歴史ニュース総合案内

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発掘も歴史政治も歴史作品も

 読売新聞に長く君臨した渡辺恒雄・前読売新聞グループ本社代表取締役主筆(1926~2024)の愛蔵書6441冊が「渡辺恒雄文庫」に収められ、4月10日から研究者向けに無料公開されている(事前申し込み制)。蔵書のうち約2000冊に主筆が線を引いており、思考法を辿る役に立つ。

 共産主義東大生でも共産党に除名されて入社した読売新聞の論調を保守化させた渡辺主筆は、ナベツネと呼ばれながら、日本最大の新聞を長く支配した。没後にも蔵書は残され、没後1年の2025年12月19日に大手町の東京本社の図書室が改装されて、その一角の木製書架に約1900冊を公開する文庫が設けられた。生前の執務机を閲覧用の机とし、記者だけでなく研究者にも公開し、戦後政治や思想史研究に役立てる。入り口には愛読書を収める展示ケースを置き、定期的に入れ替える。

 戦時の陸軍入隊中に主筆が愛読したカント『実践理性批判』が看板となる記念品に。政治部記者ゆえに政治思想の本もあるが、読書家としては西洋の哲学書を特に愛しており、保守派の好む日本文化論の蔵書は極めて少ないという。そもそも大学は東京帝国大学の文学部哲学科卒であった。癌の手術を受けた70代からは物理学の本が増えた。蔵書の3分の1に書き込みがあるのは、確かに名士としては多い方だ。

 自著としては、30代の処女作『派閥――保守党の解剖』が長く読み継がれてきた。提言報道で憲法改正論者となり中曽根康弘に接近しても、太平洋戦争の総括に当たっては軍国主義の復活に反対し続け、カントの平和論を志向した。