今回はプロット自体は悪くなく、笑いどころはちょっとは笑えて楽しめるのだが、主人公が期待以上に反撃してくれないので肩透かしを食らったサスペンスホラーを紹介します。

レディ・オア・ノット

主演:サマーラ・ウェイビング 『ザ・ベビーシッター』

出演:マーク・オブライエン/アダム・ブロディ 『シャザム!』/アンディ・マクダウェル/ヘンリー・ツェニー/エリス・レベスク/メラニー・スクロファーノ/クリスチャン・ブルーン/ニッキー・グアダニ/ジョン・ラルストン 『ホワイト・ラバーズ』/リアム・マクドナルド/イーサン・タヴァレス


・あらすじ(ネタバレ)

30年前、雷の音が鳴り響くなか、屋敷の廊下でふたりの幼い兄弟が走り回っていました。兄のダニエルは怖がっている弟のアレックスをクローゼットの中に隠しました。すると直後、花婿の男、チャールズがやって来て、ダニエルの両腕を掴むと、「奴らに殺される。助けてくれ。」と訴えます。チャールズの腹部にはボウガンの矢が刺さっていて、腹部から血を流していました。しかしダニエルは「ここにいたよ!」と両親たちに呼びかけました。チャールズの結婚相手でこの家のご息女、エレーヌは両親たちに取り押さえられていて、両親たちはエレーヌを捕まえたままボウガンでチャールズを撃ちました。両親たちは不気味な仮面と黒装束を身に着けています。両親たちが重傷を負ったチャールズを連れていき、チャールズは「こんなことは何も起きない。」とエレーヌに訴えますが、エレーヌはこの一家が執り行う儀式を受け入れるしかなく、部屋で家族と一緒に儀式をするのでした。

30年後、現在、屋敷の一室にはウェディング姿の花嫁がタバコを吸いながら緊張した面持ちでいました。その日は結婚披露宴があり、独り言を言うグレースの前にアレックスが現れます。アレックスは彼女のウェディング姿を見て「凄く綺麗だ。」と言いました。アレックスは家族がいる庭に向かうよう求めると、グレースはアレックスの父親のトニーに金目当ての結婚だと思われているのではないかと告げました。彼女を心配するアレックスは「時間が経てば解決する。」と励まします。グレースはこれから嫁ぐ家族、ル・ドマス家が普通の家族ではないと思いつつ、家族の一員になることを嬉しく思っていました。グレースとアレックスが言葉を交わしている最中、アレックスの兄、ダニエルが2人を迎えにやって来ます。ダニエルは弟のアレックスとじゃれ合うと、「逃げるなら今だぞ。君は家族じゃない。いい意味で言ってる。」と意味深な発言をします。ダニエルは話を聞いて笑みを浮かべるグレースを見ると、「ル・ドマスの一員になると決めたなら庭に出てきてくれ。」と言いました。ダニエルが去ったあと、アレックスは「ダニエルの言う通りだ。2人で一緒に逃げてもいい。」と神妙な面持ちで話し、冗談だと思うグレースに「ふざけてなんかない。本気で言ってんだ。」と言いますが、グレースは「いいえ、逃げない。」と言ってアレックスにキスしました。

その後、グレースが庭に行くと、ル・ドマス家はグレースと一緒に新しい家族写真の撮影に入ります。彼女は噴水の前で写真に写りますが、近くで椅子に座って見つめているル・ドマス家の叔母の存在が気になります。この時、アレックスの妹、エミリーとその夫のフィッチが出席しておらず、トニーは不満に感じていました。グレースの撮影が完了し、グレースがアレックスの様子を見つめていると、義理の母親、ベッキーが話しかけて来ました。ベッキーは亡き母親が愛用していたシガレットケースを持っていて、「あなたはタバコは吸うの?」と尋ねますが、グレースは吸わないと答えます。ベッキーは家族の一員になった時にル・ドマス家の面々から冷たい目で見られていたと語り、自分と同じ状況に置かされている彼女に「堂々してシカトすればいい。大事なのはアレックスの気持ちよ。」と助言しました。そして結婚式に入ると、グレースとアレックスはル・ドマス家の面々や2人の知人らに祝福されながら誓いのキスを交わしました。


その夜、結婚式を終えたグレースとアレックスは自分たちの部屋に戻り、グレースは大事な話をしたがるアレックスをよそに彼をベッドに押し倒し、身体を重ねようとしますが、彼女は叔母のエレーヌが自分たちを見ていることに気づきます。エレーヌはわざわざ使用人が使っている隠し通路で2人を呼びに来たのです。エレーヌが立ち去ったあと、アレックスはずっと言えなかったル・ドマス家が執り行う一族の儀式を説明しました。一族は家族の一員となる新郎や新婦に結婚式が行われた夜の午前12時、ル・ドマス家全員と一緒にゲームを執り行い、新郎や新婦がその時にやるゲームをカードで決め、ゲームが終わったら正式に家族の一員になれるのです。グレースはゲームのなかにはバックギャモンやチェッカーといった簡単なゲームがあると知り、ゲームをする理由を尋ねると、アレックスはゲームの販売で財を成したからだと曖昧に応えます。その儀式に勝敗など関係なく、グレースはル・ドマス家に受け入れてもらえるならとやる気になりました。アレックスはグレースに音楽室で待つよう言い、グレースは音楽室に行くことにしました。


彼女が音楽室に行っている間、アレックスは別室に行くと、トニーと話をしていました。部屋のダイニングテーブルには豪華な椅子があり、トニーは「ル・ベイル様がそこにいらっしゃるはずだ。」と告げます。トニーは儀式の秘密を彼女に話していないアレックスに「もし彼女があのカードを引いたらすべきことする覚悟はあるか?」と確認しますが、アレックスは上手く答えられません。

