今回はグロテスクな描写があるため、耐性が無い人にはきつそうな一作でしたが、謎解きあり、笑いあり、衝撃のラストありと退屈せずに最後まで楽しめるドイツのサスペンススリラーを紹介します。


カット/オフ

主演:モーリッツ・ブライプトロイ 『es[エス]』

出演:ヤスナ・フリッツィ・バウアー/バーバラ・プラコペンカ/ファーリ・オーゲン・ヤルディム 『アウトサイダー』/ラース・アイディンガー 『HELL』『ダンボ』/エンノ・ヘス/ジャン・ビューロウ

・あらすじ(ネタバレ)

ドイツ、ヘルゴラント島。リンダという若い女性が席に座り、酒場にいる島民たちをモデルにして漫画を描いていました。島民たちは近年稀に見る激しい嵐に襲われたため、嵐が過ぎるのを待とうと酒場に避難しており、集会を開いていた職員が島の病院が被害を受け、医療を受けられない状態にあり、嵐のせいで島は孤立してしまうかもしれないと島民に話していました。そこに若い男性、トムとクラウスがリンダに声をかけてきました。2人はナンパを試みていましたが、リンダは2人に対応している最中に元彼のダニーからのメールを確認します。メールを見た彼女は2人の誘いを断り、女子トイレの個室に入ります。彼女は元々島民ではなく、ダニーからの暴力から逃げるために3週間前に島に渡って潜伏し、携帯の番号を変えていましたが、ダニーに突き止められていたのです。リンダは男友達のクレメンスに報告しました。クレメンスはダニーは自宅にいると伝えたうえで弁護士にその事を相談したと話しますが、「いつまで島にいるんだ?」と聞くと、リンダは強引に電話を切りました。クレメンスはクラブでの行列に並んでいた友人にダニーのことを話します。


暫く個室にいると、リンダはトイレに何者かの足音を確認し、ダニーから「見ているぞ」という脅しのメールを受け取ります。既に島に来ているかもしれないと思い、怯えた彼女はトイレの窓から酒場を抜け出し、外に出ました。しかしダニーから「すぐそこだ」という更なる脅しのメールを受け取ります。その直後、周囲に怪しい人影がいることに気づき、リンダは家の塀を乗り越え、必死に逃げましたが、島の斜面に転がり落ちます。リンダは負傷し、怪しい人影から隠れていると、そこには浜辺に放置された謎の死体がありました。その遺体は人目に触れることがないため、遺体は見つからずにあったのです。彼女はその死体の隣で息を潜めます。しかしリンダを追っていたその怪しい人影は先程のトムとクラウスで、2人は必死で逃げる彼女を悪ふざけで追いかけていただけでした。クラウスは崖から転がり落ちた彼女を心配したものの、トムがクラウスをなだめ、2人は去っていきました。リンダは急いで帰宅し、警察に通報を試みるも、応答は無く、恐怖のあまり咽び泣きします。


一方、ドイツの連邦刑事警察署に勤務する検視官、ポール・ハーツフェルドは代理人弁護士と共にある事件の証言を求められていました。彼は被害者の代理人弁護士に「怒っていた理由は何なんですか?」と聞かれ、当時のことを思い返します。

事件当日、ハーツフェルドは17の娘、ハンナとカフェで話をしていました。彼は妻と離婚してから娘と接する機会がなく、娘のことをよく分かっていませんでした。ハーツフェルドはハンナに一緒にスキー旅行に行こうと誘いますが、ハンナは「それなら彼女を誘ったら?」と冗談を言い、「私はクリッシーたち(女友達)と試験勉強がしたいの。」と言って父親と過ごしたいという気持ちはありません。ハーツフェルドが「学校はどうだ?運転免許は取れたか?彼氏はいるのか?」と3つの質問を問いかけると、ハンナは「順調、順調、今はいない。」と一気に答えます。ハンナは娘のことが分からないのはあなたに原因があると反発し、店を出ていきました。ハーツフェルドは支払いを済ませ、慌てて追いかけますが、外には娘の姿はありません。苛立った彼が歩いていると、車道で犬を蹴る男性を発見し、腹を立てていたこともあり、男性を殴ってしまいます。それから事件後、ハーツフェルドは被害者である犬を蹴った男性とその弁護士に会い、事情を聞いていました。彼はその犬の飼い主は目を離していて、妊娠中だと主張しますが、犬は肥満だったとのことでした。

ベルリン、連邦刑事庁。法医学重犯罪特別班。証言を終えたハーツフェルドは遺体の検視に向かいました。検視する遺体はとある公園の箱の中から発見された50代女性の遺体で、遺体の顔は空気が抜けていました。更に女性の下顎が外されていて、指紋が特定されないよう両手が切断されていました。検視するうちに下顎が死後に外されたものだと判明しますが、検視の最中にインターン生のインゴルフという男性がやって来ました。彼はおっとりした性格で、彼が「一体何があったんです?」と尋ねると、その拍子で自分が掛けていた眼鏡を遺体の上に落としてしまいます。そのせいでインゴルフはハーツフェルドのひんしゅくを買い、「眼鏡を置いてくれ。遺体が感染症かもしれないだろ?」と告げました。ハーツフェルドは意地悪しようとストローム教授から遺体に使う除細動器を借りてくるよう頼み、インゴルフを追い払いました。インゴルフは大学で講義をするストローム教授のもとに行き、用件を伝えると、呆れたストローム教授は除細動器は必要ないと教え、インゴルフは恥をかかされます。


