【例題11】

高さ13m(測定面CL=9m)の建築Aの『時刻日影図』を観察して『等時間日影図』を考察してみよう。




前回の日記で書いた「根本的に正確ではない部分」とは何かの説明をしよう。

下図をご覧いただきたい。
3時間の等時間日影となる箇所を導き出し、なめらかな線で結んでみたところである。




この図面を観察すると、どうも赤い2本の線をなめらかに結ぶことにやや違和感がある。
どういうことかを検証するために、11時と14時の『時刻日影図』が交差しているポイントに“日ざし曲線メジャー”をかざしてみる。




“日ざし曲線メジャー”の9m等高線が建築Aと交わる部分をよく見ると下記のように日影が2回に渡って発生することが分かる。

 1回目の日影になる時間帯:10時24分~11時00分・・・0時間36分
 2回目の日影になる時間帯:13時45分~14時00分・・・0時間15分

                        計 0時間51分



すなわち、観測ポイントにおいて2回日照となる時間帯があるが、合計しても3時間の等時間日影とはならないということが分かった。

こういうポイントを逐一発見するのは骨が折れる。もちろん一定の法則に基づけば、そういう領域を探せないこともないが、極めて煩雑な作業になる上、時間をかけて見つけたわりに設計者にとってメリットが少ない。

従って『時刻日影図』の交点を利用して『等時間日影図』を作図する方法は比較的簡単に作図できるが、「2回日影になる領域」(専門書によってはx領域ということもある)に注意しなければいけない。
“日ざし曲線メジャー”で確かめれば、「2回日影になる領域」は明瞭になるが、どこまでの範囲が「2回日影になる領域」かを見極めることは困難であることは既に述べたとおりだ。

実務的には、最終的に日影ソフトに頼ること(もちろん日影ソフトを所有している建築士は最初っから日影ソフトを使うでしょう。)になるとしても、設計途中においてAutoCADしかないと仮定すれば、上記で解説した「2回日影になる領域」は極めて狭い範囲で起こることが分かっているので、安全側で設計しておけば、さほど正確な『等時間日影図』を要求する場面は少ないと言える。
そして5m、10m測定ライン上で規制値が際どい時だけ、“日ざし曲線メジャー”を使った指定点の日影時間を求め、適否を判定する方法が有効だと考えられる。


以上、これまでに『時刻日影図』と『等時間日影図』の“日ざし曲線メジャー”を使った作図方法を解説してきた。
次回から、より実戦に近い建築のモデルケースではどう取り扱うか解説してみよう。