グレースが音楽室に入ると、義母のベッキーやダニエル夫妻が部屋にいました。ベッキーはグレースの誓いの言葉を聞いて、グレースの親が里親だったことを初めて知ったと話します。グレースは里親の元で育ったが、関係はいいものではなく、本当の家族に憧れを持っていると言います。ベッキーは「あなたに会った時、トニーにこう言った。「やっと子供がいい娘を連れてきてくれた」と。私たちはアレックスを家に連れ戻してくれて感謝している。だから、アレックスにこの家に留まるよう説得してあげて。家族なんだから。」とグレースに言うと、グレースは「約束します。」と答え、ベッキーは彼女を抱き締めました。そこにアレックスがやって来て、2人の様子を見つめました。アレックスが彼女を連れて行くと、「2人で何を話してた?」と聞きました。グレースは「お母さんは優しい方よ。」と応えます。アレックスはゲームから来る不安からか、少し気分が悪いようでした。そこに妹のエミリーとその夫のフィッチが息子のジョージとゲイブを連れて音楽室にやって来ます。ジョージとゲイブは仮面を着けて鬼ごっこをしていて、ダニエルは仮面を取るよう2人に注意しました。フィッチとエミリーはグレースや家族に挨拶し、エミリーは明るくグレースに接し、「家族になれて嬉しい。」と彼女と大はしゃぎしていましたが、傍らにいたエレーヌが「家族になれるかは"彼"次第よ。」とエミリーに告げます。

時刻は11時55分、開始5分前となり、執事のスティーヴンスが時刻を知らせると、トニーは家族を扉に「ル・ドマス」と書かれた一室へと案内しました。家族は部屋に通され、グレースもその一室へと入ります。アレックスが複雑な表情を浮かべるなか、一同は大きな円形のテーブルを囲みます。トニーは「うちの家族は伝統を重んじる。そして今から君にもその伝統に加わってもらいたい。」とグレースに告げると、ゲームが行われるようになった経緯を語り始めます。曽祖父のヴィクター・ル・ドマスは南北戦争時代、自らの会社でトランプの製造・販売をしていましたが、スポーツ用品やボードゲームの製造・販売を始め、拡大させると、トニーの代では4つのスポーツチームを買収するほどの大企業へと発展していました。その背景には寛大な後援者とある箱のおかげらしく、トニーは語りながらその箱を取り出しました。彼は箱を席に座るグレースや家族に1人ずつ回していくよう促すと、再び語り始めます。ヴィクターは会社が上手くいく前は貧しい商船の船乗りで、ある日異国の船で働いていた際にル・ベイルという人物と出会います。ル・ベイル様は異国の骨董品を売買しているコレクターでした。ゲーム好きだった2人は何時間もトランプをして遊び、その最中にル・ベイル様が持っていたのがその箱でした。ある夜、ル・ベイル様は「もし港に着く前にその箱の謎を解いたらあなたがやりたいこと、何にでも援助する。」という賭けをヴィクターに持ちかけます。ヴィクターは航海の間、箱を観察し続けた末に謎を解き、彼はル・ベイル氏から援助を受けるようになったのです。それ以来、ル・ドマス家は新しい家族の一員が加わるとこのゲームをしているとのことでした。席に座るグレースや家族が箱を回し終えると、箱の中央にある歯車が勝手に動き出し、取り出し口が開きました。トニーはその箱に何も書かれていないトランプのカードを入れ、新しい家族の一員にカードを引くと、ル・ベイル様がゲームを選んでくれると説明し、グレースの前に箱を置きました。ダニエルの妻、チャリティはチェス、フィッチはババ抜きだったとグレースに伝えます。グレースが「私がカードを引けばいい?」と聞くと、トニーは「君の番だ。」と答えました。箱の中の歯車が動き出し、グレースが取り出し口からカードを引くと、カードには「かくれんぼ」と書かれていました。グレースは笑顔でそれを伝えますが、家族全員の顔色がガラリと変わります。グレースはアレックスから部屋に来るよう誘われます。


トニーはグレースを連れて行くと、「ルールは簡単だ。家の中ならどこに隠れてもいい。我々は100まで数えて、そのあとに君を捜しに行く。」と説明しました。グレースは防犯カメラを見つけ、「でも鬼のほうが有利だと思いません?」と聞くと、トニーは「カメラは絶対に使わない。我々は常に曽祖父の時代に準じてゲームをしている。」と答えます。警備室でスティーヴンスが防犯カメラの映像を切ります。グレースが「かくれんぼじゃ私は勝てませんよね?」と言うと、トニーは「勝ちたければ夜明けまで隠れるんだ。」と答え、それを聞いたグレースは愛想笑いを浮かべました。グレースがトニーと別れると、警備室から出たスティーヴンスが蓄音機で「かくれんぼの歌」を館内に流しました。グレースが館内を歩いている間、トニーはダニエル夫妻、エミリー夫妻、エレーヌ、ベッキーにライフルや弓矢などの武器を渡しました。トニーも武器を手にします。そして100秒程度ある"かくれんぼの歌"が終わり、ゲームは開始されました。ベッキーは一同が集まる部屋で黙っているアレックスにここで待機するよう告げ、チャリティにアレックスを見張るよう頼みました。ル・ドマス家の面々は部屋を出てグレースを捜しに行きますが、アレックスは隙を狙って部屋から出てしまい、部屋の前で鏡に向かって化粧をしていたチャリティはアレックスが消えていることに気づきます。


一方、グレースは荷物用エレベーターの中に隠れていましたが、かくれんぼが単なるゲームだと思っていました。やがて彼女はエレベーターの中にいるのが我慢できなくなり、外に出ますが、ドレスの長い裾がエレベーターに挟まってしまいます。困ったグレースは挟まった裾を切り、廊下を歩きました。しかし寝室でジョージとゲイブの子守をしていた使用人のクララがジョージの姿がいないことに気づき、館内でジョージを捜し始めます。グレースはジョージを探すクララの声に気づき、身を潜めますが、背後にいた誰かに口を押さえられます。グレースの背後にいたのはアレックスでした。アレックスは部屋に連れて行くと、ゲームのある秘密を説明しようとしますが、クララの声を聞いて彼女を連れてベッドの下に身を潜めました。クララが部屋にやって来ると、ジョージを捜索しますが、廊下から物音が聞こえました。クララは廊下にいると思って部屋から出ようとしますが、何者かに拳銃で撃たれました。クララは倒れ、グレースが覗き込むと、瀕死のクララがグレースのほうを見ていました。グレースは思わず口を手で押さえます。