その一方、ハーツフェルドは遺体の頭部にカプセルが入れられているのを知り、そのカプセルの中身を顕微鏡で見ることにしました。検視を同僚に任せ、カプセルを開けて確認すると、そこには「ハンナ」という名前と数字の羅列が書かれた紙片がありました。紙片の文字を知った彼は不審に思い、その文字に書き起こすと、トイレに行って携帯で確認すると、それはハンナの携帯の電話番号であることが判明します。娘の番号に電話をかけると、ハンナは父親である彼に助けを求め、「誘拐されたの。パパが指示に従わないと私は殺される!"エリック"の指示を待って。もし誰かに話したら私は死ぬことになるから。」と訴えていました。彼は娘の命が危ないと感じ、心配した同僚が声をかけてくると、ハーツフェルドは体調が悪いと誤魔化しました。

その頃、何者かの薄暗い部屋のテレビが監禁されたハンナとみられる女性と犯人の映像が映し出されていました。その映像でハンナは乱暴しないよう懇願しますが、カメラを回していた犯人は拘束されたハンナの馬乗りになり、犯し始めました。


一方、リンダは家でシャワーを浴びたあと、置き忘れた荷物を取りに行こうと嵐のなか、崖下の浜辺に戻ってきました。彼女はリュックを手にし、携帯の電源を確認しますが、斜面に落ちた拍子に故障していました。このまま浜辺に放置された謎の遺体を脇目に帰ろうとしていた矢先、遺体から着信音が聞こえるのに気づきます。彼女が遺体を調べると、遺体にかけられたウエストポーチの中に携帯がありました。その頃、ハーツフェルドは自分のオフィスで娘を救出しようと考えていました。元妻のペトラに電話をかけ、ハンナの居場所を聞きますが、ペトラが冷たい態度を取ったので手掛かりを得ることは出来ません。彼はハンナの携帯に電話し、"エリック"に話そうとしますが、相手は無言でした。怒った彼は無言を貫く相手を罵り、電話を切ると、落ち着いて話そうともう一度電話を繋ぎました。そしてハーツフェルドが罵ったことを詫びると、携帯を手にし、電話に対応したリンダが「エリックは死んだよ。」と告げました。遺体の背中には「エリック」と書かれており、彼女は自分の居場所や名前をハーツフェルドに伝えます。



ところ変わって、エリックは監禁部屋でハンナとみられる女性に猿轡をかけ、凌辱していました。ハンナが泣き出すと、エリックは「女は純潔でないと。そうでないなら手助けが要る。」と言ってナイフを取り出し、不敵な笑みをこぼしました。そして「ソマリア人の女性は97%が割礼される。97%だぞ。お前の性器も切ってやろうか?」と告げ、ナイフでハンナの拘束を解きました。彼は「出ていってやる。次に戻ってきた時はどうなるかな?」と言い残し、段ボール箱を置いて去っていきました。


その頃、ハーツフェルドはリンダに事情を説明し、ヘンゴラント島へ渡ろうと考えていましたが、リンダは嵐のために船も飛行機も出ず、警察も救助隊も出ないことを伝えます。彼はオフィスをあとにし、刑事庁を出ると、偶然車で帰ろうとしていたインゴルフと出くわします。邪魔者扱いされたインゴルフは車で送りたいと彼に誘い、ハーツフェルドはタクシーを呼ぶという理由で断り、電話を続けますが、インゴルフは引き下がりません。仕方なく彼はインゴルフの車に乗り込むことにし、リンダにエリックの遺体を調べるために島の病院で働く用務員のエンダーと協力して探るよう指示します。

リンダはエンダーを探すと、酒場で友人とサッカーゲームをしていたエンダーを発見し、呼び出しました。ハーツフェルドから話を聞いたエンダーは彼女に自己紹介し、サッカーゲームをやめて協力しました。2人はトラックで浜辺に行き、エリックの遺体を回収します。同じ頃、ハーツフェルドはインゴルフに島に向かうよう伝えたあと、一旦自宅に戻っていました。検視に使う道具をカバンごと持ち出し、車に戻ると、駅に向かうようインゴルフに頼みます。

