1    食事は口から入るもの

    親子代々伝わるものあり
「お父さんの病気は?」
「ただいま健在です」
「前にやった病気は?」
「ハイ、盲腸です。ほかはありません」
「そう、それじゃ、お母さんは?」
「健在で病気したことありません」
「きょうだいは?あなたは元気?」
「ハイ、今はありません。去年子宮筋腫の手術をはじめてやりました。妹が靱帯を切ったことがあります」
「そりゃ外傷やから心配ないわな」
「妹が三人いて、二人が盲腸の手術しました。あ、そうそう母が以前に気持ち悪いというので病院で診てもらったら、肝脂肪が悪いって言われましたん」
「そりゃ脂肪肝や」
「そうそう脂肪肝です。80歳前やから、そりゃ普通や言われました」
「それからお父さんのお父さん?」
「脳出血」
「お母さんのお父さん?」
「胃潰瘍。病院で手術して…。」
「お父さんのお母さん?」
「老衰です。」
「お母さんのお母さん?」
「産後の日立ちが悪くて、若くして死にました」

「あなたの過去の病気、あなた自身の病気?
今回は数年前からやね?」
「そうです。お腹が急にキリキリッて痛んできて⋯⋯、でもそれは娘時代からも時どきありましたから⋯⋯」
「いま、いくつや?」
「51歳ですから20歳ぐらいの頃かなあ、そう、胃痙攣をやりました。痛くなっていつの間にかおさまってしまっていたのが、その回数が多くなったのがこの2、3年ですね」
「あなたの食べもの、いま食べておるものは何んですか?」
「こはん好きです。パンやおうどんはあまり食べません。野菜はレンコンやゴボウが好きで、青いものはあまり好きではありません」
たけのこ
「筍は?」

「大好きで、とくに旬のやわらかいのは大好物」
「コーヒーは?」
「好きです。ミルクたっぷり入れて、お砂糖は入れません」
「果物は?」
「イチゴはあれば毎日頂きます。メロン、マンゴとかの外国ものはどうも⋯⋯。柿、リンゴ、ミカンはよく頂きますよ」
「お酒は」
「頂きません」
「香辛料」
「胡椒が好きで、あと唐辛子やなにかは好きではありません」
「⋯⋯⋯ウーン、お酒を除いてだいたぃ、病気になるもんばっかり好きやね」

「筍あかんのですか?」
「⋯⋯筍、果物、牛乳、香辛料、みんな病気のモトや」
「レンコンもですか?」
「レンコンは根のものやけど、少しぐらいはええけど、あなた青菜とらなあきません」
「どうも好きになれなくて⋯⋯」
「ずっと病院に入院しておって、血小板の抗体の検査をしておりますか?
自己抗体というて、
たとえばチブスの注射をすればチブス菌と闘う抗体ができますのや。それと同じで自分の血小
板を殺す抗体ができておるのかを調べましたかと聞いておるのですわ」
「⋯⋯あぁ、それはプラスの反応が出たと言われました。それで治療の方法は今のところない
とか、必要ないとかよく判りませんがそう言われました。脾臓が悪くなっているらしいとも言われました」
「脾臓が悪うなっているのではなく、自分の血小板を殺してしまうような抗体があるというこ
とが病気ということなんや」
違反はあきまへんで
K婦長、カルテ持って二階から木下さん(54歳、女性)を連れて降りてくる。
「先生、木下さん湿疹が体全体にでてしまってかゆくてたまらん言うてますん」
「ちょっと待っててください。(血小板)カルテ診せて。ええと前回は12月25日やね、ちょうどひと月や。木下さん、あんた違反(食事)しましたやろ」
「ハア、お正月でつぃお餅やおせちを少し食べてしもうて⋯⋯」
暮れに言いましたやろ。お正月の御節などごちそう食べたらあかんでって!!最治療の食事を少しずつゆるやかにしてあげるようにしておるのや。先まわりして自分でやったらあかんのや」

「……先生、とてもかゆくてたまりませんのや。何んでも塗りぐすりありませんやろか」
「何んでも気のすむもの塗ったらええのや。そのかゆみは内側から出ておるので外から何やったって
効きはしませんのや。気休めだけやから何塗ってもよろしい」
「そんな、冷たいこと言わんといてください。耐えられないくらいかゆいのですわ」
「そんなら今すぐヒマシ油60gここで飲んだらええ」
「そんなんで効くんですか」
「ああ、よう効く。体の中にあるもの、全部外へ出してしまうことが先決や。60g飲んで三、四時間したらきれいに出ますがな」
「⋯⋯⋯先生、わたし四時の電車で帰らななりませんがな」

