グローバル・ミニマム課税とは?
グローバル・ミニマム課税とは、2021年10月に経済協力開発機構(OECD)およびG20が「BEPS包摂的枠組み」において国際的に合意した課税ルールです。
具体的には、年間総収入金額が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業に対しては、一定の適用除外を除く所得に最低税率15%以上の課税を確保するルールです。
日本でも2023年3月28日に「所得税法等の一部を改正する法律」が成立し、「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税に係る規定(グローバル・ミニマム課税制度)」が創設されました。
グローバル・ミニマム課税制度に基づく会計処理
まず、「グローバル・ミニマム課税制度」自体の適用は2024年4月1日以後開始する会計年度からとされています。
企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」の第44項では、決算日において国会で成立している税法に規定されている方法に基づいて税効果会計を適用することとされているため、グローバル・ミニマム課税制度の適用が見込まれる企業は、2023年3月28日以後に終了する連結会計年度の決算において、グローバル・ミニマム課税制度を前提として税効果会計を適用すべきか否かを検討する必要があります。
しかし、グローバル・ミニマム課税制度を前提とした税効果会計の適用については、実務上困難であるとの意見があり、企業会計基準委員会(ASBJ)は当面の間、特例的な取扱い(実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」)を公表しています。
具体的には、2023年3月28日以後に終了する連結会計年度の決算においても、税効果適用指針の定めに関わらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないこととされました。
グローバル・ミニマム課税制度に基づいた基準税率15%までの上乗せ税額(トップ・アップ税額)は、多国籍企業グループを構成する事業体等について実効税率が基準税率を下回る場合、純所得に対する基準税率に至るまでの税額を、親会社等が支払うものです。
このとき、トップ・アップ税額の課税の源泉となる純所得が生じる企業と、納税義務が生じる企業が相違することになり、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合においては、本来、税効果会計の適用の検討が必要になりますが、現時点では繰延税金資産・負債の金額を見直す必要があるか、追加的な一時差異を認識する必要があるかなど具体的な税効果会計の処理について不明確な点があり、実務上の負担もあることからグローバル・ミニマム課税制度の影響を会計処理に反映しないこととされました。
最新の動向
2024年1月24日、ASBJは、実務対応報告公開草案第68号(実務対応報告第44号の改正案)を公表しましたが、その内容としては、税効果会計の適用にあたってはグローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないこととする当面の取扱いを継続することを提案しています。
以上