リンダとエンダーは病院の解剖室に遺体を運んでいました。その途中でエンダーはTV番組に出演して裸芸をしたいので3日以内に片付けたいと語ります。地下にある解剖室に到着し、エンダーは移動中の車内で電話をするハーツフェルドと通話していました。彼はハーツフェルドからの頼みごとに対して弱音を言い、漫画を描いていると言うリンダに電話を代わると、駅に行って電光掲示板を見ていたハーツフェルドは先程の女性の遺体の頭部にカプセルがあったと説明したうえで遺体を解剖して調べるよう指示しました。リンダは断ろうとしますが、彼は「犯人が島にいて殺人が終わってなかったらどうする?頼み事をする権利はないが、君を頼る他はないんだ。」と告げます。リンダは「ベジタリアンでステーキも切れないの。」と言い訳し、彼はガイド役になって指示を出すと告げますが、自分の携帯が電池切れになり、通話できない状態になってしまいます。ハーツフェルドは電光掲示板を見て列車は使えないと判断し、インゴルフにその事を伝えると、大事な用があるのだろうと悟ったインゴルフは了承し、島に近づこうと高速道路で車を走らせます。


リンダは袋を被せた遺体を作業台に置き、エプロンと手袋を着用しますが、遺体に接触したことがなかったため、おじけづきます。ハーツフェルドが彼女をなだめ、リンダは遺体袋を開けました。ハーツフェルドから指示されたリンダは死体の特徴を詳しく教え、エンダーと共に袋から遺体を取り出し、検視台に移動させます。
耐えられなかったエンダーは吐き気を起こしました。それからハーツフェルドは遺体を裸にするよう指示し、リンダが言う通り従うと、遺体の首に鍵のついたネックレスを発見しますが、この時は手掛かりにならないと判断します。遺体には他に胸に注射で刺されたような跡、まぶたの裏に赤黒い斑点、首には擦り傷のような跡、そして舌は何故か死後に切られていたことが判明します。エンダーは遺体を見るのが嫌になったのか、安置室を出ていきました。



リンダが遺体の口の中を覗くと、喉の奥に異物が入れられていることに気づきます。彼女はこれでも嫌々ながら努力していましたが、ハーツフェルドは喉の奥を切って異物を取り出すよう指示し、嫌になったリンダは彼からの通話を切って安置室をあとにし、病院を出ようとしました。しかしハーツフェルドは再度電話をかけ、喉の奥の異物がカプセルだと彼女に伝えると、「確かに君には無関係なことだ。だが私には選択肢がない。だからやるしかないんだ。」と声を荒らげて訴えます。彼は落ち着きを取り戻しますが、通話中にリンダが病院内にダニーがいると思い叫び声をあげます。リンダが元カレのダニーに恐れていることを知り、「彼はストーカーなのか?」と彼女に問いかけると、リンダは「ストーカーだなんて便利な言葉ね。本当はいないのにいつも彼がいる気がしてならない。」と応えます。次第にリンダは解剖していればダニーを考えられずに済むと続行する気になり、ハーツフェルドは礼を言います。リンダはエレベーターで地下の安置室に戻りますが、ダニーなのか、それとも事件の犯人なのか、1階の廊下を男性が通りすぎていきました。


ところ変わって、監禁部屋で解放されたハンナとみられる女性は扉を開けようとしますが、堅く閉ざされていました。彼女は上を見上げると、壁に設置されたビデオカメラを発見し、エリックが監視を続けていることを悟ります。そしてハンナはエリックが部屋に置いた段ボール箱に何が入ってるのかを調べました。中には首吊り自殺に使うロープがあり、ハンナは悲鳴をあげます。

一方、インゴルフの車はガソリンスタンドで給油を行っていました。コーヒーを飲んで一服していたハーツフェルドの携帯から再びリンダの電話が入り、エプロンと手袋を着けて検視台の前に立っていたリンダは「これって合法だよね?」と告げます。ハーツフェルドは一般人であるリンダを解剖したことは自分が責任を負うと宣言し、彼女に指示を出しました。リンダは彼の指示に従ってナイフで喉の奥を切りました。ハーツフェルドはインゴルフの車に戻って指示を続け、リンダは遂に遺体の喉からカプセルを回収することが出来ましたが、安置室に戻ってきたエンダーが急に大音量で音楽を流し始めたため、カプセルを落としてしまいます。


エンダーが何とかカプセルを拾い、彼がハーツフェルドの指示を無視して開けると、女性の写真が入っていました。その写真を見たエンダーは「フリーデリケ・トーベンだ。」と言います。彼によると、この女性は現在ヘルゴラント島に住んでるようでした。移動中の車内にいるハーツフェルドがリンダの電話を切り、秘書にフリーデリケを調べるよう頼みます。電話を切ると、ハーツフェルドはインゴルフに「君は金持ちじゃないのか?」と見抜きました。インゴルフは金持ちだと明かすと、自分は14の時にSNSサイト『ウェブ・フレンズ・ブック』を立ち上げて成功を収め、競合していた企業を買収したと説明します。



