ビリー・ザ・キッドの
真実の歌を歌ってあげよう

彼がその生涯でどんな事をやったのか
歌ってあげよう



ところはニュー・メキシコ
うんと昔のことさ

44口径のピストルだけが彼の頼れる仲間だった


まだビリー・ザ・キッドがうんと若かった頃
シルバー・シティで悪の道に足を踏み入れてしまったんだ



西部のまっだだ中
ナイフを手に
彼が初めて人を殺したのは
まだ12歳の時だった


美しいメキシコ娘たちがギターを手に歌っている
無法者の若き親玉
ビリーの歌の数々をね



大人にならないうちに彼は悲しい生涯を閉じた
ピストルに刻まれた21のしるしは
彼が殺した人の数



哀れなビリーが死んだのは
不吉な夜のことだった
彼は仲間にこう言った

「まだまだこれからだぜ、俺は21人の男に鉛の玉をぶちこんでやったけど、22番目の餌食となるのは、保安官のパット・ギャレットだ」



こうしてビリー・ザ・キッドは最期を遂げた
大きな月が輝き
夜もうんと更けていた
シルバー・シティの守り神
パット・ギャレットに撃たれて


哀れな無法者の一生は
悲しい幕切れとなったのさ。






最近ライ・クーダーの
「紫の渓谷」
というアルバムを聴いている


ボトルネックギターの使い手として有名な彼の音楽は
フォーク、ブルース、カントリーの要素が入り混じっていて
ちょっと渋くてくせになる



この「ビリー・ザ・キッド」は
アルバムの2曲目の曲
アメリカの有名なトラディショナル・ソングなんだそうだ



このアルバムを聴いていると
場末のライブハウスで
酒とタバコの入り混じったよう
な匂いにつつまれて
ステージのライ・クーダーのギターに聴き惚れているような気持ちにさせてくれる…。






この季節になると思い出す映画がいくつかある


「ホワイト・クリスマス」
「グレンミラー物語」
「シェルブールの雨傘」
「シベールの日曜日」

どれもクリスマスの場面が印象的な映画だ


中でも切ない余韻がいつまでも残るのが

「シベールの日曜日」だ



1962年モノクロのフランス映画


インドシナ戦争で重症をおい記憶を失った元兵士ピエールは
駅で恋人のマドレーヌを待っていた

そこである父親が12歳の少女を寄宿学校に預けて逃げ去る一部始終を見てしまう
彼はその少女が気になり日曜日に寄宿学校を訪ねる

シスターは彼を父親と間違えて二人は外出を許される

「あなたはお父さんのお友達ね。分かってるわ、お父さんはこれないのね」

ピエールはなんと言っていいか分からず曖昧な返事を繰り返す

少女は彼が父親の友人だと思い自分の身の上話をする

父親が母以外に女を作ったこと
母親も男を作って家を出たこと
父親が祖母に自分を預けたこと
祖母は占い師で不思議な話をいろいろ聞かせてくれたけど
自分を邪魔に思ってること

だんだんと打ち解けていく二人


ピエールは思い切って彼女の父親がもうここに戻るつもりはないと言ったこと
自分は父親の友達でもなんでもないことを話す

「あなたはとてもいけないことをしているわ。わたしを騙して外に連れ出した。それにそのことを今まで黙っていたわ」

彼女の言葉にピエールはうろたえる

「でもこれは二人だけの秘密にしておきましょ。そのかわりにあなたは毎週日曜日にわたしに会いにこなくてはいけないわ。いいでしょ」

少女は大人びた目をして彼をなだめるようにそう言った


こうして彼は父親のふりをして日曜日ごとに彼女を誘い出して森の公園で遊んで過ごす


「わたしは学校でフランソワーズって呼ばれているけど、本当は違う名前なの。知りたい?わたしの名前?でもいまは駄目よ。あなたが教会のてっぺんにある風見鶏をとってきてくれたら教えるわ。だってあの風見鶏とてもきれいだもの」


親に捨てられた少女と
自分がどこの何者であるかもわからない青年


孤独な二人の心は通い合うが
周囲の人々はまるで恋人同士のように振る舞う二人に不信感を持つ


「あなたはいくつなの?」

「だいたい30ぐらいだと思う」

「わたしは12歳になったところだから…あなたが31の時わたしが13、あなたが35の時わたしが17、あなたが36の時わたしが18…。わたしが18になったら結婚しましょう。36歳ならまだ若いわ」

少女はまるで大人のような口ぶりでピエールに話す

「あなたってまるで迷子みたいだわ」



二人の密会は続き
その奇妙な関係は町の人々の目には怪しい男として噂になっていく

やがてその噂はマドレーヌの耳に入り
彼女はその悩みをピエールに仕事の手伝いを依頼している芸術家に相談する


「いいことじゃないか。彼はいま少年時代をもう一度経験しているんだ。彼が自分の人生を取り戻す為に必要な事なんだよ。信じるんだ。彼は変態なんかじゃない」

しかしマドレーヌの不安は消えなかった

クリスマスの夜
ピエールは留守の芸術家の家に入りこんでクリスマスツリーを担いで少女に会いにいく


少女はそのツリーに小さな箱を結びつけてピエールに開けるように促す

その箱の中には
少女の本当の名前が書かれた紙が入っていた


シベール


「美しい名前だ」

ピエールは微笑む



その頃
姿の消えた彼をマドレーヌは探していた
思い悩んだ彼女は仕事仲間の男に電話で相談する


ところが彼はピエールを危険人物と判断し
誘拐事件として警察に連絡してしまう


それを知って怒り狂うマドレーヌ



やがて一本の電話が彼女のもとにかかる

「容疑者は死にました」





警察官は眠っている少女にナイフを持って近づくピエールを見て射殺したのだ


目をさましたシベールに警察官が聞く

「君の名前は?」



「もう名前はないわ、誰でもない…わたしはもうなんでもない!」


少女は泣きながら叫んだ。









ポツンと生まれた

小さな命は



分裂とアポトーシスを繰り返しながら

星が生まれたように

命を育む




僕らの見えない小さな世界では

それとはうらはらに
ダイナミックな試行錯誤が少しずつ

だが確実に

命の意志に従って形成されていく




ほら

小さな細胞は

まるで

宇宙のように

無限に



広がってゆく