健康トピック 9

バイオメカニクス(生体力学)が得意なカイロプラクターが考える健康トピック

睡眠 その4-寝相

 

●寝相とは

 寝相とは、眠っているときの体の姿勢や向きのことです。無意識の状態に現れるため、その日の心身の疲れやストレス状態を映し出す鏡といわれています。また、体温調節や体の負担を分散させるために必要な「寝返り」とは異なり、極端な寝相の悪さは睡眠環境の乱れや疲労が原因になることがあります。

 このように寝相は心身の状態を反映すると考えられますが、ここでは「心身」のうちの「身」、すなわち身体の状態と関連のある寝相について見てみます。

 

●寝相と身体の状態

 よく依頼者から寝る時は仰向けが良いか横向きが良いかと聞かれることがあります。基本的には眠りやすいのであればどちらでもかまいません。また、寝る時の姿勢で痛みが出るような場合は、痛みの出ない姿勢を選択していただければ良いです。経験的にはある種の腰痛は仰向けで痛みを感じることが多く、横向きのほうが痛みは少ないようです。いずれにしても前回述べたように、睡眠中に寝返りを何回か打つのが普通なので、寝る時の姿勢について深く考える必要はありません。

 また、就寝時は仰向けや横向きで寝ていても、起床時にうつ伏せになっていたり、仰向けで万歳のように手をあげて寝ている方がいます。これはどちらも同じ問題を持っている可能性があります。これはどんな問題があるのでしょうか?

 

●呼吸時の体の動き

 うつ伏せや万歳の問題を考える前に呼吸時の体の動きを見てみましょう。

 息を吸うとき(吸気)は肋骨が上方と外方に動くことにより胸郭が広がり、胸郭腔の容積が広がり、ここにある肺が広がります。この広がった分空気が肺の中に入ってきます。息を吐くとき(呼気)は上に上がった肋骨が自重で下がることにより、胸郭が狭くなり同時に肺から空気が吐き出されます。

 吸気時に肋骨を上にあげる時に働くのが吸気筋といわれる筋で、通常時、主に働くのが横隔膜と肋間筋です。通常時とは別に例えば走った後などに「ハーハー・ゼーゼーと肩で息をする」と言われるように大きく息を吸うとき(努力性呼吸)に使う筋肉(呼吸補助筋)もあります。これは首や肩にある筋肉が主で代表的なものが首にある斜角筋(しゃかくきん)と胸にある大胸筋(だいきょうきん)・小胸筋(しょうきょうきん)になります。

 

●呼吸がわずかに浅い

 何らかの問題で吸気筋がうまく機能しない、肋骨の動きが悪いなどの理由で、吸気時に胸郭が十分広がらず、結果として呼吸が浅くなることがあります。呼吸が浅いといっても、肺の病気などのように「息が苦しい」などと自覚することはありません。わずかに呼吸が浅い程度です。しかし、わずかではあっても呼吸が浅くなり吸う空気が少ない分、酸素がわずかに不足することがあります。このように呼吸が浅くなると空気をたくさん取り込もうとして、呼吸補助筋を使って深く呼吸をするようになる場合があります。

 しかし、わずかに呼吸が浅くなっているだけなので、日中の起きているときは問題になることはありません。問題は就寝時です。就寝時は意識がない状態なので呼吸補助筋が使いにくくなっています。この時に胸郭を少しでも広げるために万歳の体勢をとります。うつ伏せも多くの場合、手を顔の下に持ってくるので万歳していると同じ体勢になります。

 

●万歳やうつ伏せになるのはなぜ?

 ではなぜ万歳するのでしょうか? これはラジオ体操の深呼吸を思い出してください。両手を上にあげて深呼吸をするのではないでしょうか。これは首から肋骨についている斜角筋や腕や肩甲骨から肋骨についている大胸筋や小胸筋を使って胸郭をより大きく広げようとしているのです。

 就寝時は僅かな酸素不足があるときは、無意識に万歳やうつ伏せになって呼吸補助筋を使って胸郭を広げて、息を吸いやすくしていると考えられます。これらの呼吸補助筋は通常の呼吸で使われることはなく、激しい運動をしたときなどの「ゼーゼー、ハーハー」したときに使われるのが普通です。呼吸が浅い状態が常にあると、通常でもわずかに使われるということが継続するので、呼吸補助筋が疲労し、呼吸補助筋が付着している首や肩のコリや痛みの原因となります。

 

●呼吸補助筋(特に斜角筋・小胸筋)が疲労することの問題

 斜角筋は首(頸椎)と上部肋骨の間にある筋肉です。斜角筋の隙間を腕に行く神経や血管が通っているので、この筋肉が硬くなると手にしびれや痛みが出る場合があります(斜角筋症候群)。また小胸筋は肩甲骨と肋骨の間にある筋肉でこの筋肉の下を腕に行く血管と神経が通っているので、やはり手のしびれや痛みの原因となることがあります(過剰外転症候群=小胸筋症候群)。さらにこの小胸筋は鎖骨(さこつ)の下にあり、ここには鎖骨下静脈(さこつかじょうみゃく)が通っています。この鎖骨下静脈には全身から来たリンパ管が接続して、リンパ液を流しています。小胸筋が疲労し硬くなることで鎖骨下静脈が圧迫されます。圧迫されると鎖骨下静脈の圧が高まります。圧が高まることよって、リンパ管から鎖骨下静脈への流入するリンパ液の流れが悪くなり、結果としてむくんだり免疫力が弱まったりします。

 このわずかに浅い呼吸の問題がある場合は肩こり、首の痛み、手の痺れや痛みやだるさ、疲労しやすい、手足のむくみ、風邪をひきやすい、肩関節の動きの悪さや痛み、腰痛など様々な症状の原因となる場合があります。

●寝相が教える問題

 このように寝相が体の問題点を教えてくれることがあります。呼吸が浅くうつぶせ寝や万歳して寝る方の多くの場合、鎖骨の下(鎖骨下部)や胸郭(特に上部)の側方(=肋骨)に硬さや圧痛が認められます。この場合、カイロプラクターは背骨(脊柱)・骨盤の他に胸郭(特に上部胸郭)の動き、鎖骨の動きなどを施術し、胸郭が十分に動き呼吸しやすくなるように施術します。

 もし、寝相に問題がある場合はお近くのカイロプラクターにご相談ください。ただし、子供のように元気が良すぎて激しく寝返りを打ち、寝相が悪いこともあります。この場合は問題はありませんのでご心配なく。

(つづく)

 

参考資料

POST  

https://1post.jp/

 

セラピストプラス

https://co-medical.mynavi.jp/contents/therapistplus/lifestyle/beauty/22148/

 

カイロプラクティック快晴堂

阿知波正人