「あんたとこ、どこやったかな?」
「和歌山の奥です」
「そうか、それやったら、いつこんど来ますか」
「かゆいの止めてくれるならあさってでも来ます」
「そやったらあさってここで飲もう。なるべく早く来て、点滴やって体力つけて、それでヒマシ油飲みましょ。ヒマシ油は栄養分も全部出してしまうから体力が弱まりますからね。それで4日間絶食や。そやから4日間通って点滴すればええ。まったく何も食べんという事やのうて、
青菜のジュースを一日3〜4回、一回に200〜300cc飲むようにすればええ。お腹すいたら青菜のサラダ。蛋白質や肉類はとらないようにしてバター、べに花油たっぷり使って食べなはれ。それをやれば湿疹は急速になくなる。ヒマシ油使わなんだら、まず三カ月はかかるわな。治るまでには時間がかかる。一からやり直さなあかんことになるわけやから。だから自分で勝手に食事を拡げたらあかんのや。恐ろしいことようわかったやろ。
三カ月耐えられるんやったらそれでええ。無理でっしゃろ。だったら4日、通いなはれ。それで治りますがな。
この治療を進めている時、違反するとバイキンを元気づけさせてしまうのや。ヨレヨレになっていたものがほんのわずかな食料、つまり糖分や。これが入ってくれば元気百倍になって大あばれするわけや」

「四日続けないとあきませんの?」
絶食やから体がもたん。それを点滴でカバーするのや。たまらんかゆさなんやろ?」
「そうです。仕事持ってますので四日間休むというのは⋯⋯」
それやったら三カ月やね。かゆさに絶えながら時間かけて治すんやね。
いいかね、木下さん、病気になったいうは、体をぶち壊してしまったということや。治しは一度は効くけれど、二度、三度となったら治せるかどうかわからんのや。生命がかかってるんやで。生命をとるか?仕事をとるか?というところにあなたはおるのやで。仕事があなたの生命を保証してくれるいうのやったら仕事をとるのもええやろう。医者としてあなたのそのかゆみを三カ月も待っておれんのや。
今すぐ治したいと思ってるのや⋯⋯」
「⋯⋯わかりました。何とか都合つけて来ますわ。今日はこれで帰ります」
「食事、違反しないようにパン、うどんもやめなはれ。バターとべに花、青菜をとること忘れ
ないでね。待っておるからね⋯⋯」
これが抗体いうもんや
「ところで血小板やったね⋯⋯。今の木下さん、小学校の先生なんや。ここへ来るのに半日がかりや。時間都合つけるのむずかしぃのはようわかっとるのや。山の小さな学校やし、先生が休むということ大変なのはようわかる。しかしいのち、生命が掛かっておるのや。あの先生C型耶炎ともう一つ病気あるのにようがんばっておるんや。だから生命助けたい。生命の大切さを先生日身で考え、子どもたちに教えんとあかんのや。四日学校をあけることと、
かゆみ・痛みと闘いながら三カ月子どもに接していることと、どちらが子どもにとって良い結果をもた
らすかということやねん。
ええと、血小板やね。今のお話聞いておりましたか?」
『ハイ、食事のことがよくわかりました』
「わたしの治爆法は免疫療法いいますねん。自分の体の中にできてしまった抗体、これが病気そのものや。自分の体の中にある力でこの抗体をやっつけてしまうという方法や。あなたの血小板を殺してしまっている抗体をやっつける働き、それを育てるのがわたしの方法や。
この研究をわたしは四〇年米続けておるけど、この方法でやっている医者が他におらなんだのや。
最近ようやくこれに目をつけて抗原抗体反応の治療法が広まりそうなんや。ええことや。
抗体は琳巴球が作るもんや。自分を攻撃する変な抗体を作らんようにするのがわたしの方法や。
糖分が入りすぎると琳巴球のレセプターが馬鹿になって大切な血小板を攻撃してしまうのやね。
抗体の食料が糖分やということを見付けた。抗体の食料は量やのうて質や。糖分が入ったか入らないかでその活動に変化が起きる。呼吸も絶えだえだったのが一気に元気になりよるわけや。
だから抗体に食料を送ってはあかんのや。これに違反したらあかんということや。
淋巴球の食料が青菜・バター・べに花油・天然塩たっぷり入った大量の水や。これらが元気が出るモトや。
抗体が他に散らばらないように、あるいはやっつけてしまう。それがわたしの治療法なんよ。
やってみますか?」
「ハイ、やります」
「あなたのように重い病気の人ほどわたしの治療法は効果をあげます。それは重い病気の人ほ
ど生命にかかわることを知っているからです。
軽い人はまだそれが大変なことだと解っていないのです。軽い人ほど、治りがおそい。現にわたしの
ところへ三〇年近く来ている人がいます。
チョコチョコ違反して別のお医者さんのところへ行ったり、またこちらへ来たりして、まあまあなので⋯⋯という人もおりますわ。
私が良いと言うまで違反しないでおれば、あなたの病気は治ります。治します!!」
グループ学習会や
二階から降りてくる。
順番待ちで席に着く。
先着の人が四人いる。
先生と対面している人がやり取りをしている。これが一番の患者。
おわるとA先生の方に移る。ここで痛い痛い注射がある。重い病気(癌・膠原病・C型肝炎など難病指定)の人は一回太ももに注射。後一時間後に反対側の太ももに注射。以前はM先生が一人でやっていたが現在は月・水はA先生(女医)、木は先生(女医)
金曜日はT先生(男医)。土曜日は東京から4年間朝来て夜帰る先生(男医)。