ハーツフェルドが成功者である彼の経歴に驚いてると、秘書から電話が入ります。秘書によると、フリーデリケは裁判官として殺人犯ヤン・エリック・サドラーの裁判を担当し、一躍有名になった人物でしたが、軽い判決を出したために物議を巻き起こし、早期退職していました。現在はアーランという旧姓に名前を戻し、ヘルゴラント島で暮らしているとのことでした。ハーツフェルドはヤン・エリック・サドラーが起こした事件があったときのことを思い出します。ヤン・エリック・サドラーは彼の元同僚イェンス・マリネックの娘、リリーを殺害しており、ハーツフェルドは連邦刑事庁でリリーを解剖したうえでリリーは自殺だと断定していましたが、イェンスはハーツフェルドのもとを訪れ、「ヤツがそう仕向けたんだ。娘の体をなめ回し、何度も何度も犯したんだ。娘に逃げる気が無くなるまでどうやって拷問するかを告げロープを置いてった。分かるだろ、ヤツが娘を殺したのも当然なんだよ。」と訴えます。しかしハーツフェルドはヤン・エリック・サドラーが強姦や自殺に追い込んだことを信じず、イェンスが報告書に嘘の死因を書くように頼んでも協力することはありませんでした。そしてハーツフェルドとイェンスはヤン・サドラーの裁判の傍聴席にいたものの、エリックがリリーを監禁して自殺に追い込んで殺したことを見抜けなかったフリーデリケが殺人罪を適用せず、強姦罪だけの判決(3年8か月の懲役刑)を出したのです。判決を聞いたイェンスは法廷にいるフリーデリケに対して怒り狂いますが、警備員につまみ出されるのでした。



ハーツフェルドはインゴルフにイェンスの自宅に向かうよう頼むと、インゴルフは彼とリンダのやり取りを思わず聞いていたと明かし、ハーツフェルドは「なぜ助けてくれるんだ?」と聞くと、インゴルフは「この件は全てが終わってから話します。」と理由を明かそうとはしません。ハーツフェルドはインゴルフにイェンスがどういう人物かを詳しく説明します。その頃、リンダとエンダーはフリーデリケの家を訪ねていました。エンダーはピッキングで勝手に家の中に入り、リンダも入りますが、家の中は誰もいません。エンダーは2階の部屋の机でWebカメラのついたパソコンを発見したものの、あまり不審に思わず、リンダは電話でハーツフェルドに家の中に誰もいなかったと報告しましたが、リビングで倒れているフリーデリケの遺体を発見します。死後数時間経ったその遺体にはお尻にホウキの柄が突っ込まれており、肺から空気が漏れだしていました。2人はハーツフェルドにその事を報告し、ハーツフェルドは彼女の遺体を病院の安置室に運ぶよう指示します。

一方、ハーツフェルドとインゴルフはイェンスの自宅に到着します。玄関先には長靴や斧が入った段ボール箱があり、イェンスがここに来ることを把握していたようでした。ハーツフェルドが斧で扉の鍵を破壊して中に入り、インゴルフも玄関で待たずにあとについていくと、インゴルフが部屋で検視報告書を発見します。報告書にはイェンスが女性の遺体を解剖する写真が挟まれていました。2人が奥に進むと、そこには自分とハンナがカフェで話しているときの写真と腐った豚の死骸が置かれていました。それを見たハーツフェルドは「パズルのピースには全て意味があったんだ。」と言い、家の玄関先と家の中にあったものは何かを象徴していると考えます。



そして家を出ると、長靴の足跡があることに気づき、彼が足跡を辿ると、イェンスの小屋があり、中に入ると、ヤン・エリック・サドラーの写真や新聞記事が貼られていました。ハーツフェルドはイェンスはエリックの出所を待ってから復讐しようと考えてたのだろうと思います。小屋にはエリックの舌が入った瓶も置かれていました。ハーツフェルドはリンダに電話しますが、彼女は出られる状況ではなく、インゴルフは小屋でイェンスのものとされるパソコンを発見します。ハーツフェルドがパスワードを解除し、保存されている動画を閲覧すると、そこにはイェンスが遺体を解剖する様子が映されていました。2人はこの動画を撮影している人物が共犯者だと考えます。動画を見続けると、イェンスはその遺体を手押し車で氷が張った湖へと運んでいることが分かり、インゴルフは氷の上に立って遺体を探しました。彼は遺体を沈めた場所に辿り着きますが、インゴルフは氷の下に落ちてしまいます。ハーツフェルドは湖に入って凍えるインゴルフを何とか氷の上に引き上げて救出しました。


同じ頃、リンダとエンダーはフリーデリケの遺体を安置室に運び、運び終えると、リンダは解剖しようとしますが、安置室の電気がおかしくなります。エンダーは発電機の故障だと考え、配電盤を見に安置室から出ていきました。しかしその直後、電気はつかなくなり、リンダは懐中電灯をつけ、扉の前で声をかけましたが、応答はありません。次第にリンダはハーツフェルドからの電話を応答せず、ナイフを持って警戒します。安置室に非常用電源がつき、再び扉の前で声をかけると、エンダーは戻ってきますが、彼はナイフで左肩を刺された状態でリンダの前で倒れ込みます。リンダは襲撃者が来ないよう安置室に鍵を掛けます。

