カノンとは、輪唱のことである。
すなわち『かえるのうた』である。
カノンという言葉をどこで知るかというと、最近は友だちの名前ということもあるかもしれないが、筆者は「パッヘルベルのカノン」で知った。小学生くらいの時だっただろうか。
パッヘルベルというのは、ご存知の人が多いでしょうが人の名前で、バッハ本人だったかお兄さんだったかの先生もしていた人である。オルガニストだったと思う。
カノンとは何か当時の筆者が辞書で調べてみると「キャノン砲」とある。これは違う。
さらに調べると「模倣しながら進む対位法的な曲」といったことが書いてある。
模倣も聴いたことがない言葉だったので調べると、どうやら「真似」をすることらしい。音楽用語としては「対位法」という分野で使われる言葉らしい。
この時点で「カノン」とは『かえるのうた』のことではないかと思うが、「対位法」と『かえるのうた』が結びつかず、念のため図書館で音楽の本を借りる。どうやら「追いかっけ」のことらしい。ますます『かえるのうた』であることは明らかだが、選んだ本が悪かったのかカノンのところに「例えば『かえるのうた』のこと」などとは書いていない。疑いは消えない。
そんなとき、本物のパッヘルベルの『カノン』を聴く機会に恵まれた。
聴いてみると、『かえるのうた』ではない!
『かえるのうた』のあの次々に声部が入る混沌がない。後の方でこそ複雑化するが、追いかけっこしているようには思えない。どういうことなのだろう?
謎が深まるなか、バッハの『小フーガ』という曲に出会った。
「フーガ」といえば前に読んだ本に「カノン」の仲間として載っていた。「フーガ」も「模倣」を使うが“厳密な”対位法に基づいているそうだ。詳しいことはわからないが「カノン」が子どもで「フーガ」が大人みたいなものだろうと思っていた。
『小フーガ』も『かえるのうた』ではなかった。しかし、しばらく聴いたところで、低音で最初のメロディが現れた。聴き直してみるとかなり時間を隔ててはいるものの、最初のメロディが次々に重ねられていくのがわかった。追いかけ始めるのが遅いのだ。
二人の間が非常に遠い追いかけっこだった。後の方ではもっとあからさまな追いかけっこになるが。
そうして、『カノン』もいまひとつ確証をもてないものの、時間をおいて追いかけているらしいことがわかった。
もっと他にカノンかフーガはないか。
『トッカータとフーガ』というのがあった。これは有名。
おなじみのメロディではじまるが、なかなか追いかけない。実はもう追いかけているのでは?本によるとカノンは“バカ正直”に真似をするらしい。ということは裏を返せば、フーガはそっくりそのままは真似をしていないかもしれない。そう考えると、メロディを変形して追いかけさせてるような気がしなくもない。
そんなことを考えているうちに、一旦曲が静かになり、こまごました感じで再開した。その後もしばらく聴いていたが追いかけているかはよくわからなかった。
CDの解説を読んで見ると、最初の○分○秒まではトッカータでこれは模倣しない。追いかけないのは当たり前である。こまごましたところからがフーガだったらしい。もう一度フーガのところを聴いてみると一つ目の追いかけくらいはなんとなくわかったが、他はいまいちわからないし『小フーガ』と違って難解な曲に思えた。
以上は筆者の「カノン」に関する体験である。筆者以外にも「カノン」と『かえるのうた』、「輪唱」のギャップに悩む子どもは結構いるのではないだろうか。
そんな子どものために、筆者が知っている追いかけがわかりやすいカノンを紹介する。少しでもカノンを理解する助けになれば幸いである。
知識不足により、いわゆるクラシック音楽の限られた分野からしか例を挙げられなかったが、ほかのジャンルでも良いカノンがあるかもしれない。
まず大変わかりやすいものとして、
F. ジェミニアーニ / 合奏協奏曲作品3 第2番 第4楽章
(F. Geminiani / Concerto Grosso Op.3 No.2)
