関数の和・積は、標準的には、

前回の記事のように約束しますが、


ここでは、

分配法則が成り立たない例を作るために

別の和・積を定めることにします。


まず、

和は今まで通りとしましょう。



次に、積を以下で定めます。



   2つの関数 f、g の積 f×g は、xを入れたときの値を

         (f×g)(x)≡max{f(x),g(x)}

   で計算する関数であると約束する。


   注) 記号「max{,}」について

   max{A,B}とは、A、Bのうち大きい方のこと、とします。

   たとえば、max{5,3}=5です。

   <蛇足>細かいことを言うと、A=Bのとき、「どっちが大きいんだ?」と

         屁理屈を言う人がいるので、

         「A,Bのうち小さくない方」と言うのが正確なようです。




実は、これでは、困ることがあります。


たとえば、

f(x)=x^2、g(x)=sinx とすると、

g は最大値1を持ちますが、f は最大値∞?で、f は最大値を持ちません。

したがって、f+g も最大値∞?となり、最大値を持ちません。


あるいは、

                x (x<1)

f(x)=cosx、 g(x)= {

                0 (x≧1)

とすると、f+g はx=1で最大値2をとるかと思いきや、

gはx=1では、突然0になってしまうので、最大値になりません。



このような問題を解決するために、

以下の条件を課します。


    関数は、閉区間[0,1]で定義された連続関数とする。



  注) 「連続関数」について

    なんかものものしいですが、連続関数とは、

    グラフが1本の曲線であるような関数ということです。

    高校ででてくる関数は基本的には、連続関数ばかりです。

    連続でない関数は、上の g=x(x<1),0(x≧1) のような関数です。

    これはグラフを描くと、x=1のところで2つに分かれています。


この条件を満たす f、g を足したもの f+g もこの条件を満たします。

f+gが閉区間[0,1]で定義された関数であるのは、確かめられますが、

f+gも連続になるということは、ちゃんと示そうとすると、以外に大変なので、

ここでは、「f+gも連続になる」ことを証明なしに認めることにします。



さて、


   (f+g)(x)=f(x)+g(x)

   (f×g)(x)=max{f(x),g(x)}


で、関数の足し算・掛け算を定めたとき、分配法則は成り立つでしょうか。


f(x)=x (0≦x≦1)

g(x)=-x (0≦x≦1)

h(x)=1/2 (0≦x≦1)

とします。

これは、関数の条件を満たします。

字がつぶれていて、申し訳ないですが、グラフは以下の通り。




Accademia Nuts


(f+g)(x)=0 (0≦x≦1) より、

((f+g)×h)(x)=max{0,1/2}=1/2 (0≦x≦1)


一方、

          1/2 (0≦x≦1/2)

(f×h)(x)={

          x (1/2≦x≦1)


(g×h)(x)=1/2 (0≦x≦1)   より、


                  1/2 (0≦x≦1/2)

((f×h)+(g×h))(x)={

                  x (1/2≦x≦1)


となり、


   (f+g)×h≠(f×h)+(g×h)


分配法則が成り立たない例ができました。





「max」が掛け算だというのが、納得いかない人もいるかもしれません。

たしかに、なにをもって掛け算なのか、あるいはなにをもって足し算なのか

というのは、問題です。


案としては、

まず、ある二つのものから、別の一つのものを指定することを、

足し算、掛け算と呼びます。


   2と3から5を指定するのが、数の足し算であり、

   2と3から6を指定するのが、数の掛け算です。


これでは、足し算と掛け算の違いがないですから、

行列にならって、

足し算は交換法則が成り立つが、掛け算は成り立たなくてもいい、

ということにします。


でもこれでは、数の足し算・掛け算の場合、

「今まで足し算と読んでいたもの」を「掛け算」、

「今まで掛け算と読んでいたもの」を「足し算」と読んでもいいということになってしまいます。


そこで、

分配法則を見てみると、

(A+B)×C=(A×C)+(B×C)  ・・・①

ですが、

(A×B)+C=(A+C)×(B+C)  ・・・②

ではないことに気付きます。

このことから、①が成り立つように、足し算(+)と掛け算(×)を決める

というのは、よい思いつきであるように思えます。


このように、足し算および掛け算とは何かを考えると、上の考え方に従えば、

それらは、分配法則とは切り離せないもののように思えてきます。

分配法則によって、どちらが足し算で、どちらが掛け算か決めることができるからです。



今回、分配法則が成り立たない例を作りましたが、

本当は、分配法則が成り立たない時点で、

その+、×は、足し算と掛け算のペアとは呼べないのかもしれません。