「海の都の物語」を読んで | 52歳で実践アーリーリタイア

52歳で実践アーリーリタイア

52歳で早期退職し、自分の興味あることについて、過去に考えたことを現代に振り返って検証し、今思ったことを未来で検証するため、ここに書き留めています。

私の敬愛する竹田青嗣氏によれば、世の中の価値観は「真・善・美」に集約されるという。

この考えが正しいのであれば、歴史の場合、「善・悪」の価値観で評価するのではなく「真・偽」の価値観で認識すべき「事象」のように思う。

「情」と「理」の対立軸でいうならば、「情」で評価するのではなく、「理」で評価すべきなのではということ。

塩野女史の著書を通読していると、彼女の歴史観というのは、、常に「善・悪」や「情」でなく、「真・偽」及び「理」の視点で認識しようとする姿勢があり、非常に気に入っている。

しかしながら、塩野女史は、「善・悪」で評価はしないものの、「好き・嫌い」で評価しているところは読み手も共感できるところだ。本人も言及している「カエサル」好きはともかく、「ヴェネツィア」に対する彼女の愛情はこの著書を読みながらひしひしと読者に伝わってくる。

下巻の394ページより、
「栄枯盛衰が歴史の理ならば、せめてこのヴェネツィアのように、優雅に衰えたいものである。そして、ヴェネツィアが優雅に衰えられたのは、ヴェネツィアの死が、病気や試練をいく度も克服してきた末に自然死を迎える人間の、死に似ていたからではないだろうか。」

あらゆる苦難を国民の団結と知恵で切り抜けてきたヴェネツィア。私はこの「第13話 ヴィヴァルディの世紀」の最後に記されたこの文章を繰り返し読みながら、すっかりヴェネツィアの虜になってしまった。

★昨年訪れたヴェネツィア

2007年 船上からのヴェネツィア