クララを撃ったのはグレースを捜していたエミリーであり、彼女はトニーらを呼びますが、自分がグレースと勘違いして撃ったことに気づくと、エミリーとトニーらは驚きました。トニーらはエミリーを責め立てます。エミリーは心配そうに瀕死のクララを見ていましたが、ベッキーの提案でトニーらはグレースに見られないクララを運ぶことにしました。トニーらが立ち去ると、アレックスはグレースと逃げることにしますが、携帯はスティーヴンスに没収されていました。彼は困惑するグレースに「"かくれんぼ"は最悪のカードで、彼らは夜明けまでに君を殺す気だ。」と説明し、グレースを連れて使用人用の隠し通路へと入りました。エミリーは置き忘れた拳銃を取りに行くと、鏡に映る自分に「私が勝ってやる。」と鼓舞し、コカインを摂取しました。


部屋を出ると、アレックスは通路で困惑し続けるグレースにスニーカーに履き替えるよう頼みました。グレースがスニーカーを履くと、アレックスは「彼らは君を殺さなきゃ悪いことが家族に起きると思ってる。だから、僕が家族を欺いて君を逃がそうとしている。でも家は厳戒体勢だ。」と説明します。話を聞いたグレースはアレックスがどうしてカードの意味を言わなかったのかと責め立てます。フィッチは下の階のトイレで通気口から2人の声を聞いていました。話は続き、アレックスは「けどカードを引かなきゃ、カードを引かなきゃ僕も死んでたんだ。結婚したらゲームをしなきゃいけないんだ。しないと死ぬ。大叔父さんがそうだった。結婚して、ゲームをしなかったら翌朝死んでたんだ。いとこのレイチェルにも会ったことない他の大勢にも同じことが起きた。ゲームをやるしかない。」と説明します。グレースは「イカれた家族だって聞いてたけど、サイコキラーだって聞いてなかった。私に言わずにここに連れてくるなんて…。何で何も言ってくれなかったの?」と再び責め立てます。アレックスは本当のことを話したらグレースと別れることになると思っていて、グレースにその事を打ち明けると、「この廊下を真っ直ぐ歩いたら小さなキッチンまで行ってくれ。僕は警備室に行ってドアの鍵を解錠する。君は逃げるんだ。それしか無いんだ。」と伝えます。そして彼はグレースをなだめると、彼女とキスをし、その場から立ち去りました。グレースはアレックスの言う通りに従いました。彼女は廊下を歩いている際、ドレスの長い裾が邪魔だと感じ、動きやすいように裾を短くしました。




グレースはキッチンへと向かおうとしますが、そこには2つのドアがあり、どっちがキッチンなのかが分かりません。仕方なく片方のドアを開けますが、クララを運んでいるトニーとダニエル、エレーヌと出くわしてしまいます。更にグレースが振り返ると、エミリーの姿があり、エミリーは拳銃で何発も撃ちますが、グレースはなんとかその場から逃げ出しました。グレースが書斎に入ると、窓を開けようとしますが、鍵がかかっていて開けられず、固定電話で電話をしても繋がりません。彼女は椅子で窓を割ろうとしますが、そこに偶然にもダニエルが書斎にやって来ます。グレースは酒を飲もうとしているダニエルに助けを求めると、ダニエルは「どっちみち君は死ぬ。けど僕は君を殺したくない。」と言います。彼はトニーの肖像画を見ると「10秒数えるから逃げろ。」とグレースに言い、グレースは書斎から逃げました。

グレースが逃げたあと、ダニエルは「書斎にいたぞ!」と叫び、家族に伝えました。駆けつけたチャリティは夫がグレースを逃がしたことに気づくと、「せめて真面目にやってよ。」と責めますが、ダニエルは「どっちにしろ、俺がいなくても君が殺すだろ?」と言い訳します。ダニエルは酒を片手に「俺が儀式の話をしたときに君は微動だにしなかった。魂を売りたくてうずうずしてた。」と自分が結婚式の前にチャリティに儀式の話をしたことを持ち出しました。チャリティは「結婚前の私の生活を知ってるでしょ。この生活を失うなら死んだほうがマシ。」と切れ気味に言いました。その後、トニーとエレーヌが駆けつけると、ダニエルは「間一髪で逃げられました。」と報告しました。フィッチがエミリーと共にやって来ると、ダニエルはフィッチにエミリーがクララを誤って殺したことを伝えます。エミリーはまたしても拳銃を置き忘れてしまい、フィッチが持っていたボウガンをエミリーに貸しますが、使用人のティナがグやって来ると、エミリーは誤って弓を発射してしまい、弓はティナの口の中に命中し、倒れ込みました。チャリティは使用人を儀式に捧げようと提案しますが、エレーヌは花嫁を捕らえて儀式に捧げたいと訴え、許してくれません。エレーヌがティナの呻き声を耳にすると、持っていた斧でティナの首を切断しました。ベッキーとトニーは伝統を守らず、防犯カメラを使って捜しだそうと提案し、チャリティもそれに賛同し、自分が所持している武器を使いたいとお願いしますが、エレーヌは断固として儀式のしきたりは守りたいと考えていました。焦っているトニーは「花嫁を見つけて、夜明け前に儀式を行わなければ皆が死ぬんだ。」と訴えます。ベッキーはトニーとダニエルは警備室に行き、チャリティらはアレックスの捜索に専念するよう指示しました。



