四則演算(足す、引く、掛ける、割る)を学ぶと
結合法則、交換法則、分配法則が出てきます。
結合法則とは、(a*b)*c=a*(b*c)
交換法則とは、a*b=b*a
分配法則とは、(a*b)#c=(a#c)*(b#c)
但し、*や#は演算の記号。具体的には、*に+、#に×を代入してみましょう。
*や#を使ったのは、上の法則が+や×以外でも成り立つことを踏まえたからです。
例えば、#は・(内積)としても成り立ちます。また、上の二つは*を×にしても成り立ちます。
a,b,cが実数のときは、「なにを当たり前のことを」と思っちゃいますが、
a,b,cがベクトルとか行列とかになるにつれて当たり前ともいいきれなくなってきます。
実際、行列の掛け算では交換法則が成り立ちません。
で、本題は分配法則でした。
分配法則は、結合法則、交換法則に比べ複雑な印象なので、
もしかして、結合法則や交換法則から導けるのでは?と思わず考えてしまいます。
しかし、実際にやってみると、導くのは難しい。。
教科書でも、分配法則を含め3つの法則は、成り立つものとして話が進められ、
証明は書いてありません。
但し、ベクトルの演算に関しては図形を用いた証明(説明?)が書いてあります。
そして、実数でも、長方形の面積に着目することで説明がつきます。
しかし、結合法則や交換法則から計算で分配法則を導くのは、できないようです。
難しいからといってできないとは限りません。
本当にできないといいきるためにはどうしたらいいでしょうか。
「結合法則と交換法則が成り立つが、分配法則は成り立たない」ならば
「結合法則と交換法則から分配法則を導けない」のは明らかです。
(もし、導けたら分配法則も成り立つことになってしまいます。)
模式化すると
結合○ 交換○ 分配×
ならば、
結合&交換 →× 分配
よって、
結合法則と交換法則が成り立つが分配法則は成り立たないような演算が存在すれば、
一般に、結合法則と交換法則から分配法則を導くことはできないと証明できます。
そのような演算はちゃんとあって、たとえば、
*を×、#を+とすると結合法則、交換法則は成り立ちますが、
分配法則は成り立ちません。
実際、(3×1)+2=(3×2)+(1×2) などとはなりません。
なんかアホみたいですが、この反例によって
結合法則と交換法則から分配法則を導くことはできないことは証明されました。
これを見て、なんかしっくり来ない人もいるでしょう。
それは、
一般にどうとかじゃなくて、
*が+、#が×の普通の場合に分配法則を導けるかどうかを
調べるんじゃなかったの?
と思うからではないでしょうか。
そこで、証明されたことを詳しく確認すると、
あるもの(実数やベクトルなどなど)の間に演算があって
その演算が結合法則と交換法則をみたすとき
結合法則と交換法則だけを用いて
分配も成り立つことは証明できない。
というものです。
+と×の間にある特有の関係(2×3=2+2+2とか)は全く考慮されていません。
したがって、
「*が+、#が×」の普通の場合であっても、
結合法則と交換法則だけから分配法則を導くことはできないのは確かであるけれど、
「*が+、#が×」の普通の場合に、
結合法則と交換法則及び+と×の間にある特有の関係(2×3=2+2+2とか)から
分配法則を導くことは、まだ不可能と決まったわけではないのです。
では、その特有の関係を考慮してみましょう。
それにはまず、この関係がなんなのかハッキリさせなければなりません。
自然数のときは、『a×b』とは『aをb回足すこと』と同じであるという関係が成り立ちます。
よって、自然数のとき、
(a+b)×c=(a+b)+(a+b)+・・・+(a+b) (特有の関係より)
c個
=a+a+・・・+a+b+b+・・・+b (交換法則より)
c個 c個
=a×c+b×c (結合法則より)
となり、結合法則を導くことができます。
実数のときも、特有の関係は同じですが、小数で表して極限を考えます。
めんどいので、具体例だけにします。
(π+1)×√3
=(3.1415926・・・+1)×1.7320508・・・
とりあえず小数第1位までで計算して
~(3.1+1)×1.7 (「~」はだいたいイコールの意味)
とりあえず小数第2位までで計算して
~(3.14+1)×1.73
同様に小数第二位までで計算して
~(3.1415926・・・p+1)×1.7320508・・・q (p、qはn桁目の数)
n→∞とすると
(π+1)×√3
=lim {(3.1415926・・・p+1)×1.7320508・・・q}
n→∞
=lim (3.1415926・・・p×1.7320508・・・q + 1×1.7320508・・・q)
n→∞
=lim (3.1415926・・・p×1.7320508・・・q) + lim (1×1.7320508・・・q)
n→∞ n→∞
=π×√3 + 1×√3
となり分配法則が成り立ちます。
但し、limの分配法則(lim(a+b)=lima+limb)は、limの中身が収束することに注意しましょう。
ここでは、
・実数は小数の極限としてもよい(ex. π=lim3.1415926・・・pでありlim3.1415926・・・pは収束する)
・実数は足し算掛け算ができる(ex. π×√3=lim3.1415926・・・p×1.7320508・・・qは収束する)
を仮定した(認めた)ので、上のようなlim計算ができます。
つまり、実数は小数の極限であるとともに、従来通りの素朴な実数であり足し掛けが自由にできる
と実数の性質を2つ仮定しているのでπ×√3=lim3.1415926・・・p×1.7320508・・・qの収束は明らかであるが、
もし、『実数を小数の極限で定義する』だけしか仮定しないと、
π×√3=lim3.1415926・・・p×1.7320508・・・qが収束するのは明らかではない。