数学の証明と、音楽の1曲を比較してみます。

音楽では、同じメロディーが何度も出てきます。同じメロディーが二度と出てこなかったら、それは変わった曲です。数学の証明では、同じ何かが何度も出てくることは必須ではありません。証明する者の意志で同じことを繰り返すこともできません。

音楽では繰り返しは大きな意味があると思います。「Aメロ、Bメロ、さび、Aメロ」とか「提示部、展開部、再現部」とか、最初のメロディが戻ってくることで得られる感動や安心感は、音楽の構造に不可欠な要素です。こうした種類の感動や安心感を、証明から感じることはないと思います。

数学も音楽も、構造を大切にする点は共通しますが、構造の作り方や構造を成立させる論理は、ずいぶん異なります。