一方、グレースは扉に「ル・ドマス」と書かれたあの部屋に入り、壁に立て掛けられていたショットガンと弾帯を手に入れました。ショットガンを持ち、肩に弾帯をかけているグレースは鏡に映る自分を見て「ひどい。」と呟きます。そしてグレースがキッチンの勝手口から外に出ようとし、アレックスが警備室に入ってロックを解除しようとしますが、上手くできません。グレースがショットガンで扉を破壊しようとしていたその時、そこへ執事のスティーヴンスがキッチンにやって来ます。グレースは棚の後ろに身を隠します。アレックスは防犯カメラの映像を確認し、グレースの置かれている状況を知ります。その頃、書斎を出たトニーとダニエルは自分たちの意見に反対するエレーヌにうんざりしつつ、捜索を続けていました。その時ダニエルは防犯カメラが作動していることに気づき、2人はアレックスの仕業だと睨んで警備室へと向かいました。

アレックスがロックの解除が出来ず、苦戦するなか、グレースはスティーヴンスにバレないよう息を潜めながらショットガンに弾を込めます。スティーヴンスは気づいてないのか、やかんでお茶を沸かすと、歌いながらティーポットにお茶を入れます。その時、アレックスは警備室のモニターに貼られたメモを見てロックの解除方法を知り、なんとかキッチンの勝手口を解錠させることに成功しますが、スティーヴンスが解錠する音に気づき、不審に思います。そしてグレースがスティーヴンスの前に現れると、ショットガンを突きつけ、「向こうへ行って。」と要求しました。彼女は要求を拒むスティーヴンスに引き金を引き、発砲しようとしますが、発砲できません。弾は展示用の弾であり、弾を込めても発砲できないようでした。慌てたグレースは側にあったティーポットで襲いかかろうとするスティーヴンスの頭を殴り付けます。スティーヴンスは顔を火傷したままナイフを振り回し、グレースはショットガンと弾帯を捨てて逃げました。その頃、アレックスがグレースの様子を見ていると、トニーとダニエルが警備室の扉を激しく叩いてることに気づきます。アレックスは消火器で防犯カメラを操作する装置を破壊しますが、トニーとダニエルが室内に押しかけ、トニーはアレックスに襲いかかろうたします。アレックスはトニーの首を絞め、「グレースには手を出すな!僕の妻だぞ!」と訴えます。しかしダニエルがアレックスを諭し、アレックスはトニーの首から手を離します。アレックスはダニエルに助けを求めますが、アレックスがダニエルに気を取られている間にトニーがアレックスの頭を消火器で殴り、気絶させました。2人はアレックスを別室へと運び出します。


一方、グレースが逃げていると、トニーとダニエルの話し声を耳にし、どこかに身を隠そうと考えます。彼女は再度荷物用のエレベーターに隠れようとしますが、先に使用人のドーラが隠れていました。グレースは代わってほしいと説得しますが、ドーラはグレースの居場所を教えようと叫びだします。しかしドーラは慌ててボタンを押した挙げ句、誤ってエレベーターのドアに挟まれてしまい、命を落としてしまいます。慌ててグレースが逃げたあと、スティーヴンスがエレベーターに挟まれて死んだドーラを発見します。

その頃、トニーらは部屋に集まっていて、トニーはベッキーの反対をよそにアレックスを手錠で拘束させていました。スティーヴンスは部屋にやって来ると、警備室のセキュリティが修復できず、扉や窓が施錠できなくなったこととドーラが荷物用エレベーターで亡くなったことを報告します。トニーはこの状況に腹を立てますが、ベッキーがトニーをなだめます。ベッキーは扉を見張るようエレーヌとトニーに指示し、ダニエルと共に部屋から出ていきました。しかしグレースはなんとかバレずに窓から抜け出していました。彼女は窓の外に隠れながら部屋にいたトニーとエレーヌの話を聞いていました。エレーヌはそもそもアレックスを家から出したことが間違いだったと訴えますが、トニーはアレックスがカードを引いた訳ではなく、グレースの味方をしていただけだと話しました。エレーヌは「違うわ。本当の自分が怖いだけ。私と同じよ。」と言い、「あの夜、ただひとり愛した人を殺すしかないと聞いて私は心から絶望した。抵抗せずに私がチャールズを殺すべきだった。アレックスは真実を受け入れればいいだけよ。」と30年前のかくれんぼのことを語りました。トニーが「どんな真実?」と尋ねると、エレーヌは「アレックスは家族を率いる運命で、逃げてる場合じゃない。」と答えます。エレーヌは30年前にアレックスがル・ベイル様を見たことを持ち出しますが、トニーはその話を信じておらず、アレックスがデタラメを言ったに違いないと言いました。トニーは呆れた顔をして部屋から立ち去り、エレーヌも斧を持って立ち去りました。

グレースが脱出を図っている間、"かくれんぼ"に初めて参加するフィッチは携帯で「悪魔との誓約は存在するか」と検索しようとしますが、メールが入り、検索するのをやめました。どうやらメールの相手はフィッチの親族らしく、フィッチは「大変だよ。家のゴタゴタでね。」と返信します。その時、彼は窓の外から物音を確認しますが、不審に思わず、メールのやり取りを続けました。窓の外には2階から飛び降りたグレースがいました。グレースは白昼に行われた結婚式を思い出しつつ、広い庭を走り抜けました。そして彼女は近くにあった納屋へと入り、身を隠しました。しかし直後、懐中電灯を持っている何者かが納屋に入り、グレースに近寄ろうとしていました。納屋に入ってきたのはエミリー夫妻の息子、ジョージでした。グレースはジョージを見て彼の前から出てきましたが、ジョージは躊躇うことなくグレースに銃を発砲し、弾はグレースの左手のひらを貫通します。怒ったグレースは右手でジョージを殴って気絶させました。彼女は懐中電灯を奪いますが、ジョージの傍らにいた家畜の山羊に驚き、その拍子で納屋にある深い穴に落ちてしまいます。


