アメリカでは,シーズン6616敗のキャブスがマジックに敗れたことよりも,今,まさに始まったレイカーズ対マジックのファイナルよりも,レブロンジェームズの去就の方に,話題が集まっているようだ.多くの専門筋は,結局ジェームズはキャブスを去って行くと予想している.私自身もその意見に一票を投じる.その理由として,ジェームズはまだ若く,ファッションやエンターテーメントにいたく興味があるということ,加えて巨額の契約金(メガコントラクト)を求めていることが挙げられる.彼の望む契約金額は,キャブスが他の選手と交わす契約金額を抑えて,可能な限りのサラリーキャップルームをジェームズに開けて捻出した額であっても,届かない額だと言われている.地元紙によれば,1年で25億円ほど,8年くらいの契約期間で総額200億円程度を望んでいると言われている,これほどの額だと,キャブスでは,回収が難しい.ビジネスである以上,費やしたお金以上のものを回収する必要がある.現在,この額が払えて,回収することができる球団は,巨大なマーケットを有するニックス以外には思い当たらない.テレビの放映権以外にも,グッズ販売,試合以外のイベントへの集客などなど,多くの収入・集客が期待できる巨大市場はニューヨークであり,球団はニックスでしかない.そのためか,既にニックスは,社長兼GMに,元ペーサーズの社長辣腕のウオルシュを迎え,マーブリー,クロフォードやランドルフなどの中心選手を放出し,早々ジェームズを迎え入れる準備を整えつつある.もちろん,キャブスにも僅かな望みはある.サポート選手を整備し,生まれ故郷のアクロンに最も近いフランチャイズであることを全面に押し出し,世論の力を借りて,ジェームズの引き留に係る算段だ.しかし,ここ5年間,殆ど試合を欠場することなくクリーブランドのためにプレーをしてきたジェームズには,既にそこを去る十分な理由があるとも言える.キャブスのフェリーGMも,何とか奇策を投じたいが,ニューヨークシティと200億円が持つ魅力を上回る秘密兵器を隠し持っているとは考えにくい.もちろん,現在よりも更に強力なスタープレーヤーを連れてきて,チャンピョンシップを長く狙えるチームとして,ジェームズを魅了する手段はある.しかし仮に,ダンカンやハワード,ガーネットなどのスーパービッグマン達が,ジェームズとプレーすることを望むかと問われれば,恐らく,答えはノーであろう.ジェームズは,コービーともウエイドともメロと異なった,超オールラウンダーである.外角シュート,ペネトレイト,リバウンド,パス,ディフェンス,全てにおいて超一流であり,何よりもタフで力強い,そこには,他のスーパースターが自分自身を十分にアピールできる余地は残っていないだろう.恐ろしいことに,ジェームズはこのレベルのプレーを毎試合続けている.今の彼と一緒では,誰もが“刺身のツマ”になってしまう.

しかしながら勿論,彼がニューヨークに移ったからと言って,すぐさまチャンピョンシップを獲れるチームに変貌するかと言うと,それは思うほど程,簡単ではない.ジェームズが毎試合40点を取ってくれても,勝つためには,残りの選手で60点を取らなければならない.彼のような超スーパープレーヤーを有することと,チャンピョンになれることは,すぐにイコールとはならないのだ.特に,バスケットはよくできたスポーツだ.自分のチームが点を取れば,ボールは相手のものになる.キャブスに勝利したマジックは,ジェームズがボールを持つと,タイトにディフェンスすることはしなかった.彼のすごい体に吹っ飛ばされて怪我をしたりファールが増えたりするよりは,素直にジェームズに40点をあげてしまう方が,ましであるとの理解だ.ハワード,ルイス,ターコール-,リー,アルストン,ピトラスで,100点を常に叩き出せるチームである方が,数段,計算しやすい安定したチームであるわけだ.(今日のファイナル第1戦はみんな不発だったけど.)だからこそ,NBAでは,ディフェンスとスリーポイントは重要だ.フリーであれば間違いなく得点できるプロの技術レベルでは,いかに点を取るかよりも,相手にミスをさせ,いかに自チームの攻撃機会を沢山得るかが重要だ.また,通常の2点よりも1点多く加点できるスリーポイントは,極めて有効だ,言い換えれば,イースタンカンファレンス ファイナルでのマジックには“それ”があり,キャブスには“それ”がなかった.

ジェームズを獲得したニックスの次なる課題は,チームとしていかに安定したタイトルコンテンダーになるかだ,それによって,満員の観衆の前でプレーオフ,チャンピョンシップが戦え,巨額の入場料,グッズ販売料,試合の放送料金が転がり込む.100点-(マイナス)ジェームズの40点=(イコール)残りの60点をいかに他メンバーで毎試合取るかと言う簡単な算数は,難解なアルゴリズムを解くよりも,NBAでは困難な問題なのだ,

