物理です。
衝突とは、何でしょうか?
衝突は運動量の話とかで出てきますが、衝突とは何なのかは、
定義されていません。
筆者は、演習問題を解いていて、物体が接触するとき、
どこからどこまでが衝突といえるのか、と疑問に思ったことがあります。
その問題とは、
大きい物体Aと小さい物体Bがあり、
Aは床の上に、BはAの上にあり、AとBが違う速さで動くというものでした。
運動量保存則を使えば解けそうだと思ったのですが、
AとBは、はじめから接触しており、ずっと離れません。
運動量保存則を使うのは物体が衝突するときと考えていたので、
接触し続けていても衝突といえるのかですごく悩みました。
こんな話を聞くと、意味を良く考えず言葉だけを暗記するからいけないのだ、
と思う人がいるでしょう。
たしかにそうかもしれませんが、
運動量保存則を球の衝突の例で教えられると、
球が衝突する様子が強く印象に残り、
運動量保存には、衝突が不可欠な気がしてくるのです。
次で説明するように、運動量保存は必ずしも衝突がなくくても成り立つので、
衝突が何であるかを明らかにしなくても、上の問題は解けます。
運動量保存則が成り立つことは次のようにして示されます。
簡単のため、2つの物体A,Bの場合を考えます。
(上のA,Bとは関係ありません。)
ある時刻0秒から時刻T秒までのA,Bの運動量が保存することを示します。
Aが時刻t(0≦t≦T)に受ける力をF(A)(t)とします。
F(A)(t)とは、( )が2つもあって見慣れない表記ですが、
(A)はの方は、本当はFの右下に小さいAを書きたかったのを、
フォント的に小さいAがかけなかったので、やむなく(A)と書いだけです。
(t)の方は、Fがtの関数であることを表しています。
y=f(x)の(x)にそうとうするものです。
F(A)(t)というようにtの関数の形で書いたのは、
Aが受ける力が時間tとともに変化する場合も考慮に入れるためです。
あと力の向きは固定してください。たとえば右が正とか決めてください。
ベクトルを知っていいる人は、F(A)(t)はベクトルだと考えてください。
すると、Aが受ける力に関する、T秒間の力積は、
∫F(A)(t)dt
です。いきなり∫が出てきてなんなんだと思う人もいましょうが、
ようするに、横軸t、縦軸F(A)(t)のグラフが囲む面積のことです。
まあ、実際の問題では、力がt秒間ずっと一定の場合を考えるので
∫F(A)(t)dt = F(A)(t)×t
と思っておけば十分です。
ここでは、積分の話を詳しくするつもりはないので省略しましたが、
この記事での∫はすべて定積分で、範囲はもちろん
0≦t≦Tです。
Bが受ける力も同様にF(B)(t)とします。
力の向きはF(A)(t)で決めたのと同じ方向を正とします。
F(A)(t)を右向きのとき正としたなら、F(B)(t)も右向きのとき正です。
力積は、∫F(B)(t)ですが、F(B)(t)×tで十分です。
さて、AとBの力積を結びつけますが、
そのために、次の条件を課します。
<条件1>
Aが受ける力はすべて、Bからの力であること
及び
Bが受ける力はすべて、Aからの力であること
です。これを、「A,Bは外力を受けない」と表現することもあります。
つまり、AとBは自分らどうしで力を及ぼし合い、受け合うだけで、
他の物体(たとえば物体Cとか)からは力を受けないし、
他の物体に力を及ぼすこともない、ということです。
「A,Bは外力を受けない」というように、「受ける」話をしてきたのに
なんで、「及ぼす」方の話まで出てきたのか疑問に思う人が
いるかもしれません。
これはもっともな疑問ですが、
力学では、ニュートンの3法則を認めた上で理論を展開しており、
第3法則の「作用反作用の法則」を認めています。
ゆえに、たとえばAが力を受けると同時に、A力を受けた相手に
力を及ぼすと考えなくてはなりません。
F(A)(t)はAが受ける力であり、誰から受けるのかは指定して
いませんでしたが、<条件1>があると、
F(A)(t)は、Aが、“Bから”受ける力となり、誰から受けるのか特定されます。
F(B)(t)も同様に、BがAから受ける力となります。
作用反作用の法則より、
0≦t≦Tのどの瞬間にも、F(A)(t)=-F(B)(t)が成り立つ。
F(A)(t),F(B)(t)は同じ向きを正の向きとしているので
-がつくことに注意。
よって、
∫F(A)(t)dt = ∫{-F(B)(t)}dt
となります。
実際には、F(A)(t)×t=-F(B)(t)×tで十分です。
そこで、力積と運動量の関係より、
F(A)(t)×t=m×v(T)-m×v(0)
F(B)(t)×t=M×V(T)-M×V(0)
です。
Aの質量をm、速さをv、
Bの質量をM、速さをV、としました。
速さの向きは力に準じ、力のときと同じ方向を正とします。
ベクトルを知っている人は、速度と考えてください。
っていうか、向きとか言ってる時点ですでに
速さでなく速度のような気もしますが。。
で、赤の式3つを組み合わせると、
m×v(T)-m×v(0)=-M×V(T)+M×V(0)
すなわち
m×v(0)+M×V(0)=m×v(T)+M×V(T)
となり、Aの運動量とBの運動量の合計は、
時刻0から時刻Tの間で変化しません。つまり保存されます。□
ところで・・・
衝突の話です。
AとBが衝突するとき、AとBは互いに力を受け合い(及ぼし合い)ます。
力を受けない(及ぼさない)こともあるのでは?と思う人は、
F(A)(t)=0、F(B)(t)=0とすればよろしい。
上の議論では、AとBが力を受け合う(及ぼし合う)様子を、
衝突したかというような具体的状況については触れず、
「力F(A)(t)を受ける」などのように抽象的に表してきました。
これは、極端なことをいえば、AとBが接触せず遠隔作用(クーロン力や
重力、あるいは念動力??)によって力を受け合っても(及ぼし合っても)
議論が正しいということです。
よって、衝突しているかどうか、もっといえば触れているかどうかは
運動量保存に関係ありません。
では、衝突とは結局なんだったのか?
昔の筆者流に、運動量保存には物体の衝突が必要考えると、
衝突とは、触れて離れる場合はもちろん、ずっと触れたままの場合や、
そもそも触れていない場合も含んだ、力の受け合い(及ぼし合い)ということになります。
これでは、あまりに日常的意味での衝突からは遠い。
結局、衝突の定義ははその言葉を使う個人の主観により決まる
ということになりそうです。
筆者の主観からいうと、全体的に動いている物体が、まだ接触していない他の物体に
接触することを、衝突というのかなと今のところ思います。
接触後、離れても離れなくても衝突ですし、
他の物体の方は、動いていても止まっていても衝突です。
あと、全体的に動いているというのは、人がビンタをする(つまり、全体ではなく手だけが
部分的に動いての接触)のは衝突ではないと考えるからで、体ごとぶつかる様子を
表現しようとしたものです。
この定義は、即席のものなので、たぶん反例があるでしょう。