ハーツフェルドは凍えるインゴルフを小屋に入れると、暖を取るよう勧めました。リンダから電話が入り、彼女がエンダーが何者かに襲われたと報告すると、エンダーに刺さったナイフを抜かないよう指示しました。しかしハーツフェルドは今は凍えているインゴルフを助ける必要があり、電話を切りました。リンダは腹を立てましたが、ふと部屋の柱にあった看板を見て冷静になります。看板には「緊急事態には冷静に」という言葉が記されていました。リンダは「死んじゃダメだよ。」と瀕死のエンダーに語りかけたものの、襲撃者が鍵を開けて入ろうとしてきたため、保管庫の中に身を隠しました。


一方、インゴルフはハーツフェルドの処置で回復し、2人はヒーターで暖を取りながら話をしていました。インゴルフは「あなたは命の恩人です。だから…今朝の件は許します。酷いイタズラでしたけど許しますよ。」と検視中にハーツフェルドに追い払われたことを許したうえで礼を言いました。ハーツフェルドがリンダに電話しますが、リンダはまだ保管庫に隠れていて、電話に出られる状態ではありません。同じ頃、リンダは保管庫から安置室の様子を覗いていましたが、何者かが安置室に来ていることに気づき、恐怖を感じていました。しかし保管庫を開けたのは襲撃者ではなく刺されたまま目覚めたエンダーでした。リンダは事情を説明し、エンダーは鏡で刺されたところを確認しますが、彼は再び倒れ込んでしまいます。

ハーツフェルドはインゴルフを彼の車の助手席に乗せ、運転しながらリンダと連絡を取り合います。リンダは扉を部屋のロッカーで塞ぐとヘルゴラント島に行ける交通手段やフリーデリケの遺体の様子をハーツフェルドに説明します。ハーツフェルドは2時間以内にはヘルゴラント島に到着できると約束し、イェンスの動画を観たのでフリーデリケに突っ込まれたホウキの柄を調べるよう指示しました。リンダがホウキの柄を抜いて血を拭き取ると、柄には数字の羅列が書かれていました。その数字の羅列を彼女がハーツフェルドに伝えると、インゴルフは数字の羅列がGPSの座標であると推理します。

ハーツフェルドは一旦電話を切り、インゴルフはカーナビのマニュアル本に迷わず目的地に到着できるようカーナビにGPSの座標の入力ができると書いてあったと説明します。ハーツフェルドは停車し、マニュアル本に沿って座標を入力していると、同僚から電話が入りました。同僚は今朝検視した最初の女性の遺体にシアン化合物が検出されたため、女性が自殺していたことが明らかになったと報告します。更に同僚は最初の女性の身元が判明します。その女性はシビル・シュウィントゥスキーという人物で、夫のフィリップは運送会社を経営していました。それを知ったハーツフェルドはシビルの遺体が発見された時に遺体が運送会社の箱に入れられていたこと、娘を追いかけたあの時に運送会社のトラックを見掛けたこと、イェンスの家にフィリップの運送会社の段ボール箱があったことを思い出します。(エリック、もしくはイェンスがハーツフェルドが目を離している隙にハンナをさらった。)フィリップは違法賭博やマフィア絡みの事件で前科がある人物で、最近は足を洗って家族との時間を過ごしていましたが、フィリップは行方をくらましていました。娘のレベッカも行方不明で見つかっていません。


ハーツフェルドは同僚からの電話を切り、GPSの座標と思われる場所に車を走らせました。吹雪が吹き荒れるなか、その場所は深い森の中にあり、目的地に着くと、ハーツフェルドはインゴルフを車内に残したまま外に出ましたが、インゴルフは心配になったのか、ハーツフェルドが後ろを振り向くと、車内からインゴルフの姿が消えていました。しかしその直後、彼は背後からイェンスに襲われると、イェンスはハーツフェルドをコンテナの中に連れていきました。(インゴルフはイェンスに気絶させられただけで自分の意志で外に出ていない。)

ところ変わって、ハンナとみられる女性はロープを使って首吊り自殺しようとしていました。ロープの輪っかを首をつけ、ベッドの上に立った彼女は「これが望みなの?興奮する?」とカメラに向かって語りかけると、自殺を試みましたが、失敗に終わります。ハンナは気持ちが変わったのか、一度自殺するのを諦めました。



ハーツフェルドは両手首を拘束された状態で目を覚まします。目の前にはカメラが置かれていて、彼はコンテナの中に入ってきたイェンスと顔を合わせます。ハーツフェルドは自力で拘束を解こうと試み、イェンスにバレないように彼と言葉を交わしました。イェンスは酒を飲み、ハーツフェルドとインゴルフの携帯を破壊すると、カメラからSDカードを取り出し、「これはお前の問題ではない。お前の娘の問題でも私の問題でもない。」と語ります。ハーツフェルドは「誰の問題だ?」と話すと、イェンスはフィリップが説明すると告げ、SDカードを口に入れて飲み込みます。そしてハーツフェルドはイェンスに拳銃を向けられたため、命の危険を感じますが、イェンスは「お前の目が覚めて良かったよ。」と言って拳銃自殺しました。銃声で目覚めたのか、インゴルフがコンテナの中に姿を現し、ハーツフェルドは彼に事情を説明したうえでSDカードを取り出すことにしました。