がある。あまり有名な曲ではないので入手は難しいかもしれない。CDは大きな専門店でないと置いてないだろう。
注意深く聞けば最初のフレーズはまるまる正確に追いかけていることがわかる。通常はメロディがあってそれを使ってカノンにするのだと思うが、この曲では、まず追いかけがあって、それが結果的にメロディになっているような印象である。全体的にコンピュータでエコーをかけたような曲になっている。
ジェミニアーニの合奏協奏曲はたくさんあり、これは作品3という曲集の中の第2番である。第2番には4つの楽章(本でいうところの「章」)があり、そのうちの第4楽章を薦める。
ジェミニアーニよりは難しいが、手に入りやすいものとして
J. S. バッハ / ブランデンブルク協奏曲 第6番 第1楽章
(J. S. Bach / Brandenburg Concerto No.6)
がある。これは有名で、地元のCD屋にもあるかもしれない。少なくともレンタルCD屋にはある。
いろいろな楽器が使われていて面白い。バイオリンがおらず、ビオラが最高音という変わった編成である。バスが同音反復でズンズンやっているのもこの曲の魅力であると思う。
演奏者本人の投稿のようなので、著作権の問題はないと考え、YoutubeのURLを載せておく。
https://www.youtube.com/watch?v=-rNQCrfqdfk
この2つはバロック音楽と呼ばれ、フーガなど対位法が盛んに用いられた時代の音楽である。もう少し後の時代のものとして
L. v. ベートーヴェン / チェロ・ソナタ 第5番 第3楽章
(L. v. Beethoven / Cello sonata No.5)
を挙げる。最初そっくりそのまま追いかけているのがわかる。その後も律義に割と忠実に追いかける場面がしばしば見られる。チェロとピアノで演奏される曲だが、ピアノからは「両手あるんだぞ」という声が聞こえてきそう。
最後に、はじめから終りまでそっくりそのまま追いかける曲を紹介する。実はそういうものはむしろ少数派である。
G. Ph. テレマン / カノニック・ソナタ
(G. Ph. Telemann / Canonic sonata)
カノン的なソナタである。たくさん種類があるが、その内のひとつを演奏しているYoutubeのURLを載せておく。ホールが投稿しているらしく、違法投稿ではないはず。
https://www.youtube.com/watch?v=lWkEZ9wLgBA
そっくりそのままというのは一見すごいようだが、聴いてみると少し退屈。テレマンもバロックの人である。
すなわち『かえるのうた』である。
カノンという言葉をどこで知るかというと、最近は友だちの名前ということもあるかもしれないが、筆者は「パッヘルベルのカノン」で知った。小学生くらいの時だっただろうか。
パッヘルベルというのは、ご存知の人が多いでしょうが人の名前で、バッハ本人だったかお兄さんだったかの先生もしていた人である。オルガニストだったと思う。
カノンとは何か当時の筆者が辞書で調べてみると「キャノン砲」とある。これは違う。
さらに調べると「模倣しながら進む対位法的な曲」といったことが書いてある。
模倣も聴いたことがない言葉だったので調べると、どうやら「真似」をすることらしい。音楽用語としては「対位法」という分野で使われる言葉らしい。
この時点で「カノン」とは『かえるのうた』のことではないかと思うが、「対位法」と『かえるのうた』が結びつかず、念のため図書館で音楽の本を借りる。どうやら「追いかっけ」のことらしい。ますます『かえるのうた』であることは明らかだが、選んだ本が悪かったのかカノンのところに「例えば『かえるのうた』のこと」などとは書いていない。疑いは消えない。
そんなとき、本物のパッヘルベルの『カノン』を聴く機会に恵まれた。
聴いてみると、『かえるのうた』ではない!
『かえるのうた』のあの次々に声部が入る混沌がない。後の方でこそ複雑化するが、追いかけっこしているようには思えない。どういうことなのだろう?