そこはゴミ捨て場のような場所であり、家畜の山羊や過去に儀式で殺されたル・ドマス家の人々の遺体が捨てられていました。遺体を見たグレースは嘔吐します。コバエが飛んでいるなか、グレースはチャールズの遺体を見て驚くと、壁に立て掛けられたはしごをつたって這い上がることにしました。彼女は右手だけではしごを登り、途中ではしごが外れたものの、右手は無事に淵に手が届きました。しかし左手を着けようとすると、出っ張っていた長い釘が刺さり、撃たれた右手に貫通してしまいます。グレースは絶叫し、痛がりながらなんとか穴から脱け出します。地面に足をつけると、グレースはドレスの左袖を肩からビリビリに破き、その袖を包帯代わりにして負傷した左手に巻き付けました。彼女は「あのクソガキ!」と言って納屋をあとにしました。


グレースは走り出しますが、外でタバコを吸っていたチャリティが彼女を目撃します。チャリティはボウガンで1発仕留めようとしますが、失敗に終わります。彼女はなかに入ると、スティーヴンスや家族にグレースの居場所を知らせます。一方、グレースは敷地内にある柵の前にたどり着くと、柵に登ろうとしますが、高くて登れません。彼女は体力を振り絞って柵をねじ曲げると、その隙間から体を入れて外に出ようとしますが、柵の尖った部分が彼女の背中に食い込みます。なんとか柵から抜け出すと、グレースは通りすがりの車を止め、助けを求めますが、運転手は「邪魔なんだよ!」と言い、車はグレースの前から去っていきます。グレースは「何だよあんた、それでも人間かよ!金持ちなんか死んじまえ!」と車に向けて罵声を浴びせます。その直後、スティーヴンスの乗る車が近づいてることに気づき、彼女は森へと逃げ出しました。スティーヴンスは柵の前に車を停めると、柵に彼女のドレスの裾が引っ掛かっているのを見て、ビデオ通話でトニーらに報告しました。


書斎で通話していたトニーはグレースが森に逃げたことを書斎にいたダニエルらに伝えます。それを聞いたダニエルは捜索するのを諦めようとしますが、トニーは「まさか単なるゲームだと思ってるのか!」とダニエルを罵倒しました。トニーは夜明けまでにグレースを捜して殺さないと一家全員が死ぬと訴えます。彼はル・ドマス家と同じ儀式をしていたヴァンホーン家という一家が悲惨な死を迎えていることを知らせ、ヴィクターの肖像画に向かって「ゲームに負けたら全滅は嫌だって言わなかったんだ!これで我々は全員御陀仏だ!」と言って曽祖父のヴィクターを怨みます。ベッキーはエミリーとダニエルに使用人3人の遺体を納屋に運ぶよう指示し、エミリーにむやみに誰も殺すなと注意しました。フィッチはチャリティに屋敷から逃げ出そうと持ちかけますが、チャリティはフィッチの話を無視しました。一方、森の中に入って身を隠していたグレースはスティーヴンスに追われていました。スティーヴンスが車から降り、グレースを呼ぶと、グレースは遠くへと逃げ出しました。


エミリーとダニエルは納屋のゴミ捨て場で遺体を捨てながら話をしていました。エミリーは"かくれんぼ"で花嫁を殺さなければどうなるかを全く信じておらず、ダニエルはトニーから殺さなかったらどうなるか聞いていたものの、そこで訪れる悲惨な死は信じがたいものでした。エミリーはダニエルに30年前の"かくれんぼ"のことを覚えてないかと尋ねると、ダニエルは「全部覚えてるよ。俺はアレックスを守るのに必死だった。俺がいれば結婚させなかった。」と答えます。ダニエルは兄としてはダメダメで、一家全員が死ぬことが当然なのだと話します。その言葉を聞いたエミリーはジョージとゲイブを守りたいと決心します。その時、気絶していたジョージが2人の前で目覚めます。エミリーが駆け寄ると、ジョージは皆の真似をして頑張って花嫁を殺そうとしたと話し、エミリーは安堵の表情を浮かべながら「よくやったわ。」と言ってジョージを抱き締めました。

その一方、グレースは森の中で逃走を続けていましたが、彼女の前に車に乗るスティーヴンスが現れます。スティーヴンスはやっとグレースに追いつくと、車から降りて彼女を捕まえようとしますが、グレースはスティーヴンスの顔の傷口に触れると、腰に巻かれていたドレスの帯で彼の首を絞めて抵抗しました。スティーヴンスが動けなくなると、グレースはスティーヴンスの車を奪って逃走しました。彼女が車内でカーサポートに連絡し、警察に通報するよう頼みますが、相手をしていた担当者のジャスティンは盗難届が出ているとグレースに知らせると、遠隔操作で勝手に車を停車させました。グレースは周囲を警戒しつつ、ジャスティンに呼び掛けると、「この役立たず!」と罵り、ジャスティンは通話を終わらせます。幸いにも警察に通報することが出来たものの、直後に追跡していたスティーヴンスが車の脇に現れます。スティーヴンスは窓ガラスを割ると、麻酔銃をグレースに撃ちました。



その後、眠っていたグレースは悪い夢から目を覚まします。彼女は後部座席で横になっていて、スティーヴンスは車内でル・ドマス家にビデオ通話をしながら屋敷の裏門へと向かっていました。スティーヴンスはグレースを捕まえたことを報告すると、大音量のクラシック音楽を流して大喜びしていましたが、グレースはその隙にスティーヴンスの頭を蹴って気絶させました。しかしスティーヴンスが彼女に気を取られている間に道から逸れてしまい、車は横転してしまいます。スティーヴンスの携帯のビデオ通話は途切れ、携帯の画面を見ていたトニーは腹を立てます。