その後、2人はカメラでSDカードに保存されていた動画を確認します。動画にはフィリップがフリーデリケの家の2階の部屋で自供していました。数週間ほど前、イェンスは出所後のエリックを監視しており、エリックがレベッカを狙っていたことを目撃していました。しかし彼はエリックの犯行を止めることが出来ず、エリックは出所後6週間も経たずにレベッカを誘拐しました。イェンスはフィリップにその事を知らせ、2人は娘を殺された復讐として手を組み、エリックを捕まえると、復讐しようとエリックの舌を切り取ります。この時フィリップはフリーデリケにも復讐しようと考えていましたが、イェンスは「復讐よりも重要なことがある。」と語りかけていました。彼は「周りは規則やルールだらけだ。だからこんな世界は正常じゃない。」と動画内で語ります。それから2人はイェンスが捕まえたエリックを処置したうえでフィリップのヨットで彼をヘンゴラント島に連れていくと、エリックにフリーデリケを殺害させたらハンナをやると唆し、彼にフリーデリケを殺害させました。そうすることでフリーデリケが軽い判決をしたのが誤りだったと示したかったのです。最後にフィリップは「俺たちは生きる目的を失ったが、あんたには娘を救うチャンスを与えた。善人でもミスを犯す、それを認めるべきだ。」と告げると、「ハンナとサドラーを二人きりにした。見つけたければアルカトラズの光を辿れ。」と言い残し、動画の前で首吊り自殺をしました。


動画を観たハーツフェルドはフィリップがエリックを殺して復讐を果たし、そのあとに自殺したのではないかと推理しますが、インゴルフは動画の撮影日が2日前であることに疑問を抱きます。ハーツフェルドは島の病院でエンダーを襲ったのはフィリップだと推理し、彼とインゴルフはコンテナをあとにしました。ところが、動画には続きがありました。動画内には首吊り自殺したフィリップがずっと映されていましたが、2階の部屋から現れたエリックが不敵な笑みをこぼしていたのでした。


コンテナを出ると、ハーツフェルドは吹雪が止んでることに気づき、島で嵐が収まっているかもしれないと考えます。2人はイェンスによってタイヤをパンクさせられた車に乗り込むと、ハーツフェルドは車を猛スピードで森の奥へと走らせていきます。彼が自分に会いに来た理由をインゴルフに尋ねると、インゴルフは自分が立ち上げた世界中の検視官を支援する財団法人の理事長の座をハーツフェルドに与えたかったからだと説明します。やがてハーツフェルドは車をわざと樹木に衝突させました。数分後、インゴルフはなぜ車を衝突させたのかを彼に聞くと、カーナビのマニュアル本に載っていた自動緊急通報システムを利用したと説明します。接触を起こすと、エアバッグが開き、GPS座標が自動車会社に送信され、10分以内に救助隊が出動するようになっていました。救助隊のヘリは衝突から7分で到着し、2人はそのヘリでヘンゴラント島に向かいます。

その頃、ハーツフェルドが来るまでの間、リンダは刺されて倒れているエンダーと共に安置室で彼を待ち続けていました。しかし何者かが安置室の扉を強引に開けようとしていました。彼女は扉を開けようとしているのはダニーではないかと思い、扉を両手で塞ごうとしていましたが、扉にいた何者かが物を乗せた台車を安置室の扉に当てて突破します。扉を開けたのは死んだはずのエリックでした。エリックはリンダに襲いかかると、不明瞭な声で「鍵はどこにある?」と迫り、リンダの顔を洗面台の水に何度もつけました。そしてエリックがあの遺体の首に掛けられていた鍵を手にすると、リンダはホウキの柄で攻撃しますが、エリックに追い詰められます。彼女はやむ無くエンダーの肩に刺さったナイフをエリックの足に刺し、倒れているエンダーを連れてエレベーターに乗りました。
しかしエンダーの肩から大量の血が流れ、エレベーターも故障のために1階に到着する手前で停止しました。

一方、ハーツフェルドとインゴルフは島に渡り、市長の息子のバンドルップとその部下たちと合流します。彼らは病院に駆けつけると、エレベーターを作動させ、恐怖に怯えていたリンダと瀕死のエンダーを救出しました。リンダはハーツフェルドにエリックが鍵を探してたと教え、ハーツフェルドたちが安置室に行って遺体を確認すると、浜辺の遺体がエリックの遺体ではなくフィリップの遺体だったことを知りました。実はフィリップはエリックを島の浜辺で殺し、カプセルを入れていましたが、殺し損ねたせいでエリックは生き延びていました。エリックは自分と同じ目に遭わせようとフィリップとイェンスに自殺するよう仕向け、身を隠していたのです。(フィリップの妻、シビルもエリックに自殺するよう仕向けられていたっぽい。)

