昨年末,シアトルから,とても気になるニュースが聞こえてきた.マリナーズの選手の一部が,イチローをこともあろうに,リンチしようとしていたと言うのだ.これが本当なら,スポーツマンとしてあるまじき行為だ.実際に起こらなかったことは,何よりだった.それにしても,何故このような聞き捨てならない話が,表に出てきたのだろうか.先にも書いたが,メジャーリーガーは仲間を守る同胞意識が強い.よっぽどでないと,この様な話が外には出てこないはずだ.ところが,この話の続編が,一昨日,アリゾナのピオリアから,AP電で流れてきた.いざ,キャンプに入ろうとする矢先になぜ,このような話が,取り上げられたのか.まさに,気になるところだ.その内容は,イチローの,利己主義(自己主義?)的行動に対し,マリナーズの複数の選手が,未だ我慢ならないと言っていると言うものだ.それが彼の留守中(WBC)に,爆発するのではないかと告げている.遠征先では1人,異なるホテルに泊まる特権を有し,チームに交わろうとしない彼の姿勢に対し,多くの選手が反感を持っていると言う.ただ,イチローがそのような特権を有することについては,一部の選手には,諦めの気持ちもあると言う.年間200本安打を8年間続けている選手に,文句は言えないというのだ.しかし,チームメイトの反感の根源は,彼のプレースタイルにあるようだ.例えば,相手のランナーが1塁,2塁にいて,ライト前ヒットを打たれた際,イチローはほとんど,ホームに返球すると言う.本来は1塁ランナーが3塁に行かないように,ホールドして,次の1点が入りずらいようにするべきなのだが,彼の場合は目立つ,本塁のクロスプレーを選択すると言う.また,鈴木の四球数は,極めて少ないと言う.昨シーズン,700回以上打席に入った打者で,四球が50個以下だったのは,彼とMVPのペドロイア2人だけだった.イチローの場合は,とにかく総安打数を気にしている.四球を選ぶより,まずバットに当てに行くことを選択する.試合の流れによっては,相手の投手に多くの玉数を投げさせることが必要であるが,イチローは,おかまいなしに打ちに行くと言うのだ.また,彼は,盗塁をあまり試みない1番打者だと言われている.確かに,初年度以外の7年間において,彼の盗塁数は45個以下である.これはヒット数に比べると少ない数である.とにかく,後に残る自分の数字を気にする.気にかけているのはこれだけでない.高い盗塁成功率も気にしていると言う.現在,82%.これはすこぶる高い数字だ.この他にも,イチローのチームプレーを無視した行動が,幾つか目立つと言う.新監督で日系のワカマツは,このような点についてイチローと対話して行きたいと言う.しかし,多くの選手は,彼は変わらないと思っているようだ.確かに,試合を見ていても,イチローの動きが,目に余る時がある.打つ前の姿勢はもとより,バットの投げ捨て方,フライの取り方など,あまりに”しな”を作りすぎだ.野球は,クリケットから来る紳士のスポーツだ.相手を尊ぶことが,暗黙の上で重要視されている.よほどのビッグゲームか,さよなら本塁打以外は,ガッツポーズをしないことも常識だ.ひとつひとつのプレーを「サラッ」とこなすことが,選手の礼儀とされている.昨今のイチローのインタビューを聞いていると,集団の中での身の置き方に苦慮している雰囲気がある.WBCの間のアリゾナのキャンプで,イチロー抜きで,シアトルのチーム意識は高められる.帰った時に彼のいる場所はあるのだろうか.それとも,そんなことは無視して,孤高のプレーを続けるのか.それとも,メジャーリーグで,「100敗したチームで初めての100億円選手」,そんなありがたくないレッテルはトレードで剥がされるのか.彼のファン重視のプレーは,実際には個人プレーとして映っている。やはり,文字に書かれていない,目に見えないしきたりやルールを読むことも大切だ.イチローが200安打,本塁補殺,そんな自分の数字を我慢でき,さらりとプレーができるようになった時,目の肥えたアメリカの野球不安は,真に彼を受け入れる.