎌田の背中を刺しました。刺された鎌田は逃げようとしますが、容一は果純を守ろうと鎌田を取り押さえると、馬乗りになって彼の背中を何度も刺しました。


その後、容一は果純の誕生日プレゼントが入った紙袋を果純に渡しました。果純は喜び、紙袋の中を見ると、そこには薄いピンク色のドレスが入っていました。容一は「誕生日おめでとう。」と果純を祝いますが、人を殺めてしまったため、一緒に逃亡しようとドレスを見て喜ぶ果純に言いました。しかし果純は「もういいよ。疲れちゃった。ひとりで逃げて。あいつ、私がやったことにして。どうせ死刑だし。」と答えます。容一は「ダメだ。ずっと一緒って。」と果純とずっと一緒にいたいと幸せな気分でいる果純に言いました。その頃、吉田兄妹はふたりでグリコをしながら鎌田のいる容一の自宅のアパートへと向かっていました。


一方、深夜、鎌田の死体を放置したまま夕食を共にした容一と果純はオーディオから流れる音楽に乗せてダンスを踊っていましたが、容一と果純は心中する道を選ぼうと窓や扉を閉め、ガス栓を開けていました。幸せな気分を味わっていた2人は一酸化炭素中毒で意識を失いました。そこに吉田兄妹が容一の部屋に押し入ってきました。吉田はガス漏れしていることに気づいていましたが、光子の兄は目の前に鎌田の死体があることやガス漏れしていることに気づいておらず、「よっしゃー!焼き殺してやるよ!」と言ってガスバーナーに火をつけました。その瞬間、彼のガスバーナーのせいで漏れ出したガスに引火してしまい、容一の部屋は大爆発を起こしてしまいます。


容一の部屋の爆発により、この世を去った容一と果純は森の中を彷徨っていました。2人は賽の河原に行き着くと、そこには焚き火を囲って宴会をしていた鎌田、吉田光子とその兄、修平、琴美の5人がいました。容一と果純が何とも言えない表情で宴の席に向かうと、果純の夫が暖かく迎え入れます。果純の不倫相手が「因果応報!」と告げると、果純は「ごめんなさい。」と謝ります。今までの出来事が何事も無かったかのようにあっけらかんと振る舞っている鎌田は「もういいって!お迎えが来るまで一緒に飲みましょう!」と飲み物が入った八勺枡を容一と果純に渡しました。容一と果純がそれを飲むと、八勺枡に入っているのが酒であることに気づき、2人は宴会に参加しました。賽の河原の宴会は盛大に盛り上がり、泥酔していた一同は輪になって花笠音頭で踊っていました。その時、吉田は三途の川から一隻の渡し船が迎えに来ていることに気づきます。それを知った一同は両手を振りながら「おーい!」と船に乗っていた人物に呼びかけていました。しかし、渡し船に乗っていたのは和服を身につけ、白髪を生やしていた鬼のような顔の人物でした。

THE END



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感想
この映画はピンク映画『恋の豚』や今年公開の青春映画『アルプススタンドのはしの方』などでお馴染みの映画監督、城定秀夫監督によるエロティック・サスペンス。実質全国公開されていない劇場未公開作品(DVDスルー)であり、2019年11月6日にリリースされている作品です。

『アルプススタンドのはしの方』を観賞してからは城定秀夫監督の過去作を不定期で観賞していて、DVDスルーなのでかなり情報が少ない作品ではあったのですが、『アルプススタンドのはしの方』を越える大傑作であり、間違いなく「映画ファン必見!」という文字が似合うピンク映画だと思いました。上映時間が75分なのにサクサクとテンポ良く進むし、伏線の張りと回収が秀逸だし、作中で誰もが驚くサプライズが用意されていたし、終盤以降の展開はスリリングだし、大人向けの映画なんだけど、観客の心に爪痕を残してくれる素晴らしい一作でした。

物語は夫と愛人を殺し、警察から逃げていた果純が彼女を車で轢いてしまった鉄工所勤務の容一と出会い、容一のアパートで同居生活をしていくうちに恋愛関係へと発展していく様子が描かれています。ジャンル的にはサスペンスなんですが、サスペンス映画なのにファンタジー映画の要素とコメディ映画の要素が盛り込まれていて、ピンク映画なのでR15指定がつけられているんだけど、娯楽性が非常に高い内容となっています。

最大の魅力は登場人物のほとんどが魅力的に描かれていることでしょうか。まともな登場人物は少なくとも容一と果純しかいないんだけど、登場人物のほとんどはキャラが立っていて、人間味臭いユーモアがある描写をしっかり取り入れているのでとても面白いです。例えば、主人公のひとりである岡田容一は素人童貞で、後輩の鎌田に酷い扱いをされている冴えないキャラなんですが、容一がいつも「すいません。」と果純に謝るあたりなんかは地味に『アルプススタンドのはしの方』で多用されていた「しょうがない」という台詞を彷彿とさせる台詞なんだけど、彼が鎌田に虐げられていたなかで自分に自信が無く、社会の端の方で生きてきたことがひしひしと伝わってくる台詞だと思うし、中盤で布団で横になる果純を抱き寄せたり、クライマックスで果純を守ろうと彼女を凌辱していた鎌田を刺殺していたりと自分の見せ場でちゃんと男気を見せてくれるキャラクターに仕上がっていました。或いは、容一の後輩である鎌田は初登場シーンだけですぐに感じ悪いキャラだと見分けがつくクズキャラになっていて、光子が作ったお弁当を一斗缶に入れて燃やすところとか、笑っている容一の頬を叩くあたりとか、観客に絶妙にいそうって思わせる実在感を漂わせていました。あとは台本にはちゃんと名前が明記されてるのか、作中では下の名前が説明されてなくて何とも言えないところではあるんだけど、ヤクザである光子の兄は強面なのに妹の光子の前だと無茶苦茶なお茶な一面を見せていて、光子と彼女の兄の掛け合いは観ていて楽しかったです。特にラストシーンの手前で光子の兄が「よっしゃー!焼き殺してやるよ!」と言ってガスバーナーを点火させるあたり、あれは作中のなかで1番爆笑できるところだったと思います。とにかく要するに、魅力的な登場人物が放つユーモアのおかげで作中の音楽と相まって、全体的に喜劇っぽく、娯楽性が高くなっている要因のひとつなのかなと思いましたね。

