ヤッちゃんは、留学のために、この3年間で300万円ためていた。
そういえば、
ヤッちゃんは、よくお弁当を持ってきていたし、
スタイルいいのに、そんなに目立つような服装もしていなかった。
それなのに、この3年間、私は何をしていたのだろう。
話題のランチレストランには行きつくし、
誘われた飲み会には、全部参加し、
週末は、テニスにスキーに一泊旅行。
海外旅行にも行った。
自分はやりたい事は、何なのか?
考えることもせずに、というか考える事を避け、
出されたケーキをすべて食べつくした脳みそは
カロリー過多で、機能停止状態だったのかもしれない。
とにかく、他の子はどう思ったか知らないけれど、
私にとって、ヤッちゃんの留学宣言は、衝撃的だった。
なぜなら、見ないようにして避けてきた、私にとっての
夢そのものだったから・・・
ヤッちゃんは、話してくれた。
両親には、もちろん大反対されているよ。
「留学して、その後どうするのよ?」
と親は聞く。
でもね、そんなの私にだってわからないよ。
とにかく行ってみたい!その気持ちしかわからない。
行って駄目だと思ったら、その時また考えるよ。
会社に勤め続けたって、
この後、どうなるかなんてわからないんだから、同じだよ。
反対されているから、両親からお金借りられないし、
だから自分でためたんだよ。
私は、大きくうなずいた。
でも、ぼぉ~っとした私だったから、自分の留学を決めるまでには、
この大きなうなずきを、あと数回も経験することになろうとは、
この時は、思いもよらなかった。
そして、ヤッちゃんは、今もアメリカ中西部で、
Nativeのような英語をしゃべり、現地の会社で働き、
マイペースの日々を過ごしている。
日本から持っていったのは、300万円だけ、
語学学校を経て、大学に編入、大学院も卒業。
お金無いから、大学も大学院も成績オールAをとって、奨学金で
まかなったらしい。
ヤッちゃんからたまに届いた絵葉書は、いつも、
スペースがもったいないと思っているかのように、
小さな字で埋め尽くされていた。
その意味は、私が米国に留学して初めてわかった。
そう、ヤッちゃんは、生活費をきりつめて、きりつめて、
絵葉書と切手を買っていた。