今日の天気は雨 | ~蒼空悠舞~ 蒼島えいすけ オフィシャルブログ

今日の天気は雨

静かな夜の空気の中、小雨が道路を濡らす。片手をポケットに突っこんだままスルスルと自転車を走らせ、ハンドルを持つ手の脇には小さなコンビニの袋がひとつ。中味はカフェオレと、、、お香典袋。


俺にこんなもん買わせんなよ。


通り過ぎてゆく街灯で四方から現れては消え、伸びては回り込んでくる自分の影を見るともなく見ながら、真夜中過ぎのお使いを済ませる。

初めて見る友人の父は繊細さと思いやりを持つ彼とそっくりだった。奥さんに支えられながらでないと足元もおぼつかないようすとは裏腹に、息子の早過ぎる死についてハッキリとした口調で「断腸の思いです」と語った。

もう半年位前から音信不通だった。でも自由な彼は以前も同じような事があったので、必要以上の心配はしないで、みんな信じて待っていた。発見された時は東北の橋にぶら下がっていたらしい。ほんの三、四日前の事だ。彼が居なくなってからつい最近までどこで何をして居たのか、何を思いどう苦しんでいたのか誰も分からない。

彼が姿と消したのは震災より前。でも最後は東北に居た。そこからどんな景色を見ていたのだろう。

お別れを言う刻が来て、遠目に遺体を見たら憤りがこみ上げて来た。


「おまえ、っざけんなよ」


理由はわからない。理屈じゃない。でも近づいて顔をよく見たら、口が少し歪んでいた。余程苦しんだ据えの結果だったろうと気付いたら怒りは自然に落ち着いて、涙が滴れた。

イメージにさえなら無い感情が湧き上がるなか、横たわる彼の表情をみながら彼がもうそこに居無いと悟った。いつもの少し困ったような笑顔は無く、みたこもないニュートラルな顔だった。何の色もない絶対的な無。嬉しさも悲しさも、怒りも苦しみも、存在さえ無い。肉体は魂の器だって言うのは本当だと思った。

すごく思いやりがあって、繊細で、真摯で、不器用で、実は頑固。アーティストを絵に描いたようなヤツだった。初めてライブを観たときはイケメンのチャラ男だと思ったのに、後日会ったら引き籠りのオタクだった。スタジオの帰りとかにみんなで飲みに行くと、外人ノリのメンバーに無茶ぶりされたりして、少し困った顔をしながら楽しそうに笑ってるカミナリ頭が忘れられない。

俺がこれから役者を目指すってときに、自分はバンドマンとしてプロデビューし、紆余曲折を経て、引退を選んだばかりだと言うのに、俺のヤル気を削ぐような事は何も言わず、高説もたれず、ただ自分の経験から得た気の持ち方だけを授けてくれた。Bunkamura近くの中華ソバ屋で教わったこの言葉は本当に今でも定期的に引っ張り出してきて確認してる。それと新宿のハブで言われた言葉。「女の子と話すときに態度が変わるのは、人によってはよくないと思われるかもしれない。」気にして直してんだけど、ちゃんと改善されてんのかな。もう聞けねーよ。

死ぬとはどう言う事か。哲学的な話しじゃなくて、実際周囲の人達にどう言う影響があるのか改めて思い出した。きっと本来なら死に触れる機会はもっと頻繁にやって来て、生と死のサイクルをよりリアルに捉えられる筈なのに、超高齢化が進むこの世界ではあまり死に出会わず、生がボヤける。

旅立った彼を責める気は全く無い。もうこれ以上苦しむ事は無いからそれが救い。でもやはりヒトは死んではいけないんだと思った。死ぬ事で回りに与える傷は金輪際消え無いから。忘れる事は出来ても、癒える事は絶対無いから。


本番3日前にしての知らせ。二日前に朝から葬式。後通し稽古。どう捉えていいのか正直わからん。気持ちの切り替えは出来る方だから本番に影響は無いけど、家に帰ってくるとなんだか心が重い。


33年間お疲れ様でした。

俺はカツに出会えて本当に感謝してるよ。

ありがとう。