俺にはこれしか無いんだ。
ただ、走ることしか。
ある日神様は言いました
「勝敗の価値は道に落ちてる」 「女が勝てるわけないだろ。」
ある日神様は言いました
「悪い天気が花を咲かす」 「じゃあその身体、よこせよ。必ず追い抜くから。」
長い髪も、膨らんだ胸も要らない。けどそれがあっても無くても、
俺はどうしても男に勝てなかった。
あの日母さんは言いました
「誰かの優しい言葉の裏は」
あの日母さんは言いました
「あなたのためではないのかも」
どうせタダでもらった命なら 放ろう
切り裂いた先で いつもの顔して
「まだだよ」って「もっと先だ」って
続かない命の続きが見たくて 負けたくない。認められたい。
想像の数センチ先も僕ら 夢と呼ぶんだ
生まれた時から決められた限界。
逸る気持ちとは裏腹に、俺の両足は空回りした。
縮んだ背中に、古い格好をした男が近付いた。
泣きながら君は言いました
「あなたは私の何が欲しいの」
泣きながら君は言いました
「先生たちが敵になるの」
もういいかいもういっそ
このまま息止めてみても
「これはね、未来を造るための道具だ。」
どうせいつか忘却れる傷だ
そのまま 走れ
空を、
捻じ曲げた物は 黒板の真理だ
宇宙も君も誰が証す
続かない話を続かせるために 俺は男だ。俺は誰だ?
想像の数センチ先は とうに後ろにある
男は少女に注射器を手渡した。
「これ、ドーピングだろ。」
「それじゃあなにか、君は、今のままで自分の存在を保てるのかい?」
自分はずっと走ってきた。ずっとずっと。全力で。
自分のゴールとは反対の方向に。
躓いた身体仰向けに倒れ
そこに広がる色を知る
躓いた者だけが知る坂道
“空走”と称すこの道は 生きている間だけ
切り裂いた先で いつもの顔して
「まだだよ」って「もっと先だ」って
続かない命の続きはここだろ 俺は、「俺」だ。
想像が想像じゃないと 君は知ってる
走れ
想像と実像の橋を僕ら 夢と呼ぶんだ
女子の記録が、大会新記録を達成。
幻遊世界では全てが本当で、全てが嘘だ。
「あの子の死因、飛び降りらしいぞ。」
「待て。走って、飛び降りた…?」
「その子、生まれつき両足無いよな?」