薬膳の考え方を取り入れた京おばんざいの店を開いている青山有紀さんと、野菜を使ったケーキやお寿司に取り組む柿沢安耶さん。今回は、目標を実現するための秘訣や、パートナーとの関係、働く理由、将来の夢などをお伝えします。2人をゲストに迎えた6月の「生き方カレッジ特別開催」の模様を再構成しました。(聞き手:長沢美津子・朝日新聞生活グループ記者)
*** 夢日記 ***
——お二人は、自分のやりたいことを実現してきていますが、実現のために何かしていることはあるのでしょうか。
青山夢日記をつけると、つけていた通りのことが本当にできる。できるだけ細かく、1年後、2年後、10年後、この時には、こういう家に住んで、こういうものを食べていて、自分がそこに身を置いていることをイメージして書きます。それがないと、つらくてやっていけない。自分で未来のイメージをつくって、それが見えていると、着実に1日1日そこに向かっている気がして、今やっていることも楽しいことに変わる。
柿沢私も、何年何月にこれこれをする、という夢日記をつけています。
——「あの人のようになりたい」「あんな風になりたい」という見本はあるのですか?
柿沢さん 柿沢ロールモデルとか見本はありません。ないから、すべてを自分で決められる。それがうれしい。「決めなきゃいけない」とは思わない。見本はないけれど、あの時に見たパリのカフェのようにしたいな、ということはあります。独立したのは26歳の時。つとめている時は、やりたいことがあっても自分の思うようにはできない。あせっていたのかもしれないけど、自分が思うこと、やりたいことを早く実現したい、と思っていました。
青山自分で決められるのが楽しいし、スタッフのやりたいことをできるのもうれしい。粉ものが好きなスタッフがいたから、粉もの(クッキーなど)を出せるカフェを始め、そのスタッフに任せました。本人がそれをやりたいのかどうかはわからないし、確認もしてない。スタッフが、自分からやりたいと言い出すのは難しいと思う。でも、今は喜んでやってくれている。自分で経営をしていると、スタッフのみんながやりたいことも含めて会社の理念にできる楽しさがある。
*** 結婚、パートナー、出産、そして仕事 ***
——青山さんは1年前にご結婚されたんですよね。仕事上で、あるいはご自身に何か変化はありましたか?
青山結婚というのは、いつかできたらいいけど私は無理だ、って思っていました。長年一人で責任を負わなきゃいけない仕事をするなかで、いやなこともたくさんあって、心を閉ざしていて、野犬のようだったんです。迷っちゃいけないと思っていたり、周囲に「女だからそうなるんだ」って思われたら出す商品まで傷つくと思ったりしていた。必死だったんだってことに結婚してから気づきました。守られちゃいけないって思っていたんです。でも、守られている方が、心にも余裕があって強くなれるんだ、って思いました。夫は全然関係ない仕事なので、形として守ってくれるわけじゃないけど、結婚してからも、自分が何も変わらず同じように生活していられる状況にあります。守られていると感じることで、大人の強さができたかな、と思います。
——柿沢さんは、ご夫婦で一緒に仕事をされているんですよね。
柿沢私は巻き込んじゃったんです。私がお店をやりたいと言ったら、夫は「じゃあ手伝う」って言ってくれて。今、結婚して8年くらいになりますが、めちゃめちゃ助かってます。何かを決めなきゃいけない時、がんばらなきゃいけない時に、味方がいる安心感。過去に従業員にお金取って逃げられたこともあって、従業員も信用しているけど、100%というのはなかなか難しい。でも、夫のことは100%信用できるから、それが強さになっている。経営は夫に任せて、私は作ることに専念させてもらっているので、対立することもあります。私がどんどんあれもこれもと高い材料を入れて原価が上がっていく、と経営的には困る。でも、私は折れないから、結局、夫がうまくやってくれています。
*** これからの夢 ***
——最近、二人ともニューヨークに行かれたとか。目的は何だったんですか?
青山さん 青山ベーグルがすごく好きなので、ベーグルを食べに行きました。海外へ行ってみると、どこへ行っても、「日本はすごいな」と思う。おいしいものばかりで、大地に力があって、水もきれいで、お野菜もおいしくて、みんなまじめで仕事をきっちりやる。こんなすごい国ないって思う。
もうひとつは、仕事です。薬膳とか自然との一体感とか、私は、おばんざいがいいものだと思っているので、日本だけでなく世界のものにできたらいいなと考えています。ニューヨークやパリにも日本食のお店はあるけれど、現地のお客さまが多いから、その土地にあわせて味付けをしている。でも、私の店へいらっしゃる外国のお客さまは、いつもの味で「おいしい」って言ってくれます。だから、自分がいいと思うものを、そのままの味で海外でも出していきたい。世界中の人が「おばんざい」という言葉を知っていて、辞書にも載るような日がくる。それも、夢日記のひとつです。
柿沢私は8年前に会社を始めてから一度も海外に行けなかったんです。今回、スタッフがみんな優秀なので任せて行くことができました。ニューヨークへ行ったのは出店を考えていることも理由です。
日本は今、食べ物があふれていて、新しいお店ができても流行で終わってしまうこともある。新しくできたデパートやショッピングモールなども、なんとなく違うだけでみんな一緒に見える。だったら、私は違うことをしたい。日本のおいしい農産物を、世界の人から見ても「おいしい」と言われるように。今の日本の農業を考えるとうつむいてしまう部分があるけど、農業に希望がもてるようなお店をやりたい。それをやるなら、海外。やるなら、世界の首都、ニューヨークで。お寿司とケーキと両方のお店をやりたいな、と思っています。
ニューヨークに実際に行ってみると、ヘルシーな食べ物として自然食系のお店で売っているケーキでもぎとぎとした色のものや、ベーキングパウダーでふくらましたものばかり。「天然着色料なのは分かるけど、この青はないだろう」と。そういうケーキが好きだから私の野菜ケーキは選ばれないかもしれないけど、肥満大国で、健康的なケーキを食べる人が増えてくれたらいいなと。来年か再来年にはやりたいです。それくらい日本の野菜やお米は味が繊細で、レベルが高いと思う。
——あらためて、これからの夢、やりたいことを聞かせてください。
柿沢人が元気になること。野菜の可能性を広げられることをやっていきたい。
青山私は、赤ちゃんでも人を喜ばしていると思うんです。にこっと笑って、周りに幸せを与えてくれる。それが生きていること、働くことの意義。それができていればいいと思います。会社としては、方向性を決めていなくて、毎日続けられることがありがたいと思う一方で、「ビル一個くらいはつくりたいな」という夢もありますが(笑)、仕事とは別に、子どもが欲しいですね。これまで女性としての楽しみ方をしていなかったと思うし、どれだけ自分ががんばっていても、子どもを産んで育てている人にかなわないな、と思う。だから、やりたいですね。
*** 「だから、働く」 ***
——最後に、この「生き方カレッジ」のテーマでもある「働くことの理由(だから、働く)」をそれぞれ、お聞かせください。
柿沢生きることと働くことは一緒。生きることと食べることも一緒。そういう仕事ができているのが幸せだと思います。だから、あまり考えすぎずに自然体でやりたい。かといって覚悟がないわけでなく、一生これをやりたいと思ってやっています。自分も楽しく、周りの人も楽しく。そういう、幸せをつくっていけるのが仕事だと思います。
青山この世にいる以上、誰かとつながったり、命あるもののエネルギーを巡らせる一部として自分が存在したりすることが、働くということ。みんなが自分の好きなことで独立したらいいとは思わないけれど、自分は好きなものを投げると、必ず何かが返ってくるから、その循環のために働いています。
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