正弦の加法定理

を証明します。微分を使います。

 

<証明>

のとき、加法定理の右辺は

と書ける。

であるから、Fはαについて定数関数であり、

これは任意のcに対して成り立つから、示された。

数学の証明と、音楽の1曲を比較してみます。

音楽では、同じメロディーが何度も出てきます。同じメロディーが二度と出てこなかったら、それは変わった曲です。数学の証明では、同じ何かが何度も出てくることは必須ではありません。証明する者の意志で同じことを繰り返すこともできません。

音楽では繰り返しは大きな意味があると思います。「Aメロ、Bメロ、さび、Aメロ」とか「提示部、展開部、再現部」とか、最初のメロディが戻ってくることで得られる感動や安心感は、音楽の構造に不可欠な要素です。こうした種類の感動や安心感を、証明から感じることはないと思います。

数学も音楽も、構造を大切にする点は共通しますが、構造の作り方や構造を成立させる論理は、ずいぶん異なります。

ユークリッドの互除法のもとになる、最大公約数の性質を証明します。

とても原始的です。

割り算(除)じゃなく引き算(差)です。

それどころか、「互」ですらない? 互除法の“互”って何なんでしょうか??

 

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【定理】

A,B,Cは整数とする。

A-B=Cのとき,AとBの最大公約数は、BとCの最大公約数と一致する。

 

<証明>

AとBの最大公約数をG、BとCの最大公約数とHとする。

 

A=Ga,B=Gb(a,bは整数)と表せるから、

C=A-B=G(a-b)となり、GはCの約数である。

よって、GはBとCの公約数である。

Hの最大性より、G≦H・・・①

 

B=Hm,C=Hn(m,nは整数)と表せるから、

A=B+C=H(m+n)となり、HはAの約数である。

よって、HはAとBの公約数である。

Gの最大性より、G≧H・・・②

 

①②より、G=H (証明おわり)

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この定理からすぐ導かれることを系として挙げておきます。

 

【系1】

A+B=Cのとき、AとBの最大公約数は、BとCの最大公約数と一致する。

 

Bは整数だから、代わりに-Bにすればよい。引いてることにあまり意味はなく、足してもいいということ。

 

【系2】

A+B=Cのとき、AとBの最大公約数は、AとCの最大公約数と一致する。

 

系1で、条件はAとBについて対称だから、AとBを入れ替えればよい。

したがって、A-B=CでもA=B+CでもA-C=Bでもよいのです。

どうせなら左辺にまとめて、

 

【系3】

A+B+C=0のとき、

AとBの最大公約数、BとCの最大公約数、CとAの最大公約数はすべて等しい。

 

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では、4つにしたらどうか?

 

【系?】

A+B+C+D=0のとき、

AとBの最大公約数、AとCの最大公約数、AとDの最大公約数、BとCの最大公約数、BとDの最大公約数、CとDの最大公約数はすべて等しい?

 

これは、

 

残念ながら無理です。

 

反例は簡単に作れます。

4-2+1-3=0

4と2の最大公約数は2だが、他のペアでは最大公約数は1になってしまう。

 

系3で、左辺の項数「3」は特別なのです。

(おわり)