2次正方行列は4つの行列に分解されます。



右辺の一つの成分が1で残りの成分が0であるような行列を
行列単位と言います。
単位行列(対角成分が1で他が0の行列)とは異なるものです。

2次正方行列は4つの行列単位の和で表されることになります。
(a,b,c,dといった係数は要りますが。)

行列単位どうしの間の関係をまとめておけば
行列の計算や公式の証明を見通し良くできることが期待されます。

右辺の行列単位を左から順番にe,f,g,hと書くことにします。
計算すればすぐわかることですが、掛け算に関する関係を表にまとめておきます。



この表だけだといまいち規則性が見えにくいかもしれませんが、
実はfとgさえあれば事足りることがわかります。

<f,gに関する公式>
(冪零性) ff=0,gg=0
(はさみうち)fgf=f,gfg=g
(変異)  fg=e,gf=h


変異公式により、eとhはfとgから作ることができるのです。

すると、この記事の最初に出てきたa,b,c,dの行列は(これをAとすると)

 A=ae+bf+cg+dh
  =afg+bf+cg+dgf

と書けます。あじさい



応用として、これを使って、

 trAB=trBA

を証明しましょう。



とします。

AB=(afg+bf+cg+dgf)(xfg+yf+zg+wgf)
  =axfg+ayf+bzfg+bwf+cxg+cygf+dzg+dwgf
  =(ax+bz)fg+(ay+bw)f+(cx+dz)g+(cy+dw)gf

BA=(xa+yc)fg+(xb+yd)f+(za+wc)g+(zb+wd)gf
(a←→x,b←→y,c←→z,d←→wと入れ替えれば速い)

trAB=ax+bz+cy+dw
trBA=xa+yc+zb+wd

となり示された。




あじさい
基本的なこととして、
2次正方行列Aをf,gで表したとき、その表し方が一通りしかないことを
確かめておきましょう。つまり、もし

 afg+bf+cg+dgf=a'fg+b'f+c'g+d'gf

と書けるならば、a=a',b=b',c=c',d=d'であることを確かめます。

a=a'を示します。両辺に右からfを掛けると、

 af+cgf=a'f+c'gf

両辺に左からgを掛けると、

 agf=a'gf
 (a-a')h=0

hは零行列ではないので、スカラーを掛けて0になるということは
スカラーが0でないといけません。よって、

 a=a'

となります。
b=b',c=c',d=d'も似たようなことをすれば証明できます。
(他の行列単位が消えるように右や左からf,gを掛けるのがポイントです。)

まあ、行列単位だということを考えれば一通りいし書けないのは
明らかかもしれませんが、一応証明しました。

こうして証明したことで、
2次正方行列の行列単位に限らず、一般にf,gで、

(冪零性) ff=0,gg=0
(はさみうち)fgf=f,gfg=g

を満たすものがあるとき、これらの性質に加え、

 λf=0⇒λ=0,λg=0⇒λ=0

も満たされるならば、
afg+bf+cg+dgfという表しかたは一通りである、ということがわかります。