謎が深まるなか、バッハの『小フーガ』という曲に出会った。
「フーガ」といえば前に読んだ本に「カノン」の仲間として載っていた。「フーガ」も「模倣」を使うが“厳密な”対位法に基づいているそうだ。詳しいことはわからないが「カノン」が子どもで「フーガ」が大人みたいなものだろうと思っていた。
『小フーガ』も『かえるのうた』ではなかった。しかし、しばらく聴いたところで、低音で最初のメロディが現れた。聴き直してみるとかなり時間を隔ててはいるものの、最初のメロディが次々に重ねられていくのがわかった。追いかけ始めるのが遅いのだ。
二人の間が非常に遠い追いかけっこだった。後の方ではもっとあからさまな追いかけっこになるが。
そうして、『カノン』もいまひとつ確証をもてないものの、時間をおいて追いかけているらしいことがわかった。
もっと他にカノンかフーガはないか。
『トッカータとフーガ』というのがあった。これは有名。
おなじみのメロディではじまるが、なかなか追いかけない。実はもう追いかけているのでは?本によるとカノンは“バカ正直”に真似をするらしい。ということは裏を返せば、フーガはそっくりそのままは真似をしていないかもしれない。そう考えると、メロディを変形して追いかけさせてるような気がしなくもない。
そんなことを考えているうちに、一旦曲が静かになり、こまごました感じで再開した。その後もしばらく聴いていたが追いかけているかはよくわからなかった。
CDの解説を読んで見ると、最初の○分○秒まではトッカータでこれは模倣しない。追いかけないのは当たり前である。こまごましたところからがフーガだったらしい。もう一度フーガのところを聴いてみると一つ目の追いかけくらいはなんとなくわかったが、他はいまいちわからないし『小フーガ』と違って難解な曲に思えた。
以上は筆者の「カノン」に関する体験である。筆者以外にも「カノン」と『かえるのうた』、「輪唱」のギャップに悩む子どもは結構いるのではないだろうか。
そんな子どものために、筆者が知っている追いかけがわかりやすいカノンを紹介する。少しでもカノンを理解する助けになれば幸いである。
知識不足により、いわゆるクラシック音楽の限られた分野からしか例を挙げられなかったが、ほかのジャンルでも良いカノンがあるかもしれない。
まず大変わかりやすいものとして、
F. ジェミニアーニ / 合奏協奏曲作品3 第2番 第4楽章
(F. Geminiani / Concerto Grosso Op.3 No.2)
がある。あまり有名な曲ではないので入手は難しいかもしれない。CDは大きな専門店でないと置いてないだろう。
注意深く聞けば最初のフレーズはまるまる正確に追いかけていることがわかる。通常はメロディがあってそれを使ってカノンにするのだと思うが、この曲では、まず追いかけがあって、それが結果的にメロディになっているような印象である。全体的にコンピュータでエコーをかけたような曲になっている。
ジェミニアーニの合奏協奏曲はたくさんあり、これは作品3という曲集の中の第2番である。第2番には4つの楽章(本でいうところの「章」)があり、そのうちの第4楽章を薦める。
ジェミニアーニよりは難しいが、手に入りやすいものとして
J. S. バッハ / ブランデンブルク協奏曲 第6番 第1楽章
(J. S. Bach / Brandenburg Concerto No.6)
がある。これは有名で、地元のCD屋にもあるかもしれない。少なくともレンタルCD屋にはある。
いろいろな楽器が使われていて面白い。バイオリンがおらず、ビオラが最高音という変わった編成である。バスが同音反復でズンズンやっているのもこの曲の魅力であると思う。
演奏者本人の投稿のようなので、著作権の問題はないと考え、YoutubeのURLを載せておく。
https://www.youtube.com/watch?v=-rNQCrfqdfk
この2つはバロック音楽と呼ばれ、フーガなど対位法が盛んに用いられた時代の音楽である。もう少し後の時代のものとして
L. v. ベートーヴェン / チェロ・ソナタ 第5番 第3楽章
(L. v. Beethoven / Cello sonata No.5)
を挙げる。最初そっくりそのまま追いかけているのがわかる。その後も律義に割と忠実に追いかける場面がしばしば見られる。チェロとピアノで演奏される曲だが、ピアノからは「両手あるんだぞ」という声が聞こえてきそう。
最後に、はじめから終りまでそっくりそのまま追いかける曲を紹介する。実はそういうものはむしろ少数派である。
G. Ph. テレマン / カノニック・ソナタ
(G. Ph. Telemann / Canonic sonata)
カノン的なソナタである。たくさん種類があるが、その内のひとつを演奏しているYoutubeのURLを載せておく。ホールが投稿しているらしく、違法投稿ではないはず。
https://www.youtube.com/watch?v=lWkEZ9wLgBA
そっくりそのままというのは一見すごいようだが、聴いてみると少し退屈。テレマンもバロックの人である。