資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)水野和男著「読了」 | 52歳で実践アーリーリタイア

52歳で実践アーリーリタイア

52歳で早期退職し、自分の興味あることについて、過去に考えたことを現代に振り返って検証し、今思ったことを未来で検証するため、ここに書き留めています。

資本利潤率が低下して投資をしても充分なリターンの得られない社会が到来しているという点は説得力があって面白いが、この社会が一時的なものなのか、それともある時代を形成するその発端となるのかは、16世紀のヨーロッパ社会との対比だけでは、説得力がないように感じます。著者がいくつか出している事例も同じ。例えば鉄の消費量は近代化のバロメーターといいながら、情報革命によって、経済成長のネタは既に変わっていて、鉄の供給過剰をもって説明するのはちょっとつらい。貿易の自由化は「ウイン・ウイン」の関係ではなく、先進地域から後進地域への資源の収奪による、一方通行的なものしか想定していないのも、どうかなと思います。などなど新しい時代がきたという仮説を検証するいくつかの事例に粗さが目立つ点、彼の説には疑念を感じざるをえません。


目の付け所は非常に面白いし、独創的なのでこの本は売れているのだろう。

でも、わたしレベルで読んでいてもちょっと疑問点満載で、藻谷さんの「デフレの正体」の時と同じようにきっと後で専門家から袋だたきにあうのではないかと余計な心配をしてしまう。

16世紀と比較してしまっているのが原因なのか、水野さんはマルサス的発想が強く、この社会は有限であって、その中で経済は回っているかのような主張をしていたりしてどうも説得力に欠けるが、例えば農業革命によって、農業生産力は爆発的に高まっただとか、シェールガスの発見や、直近の新興国の成長鈍化によって、原油安になったとか、今後可能性として想定される再生可能エネルギー資源への転換だとか、より安全な原子力発電の発明だとか、更に最近のインターネットオブシングスによる情報革命がこれから起きそうだとか、そういった今後も想定される限界突破的なイノベーションを想定していないので、このような論法になるのだろう。