2012/01/23 19:25


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『世界人口白書2011』より

 昨年10月31日に、世界人口が70億人を突破したとのニュースが全世界を駆け巡り、至る所で記念イベントが行われていたようです。が反面、この留まるところを知らない世界人口の増加を問題視する記事もあちらこちらで掲げられていましたが、私も同じくこの現象を危惧していた一人です。
 人類がこの地球上に認められる先史時代以降、長い年月を経て18世紀の半ば過ぎまでの人口推移はほぼ直線状の緩やかな上昇を辿っていたものが、イギリスに産業革命が起こって以降それが緩やかな上昇曲線へと変化しだし、1930年頃に20億人を越えて以来、直線が放物線の形状へと変化し、それからわずか30年後には30億人を越えるまでに増加しています。そしてそれから更に50年を過ぎた現在、とうとう70億人を越えてしまいました。このまま増え続けた場合、2100年には150億人をも越えるかもしれないという信じられないような数字が『世界人口白書2011』に記されています。
 現在、先進国で出生率の低下が問題になっている国がいくつかあるものの、逆に後進国や発展途上国に於いてのそれは、それこそねずみ算的に増え続けているというのが現状のようです。そしてその最も貧しい国々のいくつかでは、極度の貧困、食糧不足、高死亡率、高出生率が相互に関連して悪循環をもたらしています。
 『世界人口白書2011』にもこの問題が危機感を持って取り上げられており、その原因とその究明、そしてこれから早急になさなければいけない対策等について記されています。中でも「世界人口の43%は25 歳未満の人たちが占める。青少年が健康、教育、適正な労働条件を求める権利を要求できれば、彼らは経済発展と建設的な変化を促す強力な原動力になる。(中略)しかし、この人口配当の好機は短い間しか続かず、素早く活用しないとなくなってしまう。最貧国では、極度の貧困、食糧不安、不平等、高死亡率、高出生率が相互に関連して悪循環となっている。しかし、保健分野と教育分野への投資、とくに女性と女児の保健と教育に投資をして貧困を減らすことで、この悪循環は断ち切ることができる。」との記述は、現在も尚出生率の高い地域にて続いている女性の人権向上へ向けての改革こそ安定した経済と人口のバランスを保つためには必要で、早急に手を打つ必要があるということを指摘しており、この女性の人権向上、特にその為に必要欠くべからざる女性への教育問題こそが、上記の要因の歯止めとなるキーポイントだと現在世界の人口増加問題に携わっている多くの研究者たちも同様にそれぞれの研究論文の中で述べています。
 わが国でも、今のように女性の人権が認められるようになる以前は、男性に多くの子供を求められる傾向にありましたが、現在でも後進国や発展途上国においてはそれを感じることが出来ます。家族の規模の大きさは男のステータスであり、妊娠・出産の時期や間隔も含め子を産む女性の立場など蔑ろにされてしまいがちです。そして出産後の女性の死亡率の高さがこの傾向を顕著に表しているようにも見えます。このことはとりもなおさず女性の人権が軽んじられているという結果であり、この事実にメスを入れなければ状況の改善は望めないということに繋がります。
 ここで考えなければいけないのはなぜこのように女性の人権が確立されていないかということですが、アフリカ後進国或いは発展途上国にて顕著とされる『ケア労働」、つまり家族の食糧生産確保、水の調達から炊事・洗濯・育児・老人病人の介護といったこれらの労働は女性の仕事とされていて、またこれらはアフリカのみならず全世界の貧困地にも共通する古くからのシステムであり、これら現金収入と結びつかないケア労働は現金収入に結びつく労働に携わる男性のそれに比べあまりに評価されていません。それどころか、気候変動や人口増加による影響で増々女性の労働への重圧はかかる一方で、その軽減のために女児も手伝わざるを得ない状況で教育を受けるどころではありません。
 このような女性へ向けての教育が浸透した場合、社会・家庭における女性の役割に対する女性自身の考え方をも変化させ、彼女たちの生き方や子供の数をめぐる意思決定の際に、従来より強い発言力を持つことが可能で、そして親となった際、受けた教育がわが子の健康状態を維持するのに役立ち、そのの死亡率を下げ、結果的に、それまでの子供の死亡率の高さから多くの子供を出産しなければならなかった必要性をも相対的に失わせるという効果も併せ持ち、また、女性への教育は女性の婚期を一般に遅れさせる傾向をもたらし、これも間接的に出生数を減少させる要因となるということもまた多くの研究者によって実証されています。
 現在世界的問題となっている地球温暖化により予想される水や食糧の不足に加え、海面が今後上昇し続け人類が住むことの出来る陸地が減少の一途を辿っていくであろうことも指摘されていますが、『世界人口白書2011』にも指摘されているように、世界人口の43%を25歳未満の人達が占めている今この時期こそ、これからも私たちの子孫がこの地球上に住み続けていけるよう、私たち地球の住民が、それぞれの国という垣根を取り払い早急に貧困地域女性への教育普及に向けて行動を起こす必要を感じます。