ハーツフェルドがバンドルップの部下に動画のフィリップが言ってたアルカトラズの意味を教えるよう訊ねると、部下は島の灯台を意味しているのではないかと応えます。灯台には閉鎖された掩大壕(装備や物資を敵から隠すための施設。)があり、ハーツフェルドらはその場所にハンナがいると思い、掩大壕でハンナの捜索に当たりました。エリックが鍵を持ってハンナの監禁部屋を探すなか、ハーツフェルドたちは無事にハンナの監禁部屋を発見し、救出することができました。


発見されたとき、ハンナは監禁部屋でテレビでレベッカが自殺する映像を観ていました。映像のレベッカは奪回し監禁部屋に来たフィリップとイェンスをエリックだと思い込むと、カメラに向けて中指を立て、首吊り自殺を遂げていたのです。インゴルフはその部屋で手錠の鍵を発見し、ハーツフェルドがハンナの両手首の手錠を外すと、映像を観て怖くなったハンナと抱き合いました。彼は映像で自殺した娘を抱いて復讐を誓うフィリップを観て悲しく思いました。
ハーツフェルドたちは掩大壕から立ち去りましたが、エリックは彼らの目を盗んでその場所から脱出します。(イェンスが小屋で遺体解剖していた遺体はレベッカの遺体。彼が解剖して独自に調べ、湖に沈めたのならレベッカが行方不明だったことに辻褄は合う。)



翌朝、ハーツフェルドが病院で軽い治療を受けている娘のハンナを見つめていると、島を出ようとしていたリンダが彼を訪ねにやって来ます。ハーツフェルドは娘の無事を報告しますが、リンダは解剖してくれと頼んだ彼の顔に平手打ちをしました。リンダはダニーの脅迫メールのおかげで弁護士と法的措置を取ることができたと報告し、ハーツフェルドは協力してくれた礼を言うと、リンダは「娘さんを大事にしてね。」と言って病院をあとにしました。ハーツフェルドはタクシーに乗ろうとしていたリンダを呼び止めると、しっかり抱き締めます。


その後、ハーツフェルドはフィリップの遺体を回収したうえでハンナと一緒に救助隊のヘリで帰ることにしました。彼はインゴルフに協力してくれた礼を言い、娘とヘリに乗り込みます。
ハーツフェルドはヘリの中で娘と微笑み合っていましたが、フィリップの遺体を入れていた遺体袋のなかからエリックがナイフを持って現れ、ハーツフェルドに襲いかかってきました。


ハーツフェルドとエリックは格闘し、ハーツフェルドが怯むと、エリックは運転手にナイフを向けて人質にし、着陸するよう指示しました。ヘリはバランスを崩し、その拍子で運転手がエリックのナイフで顔を負傷すると、エリックは転び、ハンナが負傷した運転手を手当てします。そしてハーツフェルドはエリックと揉み合いになり、エリックにナイフで足を刺されますが、ハーツフェルドはエリックをヘリから落とそうとしました。エリックはヘリにしがみつき、ハーツフェルドは足に刺さったナイフを抜いて手にしました。この時彼の頭の中によぎったのはエリックによって殺されたレベッカやリリー、そして自殺してしまったフィリップたちでした。彼は更正の余地がないエリックの指を切り落とすと、エリックはヘリから落ち、ハーツフェルドはヘリの扉を閉めました。

THE END




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感想
この映画は『NICK/ニック』シリーズのクリスチャン・アルバート監督が監督・脚本・製作を務めた死体解剖ミステリー。2019年・2020年冬にシネマート新宿・シネマート心斎橋で開催された『のむコレ3』で2020年1月15日に上映されたドイツ映画です。

『のむコレ3』の上映作品のなかではかなり評判が高かったので期待値高めで観賞したのですが、構成が複雑なところがあったんだけど、かなり面白かったです。私がサスペンス・ミステリーのジャンルのなかで好きな『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』と同じぐらい自信を持ってオススメできるドイツ映画でした。

物語は自分の娘を誘拐されてしまった検視官とたまたま娘の誘拐事件に関わることになる漫画家の若い女性の2つの視点でストーリーが進み、謎解き要素あり、笑いあり、衝撃のラストありと上映時間が132分という長尺なんだけど、テンポが良く、最後まで緊張感が続くので決して退屈せずに楽しめる1本となっています。

