次の問題と解答を見てみてください。
問題

を計算せよ。
解答例

この解答は間違っていると思いますか。
この解答の「3行目、4行目は数学的に間違っているから書いてはならない」という人がいるそうです。
3行目、4行目というのは、limがはずれて、x=2を代入した
場面です。
また別の人は「教科書には確かに、3行目、4行目にあたる式が書いていない。微妙な問題である」と言っていました。
手元の(筆者が高校のとき使っていた)教科書を見てみると、「関数の極限」で初めて“分母=0”が登場するところでは、確かに途中式(3行目、4行目にあたる式)を書かず、limの式のあとにはすぐ答えが書かれています。
しかし、よく見ると、もう少し先の

のような問題では、

という解答例が載っています。
したがって、教科書にも途中式は書いてあります。
3行目、4行目のような途中式を書くことが数学的に間違っているというのはおかしい。
以下、おかしいと思う根拠を述べます。
【 等号「=」の性質 】

を認めない人はいないでしょう。
今、仮に

であり、かつ

であるとしてみましょう。
簡単のため


とおくと、上の主張は
かつ 
と書けます。
ところが、明らかに、

なので、等号の性質(1)より
となります。
これと
に等号の性質(2)を使うと、

となります。
こうして、

と矛盾する結果が出ました。
これは、
を認める限り、「等号の性質」が成り立たないことを意味します。
(「等号の性質」を仮定して、A≠Cを使いながら論証を進めると矛盾。〔背理法〕)
「途中式を書くことが数学的に間違っている」という主張は、巡り巡って、等式の性質(対称律と推移律の少なくとも一方)が間違っているという結論を導いてしまうのです。
「途中式を書くことは“教育的な配慮”から避けるべきである」という主張なら、それは教育の専門家が言うなら正しいのだと思いますが、「数学的に間違っている」という主張は全く受け入れられないものです。
また、たとえ教育的配慮であったとしても、「間違い」などと言いきってしまうのは、よく考える生徒にとっては混乱の原因になるのではないでしょうか。
上で見たように、「等号の性質」と相いれないわけですから、そうして教えられた生徒が(極限に伴う)等号に不安や疑念をもたないか心配です。

もしかすると、「x=2を代入」という考え方が嫌われているのかもしれません。
しかし、代入しないならばどうやって極限を求めるのでしょうか。
この問題は、
「x=2で定義されない関数の極限」を、分母を払って、「x=2で連続な関数の極限」に帰着することで、極限を求めているのではないでしょうか。x=2で連続なら代入して差し支えないはずです。

「途中式を書くのは間違い」だとするとおかしなことが起こる、と言うために背理法を使っていますが、実際はもっと簡単な話です。
「等号の性質」よりA=C
で終わりです。A=Cが示されたということは自動的に「A≠Cは偽」です。
問題
を計算せよ。
解答例
この解答は間違っていると思いますか。
この解答の「3行目、4行目は数学的に間違っているから書いてはならない」という人がいるそうです。
3行目、4行目というのは、limがはずれて、x=2を代入した
場面です。また別の人は「教科書には確かに、3行目、4行目にあたる式が書いていない。微妙な問題である」と言っていました。
手元の(筆者が高校のとき使っていた)教科書を見てみると、「関数の極限」で初めて“分母=0”が登場するところでは、確かに途中式(3行目、4行目にあたる式)を書かず、limの式のあとにはすぐ答えが書かれています。
しかし、よく見ると、もう少し先の
のような問題では、
という解答例が載っています。
したがって、教科書にも途中式は書いてあります。
3行目、4行目のような途中式を書くことが数学的に間違っているというのはおかしい。
以下、おかしいと思う根拠を述べます。
【 等号「=」の性質 】
を認めない人はいないでしょう。
今、仮に
であり、かつ
であるとしてみましょう。
簡単のため
とおくと、上の主張は
と書けます。
ところが、明らかに、
なので、等号の性質(1)より
となります。
これと
となります。
こうして、
と矛盾する結果が出ました。
これは、
(「等号の性質」を仮定して、A≠Cを使いながら論証を進めると矛盾。〔背理法〕)

「途中式を書くことが数学的に間違っている」という主張は、巡り巡って、等式の性質(対称律と推移律の少なくとも一方)が間違っているという結論を導いてしまうのです。
「途中式を書くことは“教育的な配慮”から避けるべきである」という主張なら、それは教育の専門家が言うなら正しいのだと思いますが、「数学的に間違っている」という主張は全く受け入れられないものです。
また、たとえ教育的配慮であったとしても、「間違い」などと言いきってしまうのは、よく考える生徒にとっては混乱の原因になるのではないでしょうか。
上で見たように、「等号の性質」と相いれないわけですから、そうして教えられた生徒が(極限に伴う)等号に不安や疑念をもたないか心配です。

もしかすると、「x=2を代入」という考え方が嫌われているのかもしれません。
しかし、代入しないならばどうやって極限を求めるのでしょうか。
この問題は、
「x=2で定義されない関数の極限」を、分母を払って、「x=2で連続な関数の極限」に帰着することで、極限を求めているのではないでしょうか。x=2で連続なら代入して差し支えないはずです。

「途中式を書くのは間違い」だとするとおかしなことが起こる、と言うために背理法を使っていますが、実際はもっと簡単な話です。
「等号の性質」よりA=C
で終わりです。A=Cが示されたということは自動的に「A≠Cは偽」です。