ある日のことでした。
会社で、高濃度ビタミンCセラムを開発すると発表がありました。
私はもともと肌が少し暗めで、色むらが気になるタイプ。
だから、まるで自分のための研究ができると思って、素直に嬉しかったんです。
でも、研究室で始まったのは——
「オリーブヤング」や「ワトソンズ」で売れている有名な製品を参考に、それと同じものを作ろう、という研究でした。
もちろん、そこに並んでいる製品が悪いわけじゃない。
ただ私は、私たちが研究すべきことは、もっと新しくて、もっと人の役に立つものだと思っていました。
だから先輩に言いました。
「先輩、この濃度でビタミンCを処方すると、酸化も早いし、まともな製品にならないと思います。消費期限も短くなるし、肌を傷める可能性もあって……」
先輩は言いました。
「ねえ、私たちは必要な製品を作るんじゃないの。売れる製品を作らないと、お金にならないでしょ。」
「K-Beautyってラベル貼って売ればいいんだよ。今、韓国コスメ人気じゃない。」
私は続けました。
「でも、その名前が有名だからこそ、その名前に責任を持たないといけないと思うんです。塗ったときに本当に肌の助けになって、肌悩みを解決できて、それでいて安定した処方を……」
「うるさい。」
先輩は声を荒げました。
「いつまで夢の中に生きてるの?みんな、本当に効く製品を探してるわけじゃないんだよ。周りが買うから買うんだよ。バカなこと言ってないで、さっさと言われたことやって。」
胸の中に、じわじわと不安が広がっていきました。
これでいいのか?
私はずっと、夢見ていたんです。
父も、化粧品研究員でした。
父は、さまざまな会社から依頼を受ける、有名な研究員でした。
自ら初めて開発した剤型や技術もいくつもあって、多くの人が父に何かを求めていました。
ある日、一つの会社が父のもとを訪ねてきました。
「大きな報酬をお支払いします。ほんの一時でも、肌がぴんと張って見えるクリームを作っていただけませんか。先生の技術なら、きっとできるはずです。」
父は、静かに言いました。
「それは、偽物ですよ。そうやって肌を酷使し続けたら、そのクリームを塗れば塗るほど、肌はむしろ悪くなっていきます。」
父は、その依頼を断りました。
私はその話を聞いて、良い化粧品とは何かを学んだ気がしました。
父が見せてくれた基準が、私の基準になっていました。
そんな私が、今ここで何をしているんだろう。
『私、ここで何やってるんだろう。』
次回は、その後の話をします。