 最近、テレビのCMやネットの広告にて、こういった国々の、やせ細った子供たちや病気で動けなくなった女性たち、更に親を亡くし兄弟だけで生きていかなければならない子供たちの姿が映し出され、そのような可哀想な子供たちへの支援が盛んに呼びかけられています。テレビ番組としては以前より主に報道などで取り上げられているのを目にしていましたが、そういった先進国に向けての映像が多くの人々の目にふれ注目されることにより、既に国際的援助機関や支援団体等を通して飢餓に対する食糧支援や衛生管理そして病気予防に対して力が注がれ、そのお陰で、(貧困地域のまだほんの一部だけの支援だとはいえ)本来ならば命を落としていたはずの人々がこれまでどれだけ多くその命を取り留めていることでしょう。
 が、問題は決して順調に解決に向かっているとは思えません。貧困という状態が解決されないまま命を長らえた子供たちがやがてそのまま大きくなると、更にその子たちが次々と育てることの困難な子供たちを産むようになるという悪循環がますます巨大化し、これまで程度の支援では追いつかなくなるであろうということです。こうなってしまうと貧困問題以前に食料生産すら乏しくなり、これまで以上に飢餓に苦しむ人々が溢れていくことでしょう。
 主に豊かな国の人々は、これまで食糧不足でやせ衰え死んでいく子供たちや病気に苦しむ人々の姿を見るに見かねて出来る限り救いの手を差し伸べてきているわけですが、このたび世界人口が70億人を突破したことを契機に、そのことがもたらす結果を真摯に受け止め、女性の人権確立や教育問題など、こういった現状を引き起こしている要因をまず先に取り除く方法へと考え直すことも視野に入れるべきではないでしょうか。
 戦争や飢餓などでやせ衰えた子供たちの映像を目にするのは辛いものです。ほんの少しの援助によってその中の一人でも助かるのだったらそうしたいと私も思います。が、その子がその後どう育っていくのかということまで考えると、つまり、その子の将来のみならずその子が他へもたらす影響なども含めて責任が持てるのかということまで視野に入れて考えると、もしその子の将来を受け入れてくれるシステムが構築されてないならば、いくら辛くとも見過ごさざるを得ません。自分が助けた子がもっと多くの悲惨な子供たちを生み出すかも知れません。或いはお金のために兵士になって多くの人を殺すかもしれません。そうなると、善意で行ったはずの自分の安易な行動が却って悲惨な状況を招くことに繋がりかねないと言うことです。
 上記のように、主に悲惨な環境の子供たちなど対象とした支援を続けている国際的支援機関や団体は多く存在し、またその殆どの団体が食糧支援や衛生だけでなく教育を含む環境改善なども活動の一環として記してはおりますが、配布されるカタログやインターネットサイト内での記述から見る限り、殆どの団体のそれの中に、命を救うことのできた子供たちへの今後生きていく為の長期的視野での環境づくり、中でも教育支援へ向けて具体的に取り組んできている活動内容や実績が見えてこないことが心配です。
 地球の環境問題も含め、これまで私たちが山積みしてしまった膨大な付けをそのまま子孫に負わせてしまわないようにする為にも、今後、私たち個人個人が現状を自覚し、可能な範囲ででも努力を重ねていきたいものです。