驚くことがありました。
「本当かよー」と言いたくなるような、嘘みたいで本当の話です。(だから自分でも驚いたんだけどね。)
先日、ジーンズのリーバイス(Levi-Strauss)の広告を見て・・・
「おおー、(構造主義人類学者の)レヴィ・ストロースかー。広告に載るとは、いやはや時代も知的になったもんよ~」
と思ったのです。
学者のレヴィ・ストロースもスペルがLevi-Straussで同じなんですね。
もちろん、すぐに勘違いに気付いて、「ああ、ジーンズの・・・」と納得しました。
驚くべきなのは、この勘違い自体ではなく、同じ勘違いをした人を、たまたま本を読んでて発見したんです。
橋爪大三郎という学者の本なんですが、彼も同じ勘違いを、数十年前に、犯していたのです。
同じ馬鹿な勘違いをしたことよりも、勘違いした数日後、たまたま読んだ本に同じ勘違いをした他人の話が載っていたことに驚いたんです。
ただ、さっき調べて分かったんだけれども、
実は、ジーンズのリーバイス社の創設者と、構造人類学者のレヴィ・ストロースは、遠縁の親戚関係にあるらしい。
読み方が異なるのは、おそらく学者のレヴィ・ストロースが、自分の名前のユダヤ性を剥ぎ取って、英語風に発音していたからなのでしょう。
(ここからは余談です)
レヴィ・ストロースで思い出すのは、
以前読んだ桜井哲夫さんの・・・・
『戦争の世紀ー第一次世界大戦と精神の危機』
『戦間期の思想家たち-レヴィ・ストロース、ブルトン、バタイユ』
『占領下パリの思想家たち-収容所と亡命の時代』 (これは先月に出版されたばかりだが、発売日にすぐ読んだ)
の3部作です。
これがメチャクチャ面白い。
第一次大戦から第二次大戦直後くらいまでのフランス知識人の人間関係を、時代順に3つに区分して、それぞれ一冊ずつになっているのです。
これがおもしろかったのです。
既に登場したレヴィ・シュトラウスのほか、
アンドレ・ブルトン(シュール・レアリスムの「帝王」)
ジャン・ポール・サルトル
ポール・ニーザン
レイモン・アロン
シモーヌ・ヴェイユ
アンドレ・マルロー
マルセル・モース
ジョルジュ・バタイユ
ジャック・ラカン
シモーヌ・ド・ボーヴォワール
アンリ・ルフェーブル
などなどの、あの時代に百花繚乱のごとく活躍したフランス知識人の交友関係が、克明に描かれているんです。
しかも、驚きなのは、彼らがみんなお互い知り合いなんです。
実に狭~い空間に、後に名を残す偉大な思想家たちがビッシリと肩を寄せ合ってるんです。
しかも、そのほとんどがフランス社会党に入党している。
フランスでは「社会党」と呼んでいるけれども、実際には共産党です。
だから実際には、ロシアのボリシェビキのフランス支部です。
これに、みーんな入党してるんです。
切磋琢磨しながらお互いを研鑽しあった、ということなのかもしれません。
でも、この本に書いてあるのは、お互いが、
恋人・妻を奪いあったり、
お互いをクソのように馬鹿にしあったり、
と思ったら急にくっついたり、
で、はっきり言って、やりたい放題です。
アグレカシオンというのは、大学教師資格のための試験みたいなもんですが、これに受かるのはフランスでも超・超エリート。
というか、世界一むずかしい試験でしょう。
そもそも受験資格を持っていることだけでも、東大法学部よりはるかに敷居が高いようだ。
いちおう、国家のための高級官僚を育てるはずの試験なんですが、
実際には反国家的な知識人を量産しまくっている。
本に描かれているように、フランス社会党に入党しまくりです。
それを黙認するフランスという国の懐に広さには脱帽ですね。
それはさておき、このアグレカシオンに合格したスーパー・エリートの面々が、お互いやりたい放題に批判したり、異性関係でドロドロしてるのが面白かったです。
個人的には、もっとも過激なシモーヌ・ヴェイユの人生に爆笑しました。賢いはずなのに、狂犬そのもの。すぐに、誰にでも噛み付きます。そして、貧乏生活ゆえに夭折。かわいそうに。
次に好きなのが、バタイユ。こいつの放蕩っぷりは尋常じゃないっす。
第一次大戦と第二次大戦の間の期間、いわゆる戦間期の歴史については、もっぱらヴェルサイユ体制とその崩壊の過程として、外交史ばかりが語られてきましたが、この時代の知識人の精神史に言及した本はそう多くない。
だから、彼らに共通する精神的風土(タリーマ)を知ることができて、とても面白かったです。
それぞれの思想については知っていても、このタリーマばかりは個人史とかを丹念に拾ってくるしかない。
でもそれは非常に骨の折れることだから、桜井さんの本で簡潔に読めて、彼に大感謝です。
桜井哲夫氏というと、大学一年のときに「知の教科書 フーコー」を読んで、政治思想の面白さを(おそらくはじめて)意識しました。
その日、なぜか母親に誘われて、はとバスの一日観光に行ったのですが、バスの中でとり憑かれたように読んだ記憶があります。千葉の方に行ったんだっけな。
いま思うと、「知の教科書 フーコー」は、フーコーの概説書としてはそう出来のいいものではないですが、当時は衝撃的な読書体験でした。
はとバスのバスガイドの説明が耳に入らないくらいでした。
あれからもう5年も経つのかぁ。
ああ、お腹空いてきたぞな。
いまとってもオムレツが食べたい。
バターたっぷりの濃厚なオムレツ。
よし、これから人生初のオムレツ作りに挑戦しよう。
上手になったら、そのうち彼女に食べてもらおう。
上手になったら・・・・。
そしてジーンズを買うときは、リーバイスにしよう。
なんかの縁だ。