グレースは横転した車から抜け出しますが、そこに銃を持っているダニエルが現れます。グレースが「あなたは私を殺したくないでしょ?」と尋ねると、ダニエルは「殺したくない。」と答え、グレースは見逃すよう求めますが、ダニエルは彼女に銃を突きつけました。グレースは「アレックスに一生憎まれてもいいの?」と問いかけますが、ダニエルは「俺は生き続ける。俺は君のために家族を死なせるなんてできない。」と言います。ダニエルは「俺は君が思うような人間じゃない。君を助けられるとしたらそれはアレックスしかいない。」と言って銃床で彼女の頭を殴って気絶させました。彼は「出てきたらどうです?」と何者かに呼び掛けました。その場から出てきたのはトニーで、トニーとダニエルはグレースを屋敷の中まで運びだしました。夜明けまで1時間を切り、ル・ドマス家には時間がありません。

その頃、アレックスは部屋で拘束を解こうとしていましたが、彼の前にベッキーがやって来ます。ベッキーはグレースが捕まったことをアレックスに伝えると、「グレースを殺したくない。でもどうしても家族は守らなきゃ。」と告げました。アレックスは「グレースが死んだら母さんを殺す。」と言い、その言葉を聞いたベッキーは「なら私はどっちにしろ死ぬのね。」と返しました。ベッキーはタバコを吸いながらなぜこの家を出たのかとアレックスに尋ねました。アレックスは「さぁね。もしかしたらある夜、祈りを唱えて山羊の喉を掻っ切っている時にこれは普通じゃないと思ったのかもしれない。でも一番怖かったのは普通だと、僕は何でもしてしまうと気づいたことなんです。家族が許す限りね。そしてグレースに会った。彼女は家族とは真逆で、いい子で、僕はいい人間になれると思った。だから母さんか彼女を選ぶならグレースを選ぶ。」と語ります。それを聞いたベッキーは「私はあなたを理解している。」と告げました。アレックスの元を立ち去ると、ベッキーはエミリーの2人の息子にル・ベイル様のお陰で裕福な生活ができ、彼は家族に見返りを求めているとし、新しい家族の一員が来る時には儀式をすると言い聞かせていました。フィッチは酒を自分を鼓舞していて、ダニエルは椅子に座って物憂げな表情をしていました。


グレースが目を覚ますと、口に猿ぐつわをされ、ロープで手足を拘束されたままテーブルの上で仰向けに寝かされていました。彼女の周りには黒装束を看につけるル・ドマス家の面々が儀式を始めていて、グレースを生贄に捧げようと呪文を唱え、器に入っている飲み物を回して飲んでいました。トニーは「今宵、新たなる誓約をする。我々の先祖がしたように、この生きた血と肉を生贄として捧げる。」と言うと、短剣で突き刺そうとしますが、トニーはお腹を押さえて血を吐きました。やがてダニエル以外の家族が血を吐くと、エレーヌが飲み物に毒が仕込まれていたことに気づき、トニーはダニエルに激怒しました。ダニエルは使用人の遺体に使っていた塩酸を飲み物に入れていたのです。ダニエルはその隙を突いてグレースの拘束を解き、彼女を連れて逃げ出しました。その頃、アレックスは手錠を外すと、グレースの元へと向かいます。



ダニエルはグレースを連れて階段の下に身を隠し、頃合いを見て階段の下から出ようとしますが、階段の下から出ると、チャリティが2人の前に現れます。ダニエルは拳銃を向けているチャリティをなだめようとしますが、チャリティは「私が死んでもいいのね?」と言ってダニエルの首筋を撃ちました。グレースはチャリティの銃を奪うと、発砲しようとしますが、弾切れになり、銃床で殴り付けて気絶させました。彼女がダニエルに駆け寄ると、ダニエルは自分を置いて早く逃げるよう促し、グレースは彼に礼を言って先に進みます。しかし今度はトニーに追いつかれてしまい、トニーは「お前はただの生贄だ。山羊と同じだ。祭壇はいらぬ。」と言って襲いかかろうとします。グレースは傍らにあったランプで何発も彼の顔面を殴って気絶させました。彼女はランプを投げ捨ててその場から立ち去り、ランプの火がカーテンへと燃え移ります。その頃、アレックスはグレースを追って徘徊していると、瀕死状態のダニエルを発見します。彼は「死ぬな。」と何度も声をかけますが、ダニエルは息を引き取ります。


一方、逃げているグレースの前にベッキーが現れます。ベッキーは背後から弓矢で攻撃を仕掛けると、「家族を傷つけるのは許さない。」と言って馬乗りになって首を絞めました。追い詰められた彼女は頭突きをして危機から脱し、馬乗りになって儀式に使うル・ベイル様の箱で何度もベッキーの頭を殴って殺しました。その時、アレックスがグレースの前にやって来ます。アレックスはベッキーの死を知ると、「もう一緒にはいてくれないよね?」と問いかけ、彼女の頬を両手で触りました。しかしグレースはアレックスの様子がおかしいことに気づきます。アレックスはグレースを羽交締めにして捕まえると、「ここにいたぞ!」とトニーらに知らせます。駆けつけたトニーやエミリーらはベッキーの遺体を見て驚き、エレーヌは急いで儀式を再開させ、エミリーに息子を儀式に参加させるよう告げました。



夜明け前、グレースが投げ捨てたランプで徐々に火が回るなか、ベッキーが殺された部屋で儀式が再開されます。トニー、フィッチ、エレーヌ、チャリティがグレースをテーブルの上に押さえつけ、エミリーがジョージとゲイブに付き添い、儀式の様子を見ていました。彼らは呪文を唱え、ジョージとゲイブも家族に合わせて呪文を復唱します。その場にいたアレックスはエレーヌから短剣を受け取ると、嫌がるグレースをよそに彼女の胸に短剣を突き立てようとしますが、グレースは押さえつけていたエレーヌの手を引っ掻いて抵抗します。アレックスの短剣は左肩に突き刺さり、彼女はテーブルの上から降り、刺さった短剣を抜いてアレックスらを睨み付けました。その時、エレーヌはカーテンの隙間から光が差し込んでいるのに気づき、カーテンを開けました。夜が明けていることを知ったトニーらは怯え、エレーヌは「負けてしまった。許してください!」と誰も座っていない椅子に向かって叫びました。ところが、何も起きず、フィッチは「思った通り、デタラメだった。」と言います。トニーやエレーヌらも安心し、アレックスはグレースに手を差し伸べますが、グレースは一同を睨み続けます。

