この間、


『数と形の文化』(九州大学出版)を読んでいたところ、

ある章に、行列の由来が少し書いてありました。





『数と形の文化』を読むのが一番良いですが、


筆者のかなりあいまいな記憶によると、



その章には、

 4元数を発見したハミルトン、

 ケーリー・ハミルトンの定理で有名なケーリー、

 慣性法則で有名なシルヴェスター

が登場しました。



シルヴェスターは行列式の研究をしており、

数字を四角く方眼状に並べたものを使っていました。

ちょうど今の行列の感じです。

行列式は、行列よりずっと前から知られており、

当時、行列というものはありませんでした。


それを見たケーリーが、一次変換を表すのに、

数字を四角く並べたものを使ったのが、行列の始まりだった。




というものだったと思います。

あいまいな記憶なので、また本を確認しておきたいと思います。




行列式より先に行列を習ってしまうと、

行列式のある書き方から行列が生まれたというのは

わかりにくいかもしれません。


行列式というのは、

例えば、3次の行列式ですと、

次の3つのステップで計算される量のことです。


<ステップ1>

3×3=9個の数(11、12、13、21、22、23、31、32、33と名前を付けます。)から、

次の「組み合わせ規則」に従って数の“3つ組”(□▲、◇●、▽★)を作ります。


  組み合わせ規則

    3つ組に入っている数たちは、

    名前の左の数字(□と◇と▽)がすべて異なり、

    なおかつ、

    名前の右の数字(▲と●と★)もすべて異なる


つまり、

(11、22、33)、(11、23、32)、(12、21、33)、(12、23、31)、

(13、21、32)、(13、22、31)

という6種類の3つ組ができます。



<ステップ2>

各組の数を掛け、6つの積を作ります。

つまり、

11×22×33、11×23×32、12×21×33、12×23×31、

13×21×32、13×22×31

をつくる。


  注) 11とか22とかは、数ではなく、名前(番号)であることに注意。

     たとえば、11=2、22=11、33=-1なら、

     11×22×33=2×11×(-1)=-22である。



<ステップ3>

作った積を全部足し合わせるのですが、

次の「符号規則」に従って、作った積に+か-をつけてから

足し合わせます。


   符号規則

     3つ組(1▲、2●、3★)に対して、

     左の数字の大小と、右の数字の大小が逆のである

     2つの数の組の個数(反転数という)が

     偶数なら+、奇数なら-を付ける。


文言だけ見てもよくわからないので、具体的に見ていくと、


(11、22、33)では、左右の大小が逆になるものはないので+

(11、23、32)では、23と32が、左:2<3、右:3>2で逆なので-

(12、21、33)では、12と21が、左:1<2、右:2>1で逆なので-

(12、23、31)では、12と31が、左:1<3、右:2>1で逆、

            23と31が、左:2<3、右:3>1で逆なので+

(13、21、32)では、13と21が、左:1<2、右:3>2で逆、

            13と32が、左:1<3、右:3>2で逆なので+

(13、22、31)では、13と22が、左:1<2、右:3>2で逆、

            13と31が、左:1<3、右:3>1で逆、

            22と31が、左:2<3、右:2>1で逆なので-


となります。よって、行列式の値は、


 11×22×33-11×23×32

    -12×21×33+12×23×31

        +13×21×32-13×22×31


で計算できます。

このように、数につけた名前(背番号)をもとに、

一定の規則(組み合わせ規則と符号規則)に従って、

計算した値が行列式です。オレンジ



シルヴェスターとケイリ-の話からすると、

行列式を四角く書いたことから行列が生まれたということでしたが、

行列式の研究が一次変換につながる、具体的な関連性は筆者はわかりませんが、

上で述べたような計算をする行列式と、行列には次のような関係があります。


   det(AB)=detA・detB


つまり、積は行列式を計算する前後で保たれるということです。

これは、行列式と行列が結びつく基本的な式なので、

ケイリ-もこの関係を念頭に置いていたのかもしれません。

まあ、実際のところはわかりませんが・・・



ところで、「行列式」、「行列」という名前は、

行列式から、行列ができたという事実に合っていません。

これでは、行列が先にあって、「式」をつけて行列式と名付けたことになるからです。

もちろんこれは、日本語に翻訳したときに、このような変なことになったもので、

英語では、行列式は、determinante、行列はmatrixビールといいます。


行列式という訳語は、高木貞二が作ったもので、

高木以前の日本ではデテルミナントと音読みしていたそうです。

しかし、和算において、行列式が研究されていたという話を聞いたことがあるので、

行列式の概念は、高木以前どころか、江戸時代には日本にあったということになります。

和算では、行列式をなんと呼んでいたのでしょう? まさかデテルミナントではないでしょう。

気になりますね。


オレンジこうして計算してできた和のことを行列式というのであるが、

  行列“式”というからには、数値よりは、計算手順こそが本質的で、

  単なる数としての値(-4とか1.5とか)は、「行列式の値」とでも呼ぶべきであり、

  上述の赤字の文字式のように、計算がわかる“値”だけを、

  行列式と呼びたくなる。

  しかし、

  determinantを「決定値」(determine:決める)とでも訳せば、

  計算結果云々はあまり気にならなくなる。

  むしろ、数としての値(-4とか1.5)こそがdeterminantとも思える。

  こうしてみると、訳によって強調される性質が変わり、文中での

  使われ方にも影響を与えることが分かる。


ビール『数と形の文化』によると、

  行列にmatrix(母体)という名前が付いているのは、

  「行列式を生み出すもの」という意味からだそうです。

  行列式が行列より昔からあることがよくわかりますね。

  これも、筆者の曖昧な記憶ですので、

  是非『数と形の文化』を読んで確かめてください。

  行列という単語からは、母体という意味はまったく感じ取れないですが、

  行列そのものを見ていると、むしろ母体より行列のほうがあってる気がします。