歴史ニュース総合案内

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発掘も歴史政治も歴史作品も

 岩波書店の総合雑誌「世界」が2025年12月号で創刊から1000号を迎えた。創刊号である昭和21年1月号もまた、新字新仮名に改めた上で1月29日に復刊されている。

 「世界」編集部は12月号と次の2026年1月号で連続して大特集を組んだ。後者「それでも人間を信じる」は現代向けだが、歴史寄りの12月号の特集「私たちはどう生きてきたか」では神戸市外大の山本昭宏准教授を筆頭論者に、戦後民主主義に果たしてきた「世界」の役割を多様な角度から取り上げた。

 

 吉野源三郎編集長による創刊時点では安倍能成(よししげ)や美濃部達吉、武者小路実篤といった戦前以来のオールドリベラルが主に寄稿していた。そこから丸山真男ら新世代が台頭し、編集方針が左傾すると、オールドリベラルが離れたが、サンフランシスコ平和条約の論争で全面講和論を載せるなど、戦後民主主義の思想空間の何たるかを本格的に提示してきた。大衆への接近を謳ったが、国際政治を中心に論じる編集方針もあり、高邁な雑誌と化していった。俗世間(ル・モンド)に疎いとの評は概ねその通りだろう。

 朝日岩波文化が戦後の「進歩的知識人」や大学講義の基調となっているが、実際には朝日の方が大衆路線で俗世に届く文化をつくりあげてきた。戦後民主主義文化への波及度を朝日と岩波で比べると、朝日が8割以上持っていくだろう。

 だが、朝日に対して、岩波の方はブレが少ないと思う。知識人が大上段に構えて論説する「吉野源三郎路線」は、SNSの世ではすっかりアナクロニズムだが、朝日の裏側でそうした雑誌があってよい。反原発や護憲、沖縄の定型的な記事に混ざって、新興国の動向を論じる記事が読み応えのあるところだ。

 

 「世界」の熊谷伸一郎元編集長が独立して「地平」という月刊誌を2024年に興し、似通った誌面構成をとっている。こちらは母体よりも運動家路線をとっているが、喧嘩腰の見出しをつけるWillとHANADAの極右雑誌兄弟(けいてい)に比べれば理性的である。そんな両誌よりも読者層が不寛容とするなら、その責は読者側にある。