まず、プロットが面白いですね。ハーツフェルドが嵐で現地で行けないため、現地でたまたま携帯を拾ったリンダに解剖するよう頼んで電話で指示をするのですが、ただの素人が遺体を解剖するという発想は実にありそうで無かったし、プロの検視官が素人の女性にテレワークスタイルで解剖を指導するというのも普通に有り得ない展開だと思いましたね。特にハーツフェルドがリンダに肛門の状態を見るよう指示する辺りはセクハラに近く、やり取りを聞いていたエンダーとインゴルフみたいにクスクス笑っちゃいましたね。終盤でリンダがハーツフェルドにビンタしたのは知らないおっさんの遺体を裸にさせたうえ、おっさんのチンコと肛門を見たり喉をナイフで切ったりするという酷い体験を経験させられたからかな?と感じました。ちなみに前半のシビルの遺体解剖シーンと中盤のフィリップの遺体解剖シーンはかなりグロテスクな描写が生々しく見せられていて、特にシビルの遺体解剖シーンはシビルの遺体が最終的に腹の皮膚が切られてあばら骨や胃腸が剥き出しになっていて、おまけに回想シーンでそのシビルの遺体のカットが挟まれるのでこれから観る人は身構えて観賞したほうがいいかなと思います。

そのうえで映画には不穏さや緊張感だけでなく、しっかりとした娯楽性も盛り込まれていて、ちょっとしたバディものとしても楽しめましたね。電話で指示を送るハーツフェルドと渋々検視官に付き合うリンダの関係もバディと言えるんだけど、主人公である検視官とインターン生なのにマーク・ザッカーバーグみたいな成功者だったインゴルフ、ハンナの誘拐事件の解決に協力することになったリンダと病院の用務員で筋肉芸で笑いを取るエンダーの2組もバディものになっていて新鮮味が感じられました。同時にエンダーやインゴルフといった登場人物が行動によっては怪しく見えるように見せられていて、なかでも後半でインゴルフがイェンスが拳銃自殺したあとにコンテナの中に入るから明らかに都合が良すぎだし、最初からコンテナの外で拳銃自殺するのを待ってたんじゃないかなって思っちゃいました。

その一方で、司法の甘さのせいで加害者が重罪を逃れ、被害者遺族がその事に憤りを感じているという現実も描かれていましたね。これまでも過去に同じような問題を取り扱っている映画を観ているのですが、いつまでも更正できない犯罪者が間違った判決で世の中に放たれてることはおかしいし、何よりも作中に登場するエリックのような性犯罪者が軽い判決を受けて被害者遺族を嘲笑っているとすれば凄く恐ろしいことではあります。それこそハーツフェルドも娘を持つ父親としては終盤でレベッカの自殺映像で悲しむフィリップを観て怒りと悲しみを感じていたことでしょうね。

敢えて言えば、後半でエリック、イェンス、フィリップの動機というのが詳しく明かされるのですが、やたらと情報量が多く、若干複雑なので2回観賞しないとややこしくて分かりづらい感じになっていたことです。確かにイェンスが
娘が首吊り自殺として処理され、エリックに軽い判決が下されることに憤りを感じるのは分かるし、娘を失った父親であるイェンスとフィリップが復讐したかったのは分かるんだけど、フィリップの自供シーンは詰め込み過ぎだし、フィリップの妻シビルが自殺していたことが判明するくだりは終盤に入れたほうが良かったんじゃないかなと思いました。加えてエリックたちの行動に関してはよくよく考えると、疑問点が目立っちゃうんですよね。例えばエリックが事前にシビルの遺体をいじって公園に置くんだけど、頭のカプセルとかどうやって入れたの?って感じるし、エリックがイェンスやフィリップを自殺させたとしてもなぜ彼らがそこまで自分の命を絶つ覚悟があったのか理解しかねるところではあるんですよね。

あと、監禁されたハンナの描写は別にあっても無くてもいいんじゃないかなと感じましたね。
あのハンナの描写は監禁部屋でレベッカがエリックに監禁されてから自殺するまでの映像を見てリアクションするといった内容だったのですが、エリックが被害者女性を犯し、自殺するよう追い込むという手口は中盤のイェンスの説明台詞で何となく想像できるのでレベッカが自殺する描写が蛇足のような感じがしてしまいましたね。

あとはラストシーンはかなり賛否が分かれるかなあと思いましたね。物語の展開からしてエリックが遺体袋に隠れて襲いかかるという行動は明らかに後出しじゃんけんで唐突だし、ハーツフェルドが重い罪を逃れたエリックを始末してからの暗転ENDは確かにぶつ切り感が否めないんだけど、個人的にはハーツフェルドが娘を失ったイェンスとフィリップの復讐心を自分が代わりに果たし、イェンスとフィリップのように娘を失うような真似はしたくないという意味ではこれはこれで良かったなと感じました。多分、ハーツフェルドとハンナが平和的に親子の時間を過ごすというのはむしろ観客の想像の範囲内に留めたかったんでしょうね。

ということで、グロテスクな描写は生々しく描かれているし、話の構造というのが複雑なので無茶苦茶分かりにくくてややこしい映画なんですが、ストレートにミステリーとして楽しめるし、一風変わったバディものとしても楽しめる非常にスリリングでテンポの良いサスペンススリラーでした。作品自体は特集上映というかたちで公開なので知名度は低く、映画ランキングには入りにくい傑作ではあります。しかしもっと多くの人に知られててもおかしくない大変優秀なドイツ映画ではないかと思いました。是非とも色んなかたちで観賞してみてください。