常々思っていたことを書こうと思う.若手大学教員がどのような生活を送っているか,このたとえ話で少しでも外部の皆さんに実態が伝わればいいのだが.
研究者とプロサッカー選手の生き方は似ている(ただし,給与額の大きさなどが典型的であるように,相似であって合同ではない.これは以下のすべての話に当てはまる).
まず,そもそも研究職におけるポストの総数(サッカーで言うと,そのままプロ選手の枠)という絞り込みが発生するため,プロ研究者としてのキャリアを開始するためにはある一定の関門が存在する.
次に,ここから先が一般的な認知度が低い点であろうと考えられるが,近年のアカデミックポストは最初の絞り込みに含まれたから一生安泰,ではない.とくに近年の若手大学教員,および研究員のポストには任期が付いている.すなわちサッカー選手で言う契約年数である.というわけで,我々若手研究者は次のポスト(契約更新やステップアップ移籍)を目指して,日々戦い始める.
狙いとしては当然ビッグクラブ…すなわち,旧帝国大学と言われる大学(Jリーグのビッグクラブ,浦和やG大阪など.最近は以前の強さが影を潜めており寂しいものであるが…脱線してしまった)や,海外の著名な研究室の「ゲストリサーチャーではない」ポスト(欧州のビッグクラブへの完全移籍)である.若手研究者はこれらの枠へ飛び込むことを虎視眈々と狙い,研究室での研究活動の中で論文を生産し(好成績を挙げ),研究費(スポンサー)を獲得しながら売り込みを繰り返す.ちなみに実は海外の大学でも,ゲストリサーチャーとして潜り込むのはさほど難しいわけではない(ローンと完全移籍の違い).しかしながら,パーマネントなポストを獲得したいとなると格段に難易度が上がる.
このような競争社会であるので,世代内でのスター研究者というものも当然存在する.彼等はたとえばいきなり旧帝大のポストを得たうえにゲストリサーチャーとして海外に行って,完全移籍したり,そもそもキャリアのスタートが海外のパーマネントなポストであったりする.彼らはまさにスタープレイヤーである.
逆に,いちどコースから外れると,それなりの挽回が必要となってくる.ランクの落ちる大学に行くと,研究費がそもそも少ない→研究できない→業績が挙がらない→研究費の申請書を書いても落ちる(研究費の採否には,業績が重要なファクターの一つとなる)→研究費が少ない…という負のスパイラルに陥り,これを断ち切るのは困難となっていく.ちなみに,旧帝大などには優秀な研究者が揃っているため,研究に対するモチベーションが高い(チーム内競争が激しい)というポジティブな要素がある.
なので,若手のとくに国立大学に勤務する研究者を見て「いいね,税金で一生安泰で」という認識はあまり正しくないし,そのような認識を受けることは嬉しくはない.まったく我々の生活は安泰ではないし,むしろ競争に負けると数年というスパンで首になるという状況下で,自らのメンタルや能力の限界と闘いながら暮らしていることを,ほんの1ビットでもよいので「プロサッカー選手みたいなものなんだな」と理解していただけると幸いである.