フィッチが「彼女はどうしますか?」とエレーヌに聞くと、エレーヌは「遅すぎると分かってます。でも失望させません!」と誰も座っていない椅子に語りかけ、斧を持ってグレースを殺そうと試みました。すると次の瞬間、エレーヌの体が爆発し、血肉が部屋じゅうに飛び散りました。それを見たトニーらは驚きます。スティーヴンスがゲーム開始前に流していたレコードの「かくれんぼの歌」が再び流れます。フィッチはル・ベイル様の契約が本当だったと確信して爆死し、チャリティも許しを乞いますが、木っ端微塵になります。エミリーとふたりの息子も爆死します。グレースは笑い出し、トニーは箱を持って「ルールに従ってやったんだ!私がいたからこそ…。」とル・ベイル様に語りかけますが、命を落とします。部屋にはアレックスとグレースだけになり、アレックスは笑いながらその場から立ち去るグレースに「僕はは死にたくない。僕は皆とは違うんだ。まだやり直せるんだよ。」と言いますが、グレースは左薬指にはめた指輪を外すと、「離婚して。」と告げ、指輪をアレックスに投げつけました。アレックスは爆死し、グレースは返り血を浴びました。血塗れのグレースは誰も座っていない椅子にル・ベイル様の姿が見え、「最悪だわ。」と告げました。



彼女は炎に包まれた屋敷から抜け出し、屋敷の外の階段に腰かけました。彼女はベッキーが持っていたシガレットケースからタバコを取り出し、そのタバコを口にくわえます。タバコを吸っている彼女の前に警察官が駆け寄り、「何があったんです?」と聞きました。グレースは「家族のゴタゴタよ。」と答えます。

THE END


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感想
この映画は『デビルズ・バースデイ』のマット・ベティネッリ=オルピン&タイラー・ジレット監督による危険なかくれんぼに参加させられた花嫁を描いたサスペンスホラー。全米では2019年8月21日に公開され、全米の週末興業収入ランキングで3週連続でトップ10入りを果たしているのですが、残念ながら日本では劇場未公開となった作品です。ちなみにスペインの映画祭『第52回(2019年)シッチェス映画祭』にも出品されています。


結論から申し上げると、観客の期待に応えてくれるような展開や描写が少なく、個性的な一族の面々のキャラクターに魅力が欠けていて、所々鈍重な展開も目立つのですが、普通にホラー好きかサマーラ・ウェイビングさんのファンなら思う存分楽しめるホラー映画だったと思います。GEO先行レンタルのなかだと割りと当たりな映画だったんじゃないかと思います。

物語は大富豪の息子と結婚した花嫁のグレースが結婚式の夜に絶対に参加しなければならない伝統の儀式に参加させられ、命懸けのかくれんぼに挑むことになる様子が描かれています。設定に新鮮さはあまり無いものの、ホラーとコメディをミックスしたような内容となっていて、ホラー映画『サプライズ』をオカルト風に調理した感じの作品です。

まず、個人的にはサマーラ・ウェイビングさんの作品はこれまで2作品観ているのですが、この作品も彼女の好演ぶりが素晴らしく、彼女の当たり映画と言ってもいいでしょうか。基本的にサマーラ・ウェイビングさん演じるグレースがル・ドマス家に反撃するシーンが少ないので間違いなく肩透かしを食らう人がいるかもしれませんが、前半で大人しかったはずのグレースが後半になると吹っ切れたようにル・ドマス家に立ち向かう姿がハマっていて、 グレースの背景が作品内で語られることが少なかったとしてもグレースを応援したくなる気持ちにさせられます。そのおかげで笑えてスカッとさせられるシーンが多かったです。特に中盤でグレースが柵を越えて通りすがりの車を捕まえようとしたのに運転手に邪魔者扱いされ、車の背中に向かって罵声を浴びせるシーンはこの状況なのにこんな仕打ちをされたグレースの心情が伝わってくるし、これでもかと暴言を言っているので凄いとしか言いようがないです。

また、グレースの人物描写のみならず、ル・ドマス家の各登場人物の人物描写がしっかりしていて、ル・ドマス家が悪役として振り切っていないおかけでコメディとしてはクスクス笑えて楽しめるし、各登場人物のドラマ部分もじっくり味わえました。ル・ドマス家は花嫁を殺さないと自分の命がル・ベイル様に奪われるという敗北設定があり、ベッキーはゲーム開始前はグレースを殺さなければならないことになってから悲しい顔をしていたのですが、物語が進むにつれて自分の子供たちに指示を出し、家族を守るためには花嫁を殺さざるを得ないと考えて行動に至っており、グレースが家族を持ちたいという願望を否定するのは分かるんだけど、「言い過ぎじゃない?」と強く感じちゃいました。一方で、ル・ドマス家のなかで圧倒的な存在感を放っていたのはル・ドマス家の長女にあたるエミリーであり、グレースに対してフレンドリーに接していたりかくれんぼの最中にコカインを吸っていたりと明らかにクレイジーなキャラに仕上がっていて、下手したら『初恋』でベッキーが演じているジュリみたいな覚醒ぶりになっていてもおかしくなかったかもしれません。しかもこのエミリーのクレイジーでお茶目なキャラが前半でコメディリリーフとして活躍していたのが非常に良かったです。特に中盤でル・ドマス家の面々が書斎に集まっている時にエミリーがうっかりボウガンで使用人を殺しちゃうシーンはボウガンの矢で使用人が死んじゃうところは普通に驚かされるし、使用人を殺したときのオーバーなリアクションは滅茶滅茶笑えました。おまけにエミリーの息子、ジョージとゲイブがクライマックスでベッキーから儀式のことを教わり、儀式で楽しそうに皆と一緒に呪文を唱える描写は2人がル・ドマス家に染まっているのが地味に恐ろしかったです。