先生の指示で注射液の混合(三種・二種)と量の加減が決定される。
注射は太もも、お尻、背中、横腹後。男・女によって異なる。なにせ他の患者のいるところでの注射である。はじめての人はおどろく。
二番目の患者はM先生の脇の椅子。三番目、四番
は二階の点滴用のベッド(JR夜行B寝台と同じ大きさのもの)に並ぶ。人数が増えると五番もここにすわる。六番、七番まで診察室内に入れる。
これで一杯。Kさんは隅で検尿器にかけてデーターを取っている。最初に来てまずKさんから紙コップをもらって診察室横のトイレで尿を取る。診察待ちの人の前を横切って往復し、K婦長に尿コップを渡して二階に上がる。レギュラーの人は月初めに二階で心電図、血液採取(各種データー用)をする。
毎回行うのは血圧測定である。
それがおわってから元気がでる点滴である。
山田さんはこの日約40分のコース。食事違反によって左目水晶体表面に出血。そのための止血剤入りの点滴となりました。
 ●止血剤について――血友病でもほぼ同じですが、血液凝固因子であるトロンビン、トランサミンを投与します。
それがおわって下に降りてきた。
彼女は三回目の通院、一回目でおどろいたのは先生がヘビースモーカーであること。
しかも両切りピース(タール24mg ニコチン2.4mg)という強烈なものです。
今、アメリカのロスアンゼルスの料理店では全面喫煙禁止。それを破ったお店は罰金どころ
か営業禁止。日本でも駅の構内・ホームでもごく限られた所でしか喫えない。飛行機では日本航空国内線は全便禁止。ANAとJASは後席の一部で0K
すべては「タバコが肺癌の主犯」ということになっているからです。
山田さんはこのこととM先生のタバコについて聞いてみようと思っていました。
「⋯⋯.ハイ、血糖値は前回より(月二回)、より80に近くなって来てますね。食養生のおかげです。食事を守ってやっておればもっと下がり元気になります。きちんと守っている結果です。血管炎の注射も非常に吸収がいいから早く治ります。ハイ、注射をしてもらって下さい」
これで山田さんはH先生の方に移る。H先生は毎週金曜日東京から通ってこられるG医大放射線科の先生です(現在は土曜日)。
わたしの『糖尿病からの生還』を読まれてM先生に教えを乞いに来られた先生です。現在三〇歳を過ぎたばかりの研究熱心な方です。
H先生に注射をしてもらいながらM先生に話しかける。痛い痛い注射から気をそらす意味あいもあります。
「あの先生、タバコは肺癌の犯人じゃないのでしょうか?」
「よう聞かれます。どのお医者に聞いても肺癌の犯人はタバコ説になっていますからね。わたしだけとは言わないが、肺癌の主犯はタバコではないといっている医者はほんのわずかです」
「ごはんは駄目というと食糧庁などは困りますね。お砂糖や牛乳は駄目というと砂糖会社や牛
乳会社は困りますね。日本タバコ会社はよろこびますね」
肺癌の犯人はタバコやない
タバコではね。でも食塩はダメだと言ってるからJTは半分半分やね。タバコはコロンブスがアメリカを発見した時に原住民が喫っているのをみておどろいたのです。自分たちもそこで喫ってみた。何ともいえぬ感触を受けたのです。これを持ち帰ったところまたたくまにヨーロッパ中に広まり、それがやがて日本へと渡ってきた。日本では独得のキセルタバコに変化した。
肺癌はずっとなかったのですよ。肺癌が発生しはじめたのは自動車が出てきてからやね。排
気ガスが原因、それにブレーキをふんだ時に飛び散る石綿の粉(アスファルト道路)、これが主犯なわけね。それとサウナやね」
「先生からお話をお聞きしてからわたしはサウナには行ってません。わたしの母は九〇歳すぎ
て元気でタバコを喫ってました。戦争中も辞書の紙で葉を巻いて紙巻たばこを作り、よく喫っていました」
「スウェーデンでもサウナ、それも乾いたサウナと肺癌の関係についてのデーターがあるんよ。
トルコ風呂というと日本では風俗風呂のことやけど、本当のトルコ風呂は湯気がたっぷりのお風呂。これはえぇの。乾いた空気が何んといっても肺癌と関係あるんやね」
「先生のようにタバコは肺癌に関係ないなんておっしゃってたら世間から抗議をうけますよ」
