今年の春、家族と一緒に梅祭りに行った。
韓国の光陽(クァンヤン)という場所で、
毎年この時期になると、山ひとつが梅で白くなる。
正直に言うと、それまで梅にそこまで関心がなかった。
花といえば桜。春といえば桜。
そういう感覚で生きてきた。
でも、梅の木の下に立ったとき、
何かが変わった。
香りだった。
桜には、あまり香りがない。
でも梅は、近づく前からもう漂っている。
甘くて、少し冷たくて、どこか凛としている。
その香りが、まだ記憶に残っている。
梅は、派手じゃない。
桜のように通りを埋め尽くすわけでもなく、
ニュースになるわけでもなく、
ただ、冬がまだ終わりきらないうちに、静かに咲く。
気づく人だけが気づく。
知っている人だけが、足を止める。
でも、実は梅は桜より古い。
万葉集の時代、花といえば梅のことだった。
長い時間をかけて研究され、愛されてきた花だ。
派手じゃないからといって、浅いわけじゃない。
知れば知るほど、深い。
成分の研究をしていると、梅に似た存在に出会うことがある。
話題にはならない。
ランキングにも出てこない。
でも、研究者の間では、ずっと前から注目されている。
そういう成分が、私は好きだ。
流行っているから使うのではなく、
データを見て、論文を読んで、
「これは本物だ」と確信してから向き合う。
今、ひとつの成分とじっくり向き合っている。
名前を出すのは、もう少し後にしようと思う。
まだ読み込んでいる論文がある。
まだ確かめたいことがある。
ただ、梅のような成分だということは言える。
地味で、静かで、でも深い。
知れば知るほど、手放せなくなる。
桜が咲く頃には、また書こうと思う。
もう少し待っていてほしい。