あとはグロテスク描写は結構頑張っていて、目を背けたくなるほどの描写では無いんだけど、なかなかと言って良いほどよく出来ていました。例えばグレースが納屋のゴミ捨て場から脱け出そうと這い上がるシーンでグレースの右手が長い釘に突き刺さる描写はグレースの引きつる顔や悲鳴のおかげで大変ショッキングだし、長い釘から右手を抜いた時の描写もとても痛々しくて画的に好ましかったし、或いはダニエルとエミリーが納屋のゴミ捨て場で使用人の遺体を捨てるくだりはいちいちカットを割って遺体がゴミ捨て場のほうに落ちる描写を見せつつ、ティナの生首をしっかり見せてくるあたりは露悪的で面白いです。或いは、ラストではル・ドマス家の面々が次々と爆発しちゃうあたりは本作のなかで1番の見所だと思うんだけど、エミリーやチャリティのこれまでの心情を照らし合わせながら観るときっちり楽しませてくれる描写であると同時に純粋に可哀想な気持ちになりましたね。トニーらはダニエルやベッキーと違って、遺体が残らず、突発的に死んじゃうので胸糞悪い最期であることは間違いないです。個人的にはアレックス以外のル・ドマス家の一員が爆発して死んだ後、グレースが死ぬ間際になるアレックスに「離婚して。」と言って指輪を投げつけるショットは清々しく、最高に爽快感がありましたね。あれはグレースがかくれんぼに見事勝利したと言えるし、ル・ドマス家という呪われた家族と絶縁した証明とも言えるかもしれません。

ただ、確かに面白くて楽しめるところは結構あるんだけど、全体的には残念でならないところが目立っている作品だったんじゃないかと思っていて、観賞後、後味はいいけどどこか微妙な気持ちになる作品だったんですよね。最大の問題点はル・ドマス家の人々が思ってたよりもグレースと戦うシーンが少なく、慌てふためく様子が多かったことでしょうか。確かに物語の設定上は久々のかくれんぼなのでトニーやベッキーがそうなるのは必然だと思うのですが、実質グレースが戦っているのは執事のスティーヴンスだけで、ル・ドマス家の人々はグレースとしっかり殺し合いをしてくれないので盛り上がりに欠けていました。個人的にはグレースが中盤で猟銃と弾帯を手にしたのにいざスティーヴンスを撃とうとした時に弾が使えない展開があるのですが、トニーもエミリーも一族しか入れない部屋で展示品と呼ばれてもおかしくない武器を手にしているはずなのにグレースが持っている弾が展示品だから使えないのは説明が後出し過ぎてガッカリさせられるんですよね。しかもル・ドマス家のトニーとエミリーが自分の武器を置き忘れてしまう描写があるにも関わらず、それが生かされないまま物語が進むし、相手の武器を奪っても弾を撃ってくれないから鼻白んでしまいましたね。

更に言えば、ル・ドマス家のなかで唯一異彩を放っていたエミリーは前半はいかにも『初恋』のジュリみたいに覚醒しそうで狂人になりそうな雰囲気を出していたのに後半になると、ジョージとゲイブを守るという動機が加わったどころか、コカインを吸う描写は無く、まともなキャラになっていたのが残念でした。確かに前半でかくれんぼでドジをしていたエミリーが心理的に成長するくだりは必要なんだけど、だったらラストでジョージとゲイジを守るためにグレースと一戦交える描写を追加したほうが良かったんじゃないかなと思いました。それにエミリーの夫、フィッチはボウガンの使い方を携帯の動画サイトで知ろうとしたり検索サイトで悪魔の契約を調べようとしていたりしている割りにはいまいち今後の展開に繋がる何か生かされていなくて、ル・ドマス家がなぜフィッチに気に入らない態度を取るのか説得力に欠けていました。要するにル・ドマス家が人間狩りに不向きで慌てふためく姿がコメディ部分としていいという人がいるかもしれませんが、ル・ドマス家のキャラが全体的に魅力に欠けていて、グレースと激しいアクションを繰り広げないせいで面白味に欠けているのかなと感じました。それに加えてル・ドマス家がやっているかくれんぼは敗北設定を設けた上で家族全員が夜明けまで新郎か新婦を追い回して殺すという残酷な遊びだってことは大筋分かるんだけど、そのかくれんぼが30年ぶりだとしても執事とか使用人とかにかくれんぼの鬼として参加させる権利を与えるという30年前とは違った新しいルールをやらないと使用人がただギャグとして出しただけみたいな感じで納得しづらかったです。

あと、ル・ドマス家の視点を濃く描こうとしている割りには妙にテンポが悪くなっている描写が見受けられましたね。例えば終盤で拘束されているアレックスとベッキーが言葉を交わすくだりは少々冗長気味で、もうちょっとスマートな語り口にしてほしいと感じてしまうし、或いはラストで夜が明けてからル・ドマス家の面々が爆発するまでのくだりはどんでん返しが効いてはいたんだけど、後半でダニエルの台詞で一族が花嫁を殺さなかったら死んじゃうというのが読めちゃうし、爆発しないと思ったら爆発したという段取りそのものはチャリティやエミリーのリアクションとか彼女らの行動が笑いどころになっていないせいで期待通りの面白さになっていないんですよね。だから、どんでん返しが無くてもしっかり面白くはなれるかなと思いましたね。

ということで、私個人としては心に刺さりにくかったし、主人公のグレースの反撃を期待している人には肩透かしを食らうかもしれない内容となっているので好き嫌いが分かれる作品なんですが、グロテスクな描写、ぶっ飛んでいて笑えるシーンがあり、サマーラ・ウェイビングさんのファンなら過剰に期待していなければ普通に満足できる作品だと思いました。個人的にはこの映画を絶賛してる人の意見は分からなくもないんだけど、もうちょっとストーリーが上手く練り込んでいてくれたら非常に満足できたかなと思うし、観賞後は清々しい後味が残ると同時にモヤモヤ感が残る映画でした。是非ともレンタルや配信で観賞してみてください。