ちょっと書いておく。
宣伝商品である車と、
出演されている役者さんに
対しては何もありませんので
誤解のないように。
引っかかるのは、このCMのシナリオなんです。
ハッキリ言って、センス無さすぎです。
CM内容の演出部分をシナリオにしてみると、
○山道のドライブコース
父親が運転する車が山道を走っている。
助手席には、失恋して泣いている娘。
父「もっとイイ男見つけろよ」
娘「パパみたいなって言うんでしょ?」
父「(したり顔で)悪いか?」
娘「……悪い」
娘、台詞の後で微笑む。
と、言う事になると思うのですが、その
父「悪いか?」
娘「……悪い」
の部分が、もう致命的に駄目で
折角の雰囲気を台無しにしていると思うのです。
これは、ボーイフレンドにフラれた悲しさを
父とのドライブで晴らす、という
こんな親子関係が今どきあるか?
と思わせる、かなりレアなシチュエーションですが、
別にその設定には違和感は感じません。
というよりも、佐藤浩市さんみたいな父親なら、
むしろあり得るシチュエーションにも思えます。
問題は会話そのものです。
この父娘は、一目で良好な関係である事が覗えます。
きっと、普段から親子間で十分にコミュニケーションが
持たれているのでしょう。
そうでなければ、娘が父親の横で無防備に泣いたりしません。
そんな部分からもCMはなかなか思わせぶりな
ドラマティックな雰囲気で始まります。
父「もっとイイ男見つけろよ」
の一言は、シリーズを通して完成している
佐藤浩市さんのキャラクターとして
良くハマっていると思います。
これに対する娘の応答
娘「パパみたいなって言うんでしょ?」
これも、この親子の間柄を完璧に表した一言であり、
観る人を、この短いストーリーにグッと惹きつけています。
また、この段階での娘役の刈谷友衣子さんの存在感が
異常に良いです。
この車の購買層である世のオヤジ達の気を引くだけの
可憐なオーラを見事に発しています。
と、ここまではカーCM・オブ・ザ・イヤーに値する
( ↑ そんなものはない )
出来栄えなのだが、この後がいけない。
父 「悪いか?」
この台詞のなんと ドン臭い
事か。この一言で、このCMの全てを台無しに
してしまってます。
なにが一体、駄目なのか。
ちゃんと理由があります。
そもそも、この娘には、
直接、父を否定するような一言を言わせては
絶対にいけなかったのです。
それなのに、
父に「悪いか?」と言わせてしまった事で、
娘の返答を極端に限定させてしまいました。
もう、娘は「悪い」 という無芸で単一的な
オウム返しの一言を返すしかなくなっています。
ちなみに、仮に娘がここで 「悪くないよ」 的な
返事を返してしまったら、
この二人はなんとも気持ち悪い謎の自惚れ親子に
なり下がり、コンセプトが全く違うものになってしまいます。
なので、このシーンは自信過剰な自惚れ親父に対し、
娘がダメを出す場面であるのは間違いありません。
でも、娘には父を露骨に否定させてはいけない。
では、父親の二言目は何と言わせればよかったのか。
ここは、父親には「まぁな」程度の一言で
勝手に気取らせておけば良かったのです。
○山道のドライブコース
父親が運転する車が山道を走っている。
助手席には、失恋して泣いている娘。
父「もっとイイ男見つけろよ」
娘「パパみたいなって言うんでしょ?」
父「(したり顔で)まぁな」
娘「……」
娘、父の自惚れに呆れて微笑む。
と、娘には言葉を言わせずに、
呆れさせるだけで十分効果的かと思うのです。
この方が、ずっと自然な感じが、私はします。
このCMのキャスティング上の主役は
飽くまでも父・佐藤浩市さんですから、
あえて娘の言葉で会話を結ぶ必要はありません。
また、下手な台詞よりも、娘の、涙の向こうにある笑顔で
締めくくる、その方がよほど印象的だと感じます。
では、
娘に「悪い」と否定させてはいけなかった
その決定的な理由は何か。
それは、
これは父が運転している車のCMだ
という部分にあります。
どういう事かというと、
このCMの設定では、
この車の持ち主は運転手である父です。
なので、そこには
持ち主(運転者)= 車(商品)
という図式(メタファー)が成り立ちます。
だから
父を否定すると言う事は、同時に、
父が運転している車をも否定する事になる
という危うさがある訳です。
「パパみたいな」
は
「この車みたいな」
とも置き替えられ、
それを「悪い」と否定する事は、
宣伝すべき商品そのものを否定する事にも
繋がりかねないのです。
だから、
娘に父親を否定する台詞を言わせては
絶対にいけなかったのです。
しかし、それでも、
実際のところ、オンエアされているCMは、
佐藤浩市さんと刈谷友衣子さんの魅力によって、
シナリオの甘さ、物足りなさを完全に補って相応の
完成度にしています。
基本設定はとても良いCMです。
この車のCMはシリーズ展開していて、
イメージキャラクターの佐藤浩市さんも
すっかり定着しているし、
良いと思います。
だからこそ、制作サイドは、
ただなんとなく役者頼みでCMを作るのでは無く、
しっかりとシナリオ設定から考えて
作ってほしいと思う次第でなのです。