「そりゃ前から言われておるんやけど⋯⋯。事実やもんね。アフリカで自動車のまったく走っていない地方では肺癌はない⋯⋯。自動車が通るようになった土地は肺癌が急にふえているわけなんよ。日本でも胃癌を抜いて肺癌が第一位になったわけだから、タバコが原因の大合唱なんや。
よく調べもしないでタバコはだめ、タバコは恐ろしい言うのんは、真実をよく見極めるという事から
逸してしまうことになるんやね」
「ホンマにそうですねえ、先生の治療法にしても、他のお医者さんにお話すると、考えられな
いとか、タマタマあなたに合ったのでよくなったのでしょうねって言われます。とっても悔しいと思うんです」
「タバコにしてもわたしの治療法にしても、まあ百年先になって判ってもらえることやしなぁ⋯⋯。
あんたら、みんな未来の治療を受けているわけやから未来人や。自分の体の中から生まれた病気は自分の体の中の力で治すことができる。その方法をわたしは見つけただけの話や。
説明がつかんわけや、現代の医学では⋯⋯。でもそれで患者さんが治ればええだけの話や」
「でも、悔しいですわ。お医者さんが関心持たないなんて残念ですわ」
「そういうこと世の中にはよーけいあるやないか」
「先生、80歳すぎたら医者やめるなんて言わんといて下さい。死ぬまでめんどうみて下さいな」
「きびしいこと言うなあ。⋯⋯早よう帰りなはれ」
M先生と患者は自分の病気以外にあれこれ世間話をしていきます。
コーヒー、お茶、紅茶、お水、それぞれ勝手に飲みたいものを飲んで、持ってきたパンやお
せんべいなど「これは合格や。でもたくさん食べんように」とか、「これ水あめ入っとるで。
このパル・スウィートはあかんわ。粉末は駄目でっせ。薬局での錠剤これは大丈夫や。どうし
ても鯛の兜煮食べたい時はこれ五つぶぐらい入れたら甘くおいしいものになるわな。 あ、事務長さんあと一人やから、三〇分ほどやりますか?」
「久しぶりですね。やりまひょ」
長ベッドの下に碁盤が置いてあります。以前は患者と対応しながら対局をしてしたとしうしあわせな時もあった。今はまずない。
「結構遊んでますよ。土曜日はプールで家内とようく泳いでおりますがな。スケートもやりますよ」
「先生、駅の階段二つ降りはやめて下さいな。ハラハラしますがな」とK婦長さん。
「大丈夫ですがな。どないしてみなさん、でけへんのかなあ」
「患者さん方、みなさん、マネしたらあきませんよ。ハイ、高森さんおクスリ、木田さんのは
奥さんの分もね。違反したなと思ったら二倍の量にして飲んで下さいね。一気に出すこと。家
でヒマシ油使うと養分もぜんぶ体外に出してしまうから、ここでだけにして下さい。⋯⋯いいですね。⋯⋯ハイ、サヨナラ」
「私の方法はやね、大きく分けて三つと一つや。
これ、すべて教科書通りの方法とは180度違いますねんや。今までやっていたやり方で治らへんかったわけや。同じ事やその延長線のようなことやってたんでは駄目。そこで患者さんは三つのトライアンルでいくわけや
①飲むもの ②食べるもの ③運動の方法
それに医者のわたしの治療が加わる。
その割合は①〜③が90%、わたしが10%や。合わせて一つや。この四つが合体すれば病気は治る。治らないまでも限りなくよくなるだけの話や。
あなたやります❓
やるなら明日ではのうて今日からやりなはれ。効果は4日後に出てくるわけやから、すぐ判る」
これはM先生の患者と最初のやりとりです。
「口を大きく開けて舌を出しなはれ」
「⋯⋯⋯こうですか⋯⋯」
「ハイ、自分で鏡をみなさい。舌の付け根のところや。円になってますでしょう、五〇円玉位
の大きさ。ハッキリまわりと色が違ってますな。わたしのを見ましょう」
医者が自分の舌を見せるという話は他に聞きません。
「あなたのとわたしのでは違いますやろ。わたしは今年81歳。食べものと体が合ってます。
あなたは合っておらへんからこうなってます。あなたは病人です。わたしは健康です。食べものと体が合えば元気になるだけの話です。あなたが健康になるための今までの方法ではあかんかったわけやから、わたしの方法でやってみるというなら診ます。治しますがな。ただし従来の方法と一緒にやるのはあきません。従来法でやるか、わたしのでやるかどちらかに決めへんと体が困りますがな。体にはハッキリとこれでやりおるんよと宣言せなあきまへん」
「⋯⋯先生のでひとつお願いします」