それに加えて、役者陣の演技はみんな素晴らしかったですね。特に容一の後輩である鎌田を演じた山本宗介さんはピンク映画『ひまわりdays』にも出ていたのですが、全体的に彼の演技を観てイライラさせられたし、鎌田のクズッぷりを見事に体現していましたね。また、容一に利用されている事務員の吉田光子を演じた和田光沙さんはハマり役だった一方で、終盤では光子が鎌田や彼女の兄の前で見せる悪魔的な怖さを表現していて、お見事でした。一方で、実質的な主人公のひとり、葉月果純を演じた浜崎真緒さんはピンク映画で活躍している和田光沙さんや山本宗介さんの演技が凄いせいか、ちょっと素人臭い演技が目立ってるなあという印象を受けましたね。彼女の役柄は魅力的に描かれてはいたんだけど、台詞の言い回しにちょっとだけ違和感を覚えましたね。

それで、サプライズがあるとすれば、中盤の悪夢シーンとラストの三途の川辺の宴会シーンでしょうか。中盤で果純が期限切れの料理酒を飲んで夢を見るシーンがあるのですが、果純が目覚めるシーンがくるまでは夢なのか現実なのかが非常に曖昧に描かれていて、容一の部屋の台所のシンク下収納と葉月夫妻の部屋の台所のシンク下収納が繋がっている時点で既に驚かされるし、物凄くファンタジー要素のあるシーンだと思いました。それで果純が見た悪夢そのものは果純の心理を嫌な感じで表現していて、生理的嫌悪感丸出しで果純の夫の修平と愛人の琴美がセックスしている描写を描き切っていると同時に果純が修平と琴美を殺したことによる罪悪感をもろに表していた感じがしますね。

それでラストは秀逸で、今年観た映画のなかで1番ストーリーが捻られているラストだったんじゃないかなと思いました。正直、三途の川辺で果純の夫、修平と愛人の琴美、鎌田と光子がすぐに打ち解け合うあたりは荒唐無稽さがあるんだけど、非常に意外性があるし、主要人物全員が三途の川辺で楽しそうに宴を楽しむくだりは笑って楽しめましたね。私なりの解釈なんですが、白髪で鬼のお面をつけた男性?が渡り船に乗っているんだけど、あれは奪衣婆、もしくは懸衣翁を表現していて、果純ら一同は霧が濃くて三途の川のほとりが見えないから渡り船の人物が誰か分からないまま手を振っているんでしょうね。主要人物全員は罪を犯して地獄で痛い目に遭うんでしょうが、最後は果純たちが幸せそうに渡り船を呼ぶ姿で物語が終わるのでバッドエンドである同時に非常に心地いいラストだったんじゃないかと思います。あと、終盤に差し掛かる前、容一と果純が海辺で海に漂う豪華客船に向けて「おーい!乗せてー!」と呼んでいるシーンはラストの三途の川辺のくだりに繋がる伏線になっていて、豪華客船を呼ぶ容一と果純と渡り船を呼ぶ一同が地味に対になっているところも面白いところではあります。

全体的に『アルプススタンドのはしの方』同様、75分に上手くまとめているので文句無しの傑作なんですが、欲を言えば、他の人のレビューを見て共感しちゃったのですが、容一が鎌田にいじめている理由を作中で説明しても良かったんじゃないかなと思いましたね。恐らく鎌田は自分が働いている工場の部署のなかで1番いびりがいがあったとか、もしくは鎌田も工場のなかで孤立していて、金を巻き上げるのは容一と光子しかいなかったかもしれないけど、いずれにしても鎌田の背景が作中でカットされているあたりは評価が分かれそうですね。あとは光子の兄は終盤だけしか登場してこないのでもうちょっと見せ場を与えてほしかったなあと思っちゃったのですが、それでもこういった物足りなさがあっても観ててあんまり気にならなかったし、間違いなく文句無しの傑作であることは言うまでもないと思います。

ということで、観賞する前は情報が少なくて、観賞しようかスルーしようかで悩んでいたのですが、サクサクとテンポ良く進むし、伏線の張りと回収は秀逸だし、ラストシーンは誰もが驚くサプライズが用意されているので滅茶苦茶面白かったです。ジャンルそのものはピンク映画で、R15+指定が必須の作品ではあるんだけど、万人にオススメできる青春映画『アルプススタンドのはしの方』が2020年に公開されている傍ら、城定秀夫監督が本来得意としているピンク映画でも娯楽性が高い作品を発表しているため、もっと多くの人にこの作品が知れ渡ってくれたらなあと思いましたね。ちなみに城定秀夫監督最新作は七海なな主演の『花と沼』という作品で、ソフト化されるまで半年以上かかるかもしれませんが、それでも出来る限り城定秀夫監督の作品を引き続き追いかけたいですね。是非ともレンタルや配信で観賞してみてください。