東芝の不正会計について | あすくまblog

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東芝の不正会計問題については、私が日本の公認会計士になる前に起きた事件であり、当時話題になっていましたが、正直あまり内容を把握していなかったので、どの会計論点で問題があったのか調べてみました。

 

2008年度から2014年度第3四半期までの期間で、水増しされた利益額は累計1,562億円と言われていますが、下記4つの会計論点における不正会計だったと第三者員会から報告されています。

 

  1. インフラ事業の工事進行基準
  2. 映像事業の経費計上時期
  3. 半導体事業の在庫評価
  4. パソコン事業の循環取引

 

 

  1. インフラ事業の工事進行基準

 

工事進行基準は受注した工事の進捗度に合わせて、収益及び原価を期間計上する方法です。

 

工事原価総額を最初に過小に見積もることで、実際は工事原価総額が工事収益総額を超過して赤字になっているにも関わらず、計上が必要な工事損失引当金(将来見込まれる赤字額分)を計上していませんでした。

 

例えば20☓1年度に工事原価総額が100億円、工事収益総額が150億円であると見積ったとします。

これが、思ったよりも工事にお金がかかり、20☓2年度には工事原価総額が170億円だと見積りし直された場合は、工事収益総額との差額20億円(170億円 - 150億円)は20☓2年度の工事損失引当金及び損失として計上しなければなりません。

 

しかし、最初に工事原価総額を例えば70億円など過小に見積っておけば、その後ある程度原価が増えたとしても数字の上で工事収益総額を超えなければ損失計上しなくて済んでしまいます。

 

 

  2. 映像事業の経費計上時期

 

取引先に請求書の発行などを遅らせてもらうことにより、本来その四半期に計上しなければならない広告費や物流費などの経費を翌四半期に先送りしていました。

 

当然、その四半期の費用が減少すれば、利益額は大きくなります。

 

 

  3. 半導体事業の在庫評価

 

在庫に損失を認識していたにも関わらず、在庫の廃棄の時点まで評価損を計上していませんでした。

 

時間経過による陳腐化や在庫過多によって商品の価値が簿価よりも低下した場合には、商品評価損をその会計期間において計上しなければなりません。

しかし、商品を造り溜めし、需要予測を誤って在庫が滞留していたにも関わらず、廃棄処理を行い、廃棄時点までの会計期間において商品評価損を計上してなかったようです。

 

 

  4. パソコン事業の循環取引

 

東芝グループは仕入れたパソコン部品について台湾の組立会社に有償支給をしていましたが、その際に仕入れた部品メーカーに明かさないマスキング価格として、調達価格の4〜8倍の値段で支給を行っていました。

東芝はこの調達価格とマスキング価格の差額を製造原価のマイナスという形で利益計上していましたが、東芝は後に台湾の組立会社が製造した完成品を買い戻していたため、実質的には東芝の売上として計上して良いものではなかったということです。

 

当時はどうだったかわかりませんが、これは今では典型的な不正会計のスキームとして紹介されていることが多いです。

 

 

  東芝のガバナンスの問題

 

こうした不正会計は上層部からの圧力を受けて組織的に行われていたと言われています。

 

第三者委員会によると監査委員会による内部統制機能が働いていなかっ たと指摘されています。

当時、監査委員長は社内の元財務担当であり、3人の社外取締役が委員に含まれていましたが、財務や経理に十分な知見を有している社外取締役はいなかったと報告されています。

 

東芝は不正会計の問題を受けて、取締役の過半数を社外とすることに決定しました。

また、社外の取締役や専門家で構成され、再発防止策などを検討する「経営刷新委員会」を立ち上げました。

 

 

以上