この記事は、続々『多項式の割り算~0で割る』であるともいえます。



本編・続編でやり残したのは、式変形ではなく「割り算」についてです。

問題をハッキリさせましょう。


 「多項式の割り算~0で割る」

    ↓

 「0で割る」とはなにか?

    ↓

 「割る」とはなにか? 「0」とはなにか?


というわけで、「割る」つまり「割り算」とはなんでしょうか。

素朴には、「6個あるももを3人で均等に分けると1人何個ずつもらえるか」が


   6÷3


であります。日常感覚に基づく定義は確からしいですが、

自然数の範囲から出るといろいろ面倒なので


  掛け算の逆演算が割り算である


と定義しましょう。


   2 → [×3] → 6

 に対して

   6 → [÷3] → 2


ということです。バナナ


   バナナこんな図を描いたのは、関数(写像)っぽくかけば

     “逆”演算の感じがでるかなぁと思ったからです。



すると0で割れないことはすぐわかります。


    2 → [×0] → 0

  に対して

    0 → [÷0] → 2

及び

    3 → [×0] → 0

  に対して

    0 → [÷0] → 3


となり、0÷0 は2になったり3になったりします。

つまり、0÷0は不定な(値が決まらない)のです。



一方、多項式では、


    x+1 → [×(x-1)] → x^2-1

  に対して

    x^2-1 → [÷(x-1)] → x+1

及び

    x+2 → [×(x-1)] → x^2+x-2

  に対して

    x^2+x-2 → [÷(x-1)] → x+2


x=1 を代入すると、先にやった数の割り算の例と同じになります。

しかし、x=1を代入するまでは、確かに割り算は成立しています。

xに値を代入しない限り、どんな多項式の掛け算に対しても、

それに対応する割り算は不定になりません。


そこで、代入するとはなんなのか考えることにします。

上図の多項式にx=1を代入してみます。ただし、ただ「入れる」だけです。


    1+1 → [×(1-1)] → 1^2-1

  に対して

    1^2-1 → [÷(1-1)] → 1+1   ・・・①

及び

    1+2 → [×(1-1)] → 1^2+1-2

  に対して

    1^2+1-2 → [÷(1-1)] → 1+2   ・・・②


計算してしまわないのがミソです。

計算してしまうと、


   ①は、0÷(1-1)=2   ②は、0÷(1-1)=3


となり、割り算[÷(1-1)]は不定になってしまいますが、

計算しなければ、1^2-1 と 1^2+1-2 は(形の上で)違うものであり、

割られる数が違うんだから、商 1+1(=2)、1+2(=3) が違うのは当たり前であり、

割り算[÷(1-1)]は不定ではないといえます。


割り算ができるための条件は不定でないことですから、

計算してしまわずに“形の上で”考える限り、(1-1)で割ることは可能です。

しかし、ひとたび計算してしまうと、掛け算の方は成り立ちますが、

割り算は不定になってしまします。

掛け算を割り算でなにが違うのか。

掛け算は、計算法則(加法・乗法の結合律・交換律・分配律)に則って計算すれば

成り立つことが示せますが、割り算はというと、

掛け算の逆演算と定義されただけで、どんな計算法則に従うのかわかりません。

ただ、掛け算の逆というだけであり、掛け算に依存しています。


では、逆演算とはなんなのか?

さっきも図でやってましたが、→をかいて逆関数みたいなイメージです。

「×」はいつでも成り立つのに、逆演算「÷」は成り立たないときがある。

「関数y=f(x)」はいつでもなりたつのに、逆関数「x=g(y)」は成り立たないときがある。

f(x)=x^2 とするとそうなります。


   x → [2乗する] → x^2


は、いつでも(どんなxに対しても)成り立ちますが、逆関数の方は


   x^2 → [2乗の逆をする] → x? それとも -x?


となり、不定です。

考えてみれば逆関数が不定になることはよくあります。

「×(掛け算)」も「y=x^2」の仲間なのです。したがって、


    x+1 → [×(x-1)] → x^2-1

  に対して

    x^2-1 → [÷(x-1)] → x+1

及び

    x+2 → [×(x-1)] → x^2+x-2

  に対して

    x^2+x-2 → [÷(x-1)] → x+2


において掛け算の方(赤)は成り立つが、逆である割り算(青)は成り立たない

のは、別に奇妙な現象ではありません。


すると、多項式の割り算といいながらも

記号「÷」を使わず、教科書・問題集でいつも掛け算の形で書かれているわけが

納得できます。

つまり、割り算は成り立たない場合があるから割り算の形では書かないのだと。

もちろん、割り算が成り立たないのは代入した場合であって、多項式のままなら

割り算型でもOKですが、代入することを見越して掛け算型にしているのです。

  (割り算型がOKなのは、代入してるのに計算してしまわない話を思い出せばわかる。

   計算してしまわないのが、つまり多項式・文字式なのだから。)

多項式の割り算を掛け算型で表現すると、代入しない場合はもちろん、代入してからも

式は成り立ちます。

ということで、「多項式の割り算とは掛け算の形に式変形することである」という考えに

また戻ってきました。