多くの日本人がそうだと思いますが、僕もカレーが大好きです。
ラーメンと並んで日本人のソールフードとも言えるカレーですが、その魅力は、なんと言っても懐の深さだと思います。
“ココイチ”のメニューを見てもわかる通り、揚げ物・野菜・シーフード、果ては納豆に至るまで、なにをトッピングしてもカレーはカレー。
しかも、トッピング自体を活かしながら、カレー自体の美味しさをも増していくのです。

この魅惑の食べ物の発祥の地は、ご存知の通り、インドです。
学生時代、僕はカレーを極めるために、インドに渡りました。
もちろんカレーを食べるためだけにインドに行ったわけではないのですが、インド旅行をするにあたり、その辺りの趣味が理解できない友人たちの『コイツやっぱり変人だな』という視線をかわすため、なんらかのネタ的な理由が必要だったのです。
(ちなみに、中国旅行をした時は、『泰山天狼拳をマスターする』という理由を触れ回りました。)

インドに降り立った僕は、もちろんカレーを食べました。
約1ヶ月間インドに滞在したのですが、来る日も来る日も、僕はカレーを食べ続けました。
正確に言うと、カレーを食べ続けねばなりませんでした。
インドに行ったことがある人ならわかると思いますが、インドのカレーは日本のそれとは似て非なるものです。
便宜上インドのカレーをここではカリーと呼びますが、カリーは基本的にサラサラで、日本のカレーのように粘度はありません。
日本のカレーのように、長時間煮込んだりしません。
乱暴に言ってしまうと、カリーは、カレーなどという1メニューではなく、日本でいえば和食みたいなものなのです。
醤油や味噌のように、インドでは料理にガラムマサラという混合香辛料を加えます。
永い歴史を誇る国ですからいろいろ料理ごとに違いがあるのでしょうが、僕レベルの貧しい舌では、ガラムマサラが入った料理=カリーとなり、結果として毎日カリーを食べ続けるのと同じように感じてしまったのです。
1週間くらいで、すっかりガラムマサラ=カリーに参ってしまいました。
途中までは美味しそうな料理でも、奴らは最後にやっぱりガラムマサラを加えるのです。
『またカリーかい!』 
何度も心の中でそう叫びました。
毎夜寝る前、日記帳の裏に帰国したら食べるものを書き連ねました。
豚の生姜焼き、豚汁、ブリの照り焼き、冷や奴、カツ丼、納豆ご飯…。
『白飯食いたい…』
インド旅行自体は最高にエキサイティングでしたが、あんなに日本食が恋しくなったことは後にも先にもありません。

帰国した僕が一番最初に食べたもの、それはカレーです。
当時ほとんど自炊したことがなかったのですが、自分でカレーを作りました。
タマネギを茶色くなるまで炒め、人参・鶏肉・ジャガイモを加えて、じっくりコトコト煮込みました。
ご飯を3合炊き、福神漬けをたっぷり添えていただきました。
うまかった。
なんの変哲もない普通のカレーでしたが、本当にうまかったです。
『カレー最高!』
思わず叫んでしまいました。

インド人が日本のカレーを食べたら、一体どういう風に感じるのでしょうか。


余談ですが、カレーを食べた彼女がトイレで大をした後、僕のとまったく同じ臭いがしていました。
トイレを出た僕はなぜか彼女がたまらなく愛しくなり、手を洗うのも忘れ、彼女を思い切り抱きしめました。

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今日の映画:食神 チャウ・シンチー監督
      『香港映画にはかなわない』そう思わせるパワーがあります。