 皆さんは,“バードマン”こと,クリス アンダーセンをご存じだろうか.戦前の予想に反して,NBAウエスタン カンファレンスファイナルで,レーカーズと互角に戦う,デンバーナゲッツのフォワードである.バードマンの呼び名は,彼の風貌とプレーぶりから来ている.白人でありながら,全身を刺青に覆い,髪はジェルで固めて,金髪の“とさか頭”にして,試合中どこからともなく飛んできて,リバウンドを奪い取る.その姿は,どことなく,ロドマンにも似ている.風貌がひときわ異彩をはなっているので,一種“きわもの”的な目で見られることが多い. しかし,彼が必至にリバウンドを取りに行く姿勢は,チームには,不可欠なものになっている.ナゲッツはこれまで,プレーオフ1回戦敗退の常連チームであった。シーズン中は、とりあえず5割前後の成績は残す.しかし,ポストシーズンでは,早々と消えて行く.HCのジョージカールは何とかこのチームをまとめ上げようと努力してきた.何せ,個人技高い選手が揃っている.カーメロ,マーティン,JRスミス,ネネ,そしてトレードで去ったが,アイバーソン,キャンビー,ブレイクなど,多彩な顔ぶれが在籍した.しかし,如何せん,チームが上手く纏まらない.大事な時に,個々の力を,一つに集約できない.そんな時に変化を与えたのが,バードマンとビルアップスの加入であった.ビルアップスは自分を抑えながらチームメイトを最大限に活かし,チームメイトが疲れた時に,自ら一気に点を取りに行く,ゲームの流れを敏感に読み取ることができる優れたポイントガードである.また,彼の試合中の口癖である,“マイ フォールト”(俺の責任だ.)は,ビルアップス自身のミスはだけでなく,チームメイトのミスまでも,自分のミスとして吸収してしまう.個性が強く、ミスを味方のせいにしてしまう選手が多いNBAにおいて,ビルアップスのそんな姿勢は,チームメンバーの心を引きつけ,一つにする,カンフル剤としては十分な効きめを持っている.

さて,話をバードマンに戻そう.バードマンアンダーセンは,以前は,ホーネッツに在籍していた.試合に出られず,ハリケーンカトリーナで家を失い,自暴自棄になってドラッグに手を染めてしまった・・・。そのために2年の出場停止.しかし,その間腐ることなく,周りの人達に支えられて,NBAのコートに戻ることができた.バードマンはオフコートでは,髪を下ろし,長そでのシャツで刺青を隠し,言葉少ないもの静な男に戻る.アリーナの関係者口から入ろうとして,警備員によく,呼び止められるそうである.それほど,コート内と外では,別人なのだ.今の彼は,気弱で静かな自分を奮い起たせ,試合と言う戦場に向かうために、“バードマン”に変身している.彼の心には,2つのことしかない.チームに貢献すること,出場停止の際に支えてくれた人達に,プレーで恩返しすること.そんな彼の静かな献身の気持ちと,ビルアップスの自己犠牲の精神が,タレント集団ナゲッツのチームプレーを創り出している.あと2つ,皆で勝利をもぎ取れるか.飛翔バードマンが鍵である.


赤毛のアンで有名な,カナダ プリンスエドワード アイランドがある,ノバスコシア州の州都,ハリファックス市は,とても美しい海沿いの街である.湾にゆるやかに突き出た部分に,ハーバが点在し,数多くのヨットが停泊している.その後ろに高層ビルが控え,街中には数多くの緑豊な公園が点在する.こんな街に住める人は幸せだろうな・・・そう想いながら街を散策したことを覚えている.その時,横を歩いていたカナダ人の友人が一言,「Only Summer」と呟いた.そうだ,ここは北緯70度を越える,カムチャッカ半島の先端と同じ緯度の街なのだ.

友人が言うように,9月の声を聞くと,気温は一気に一桁台,10月にはしばしばマイナスになると言う.そうなると,街の至るところに、アイススケートリンクが張られるそうだ.水をまけば夜には,天然のリンクが作られる仕組みだ.ハリファックス市の対岸には,静なベットタウン,コール ハバー市がある.この街はアイスホッケーが大変盛んで,多くのNHL選手を輩出している.

 ピッツバーク ペンギンズの若き23歳のキャプテン,クロスビーもその一人だ.若くして“宿命”を背負った彼は,18歳の時ドラフト1位で指名を受けた.共同オーナーの一人であるマリオ レミューは,自ら,後継者にクロスビーを選んだ.18歳の細身の若者は,指名と同時に,“スーパーマリオの後継者”と言う,重い宿命を背負うことになったのである.そのクロスビーが,ペンギンズを率いて,常勝集団デトロイ トレッドウイングスとの王者をかけたリマッチに挑む.昨年のスタンリーカップファイナルは,シリーズを通して,ウィングスの厚みのある攻撃に防戦一方に回ってしまい,42以上のチーム力の差が見られた.クロスビーも徹底的にマークされ,得意の変幻自在なパスを繰り出す姿を,殆ど見せることが出来なかった.今年は,マルキンと言う強力なパートナーを得て,昨年の雪辱に臨む.2人の姿は9192のレミュー&ヤガーの往年のペンギンズのワンツーパンチを思い出させる.

 静かなる男,クロスビーは,毎年決まってオフシーズンには,夏風が清涼を運ぶノバスコシア州の地元で過ごすと言う.彼の巧みなスティック裁きと,美しいスケーティングで,ウィングスを翻弄してスタンリーカップを手にすれば,今年のオフは,好きなヨットにも乗れない,忙しい夏になるだろう.