酔っ払ってしまった二人をなんとか起こして寮に帰ろうと思ったが、どちらも起きてくれなかった。

「ええやん、無理に起こさんでも。少し寝かせてあげれば、そのうち起きるで。」
ケイちゃんはあまり気にせずにそう言った。
細井さんも諦めてケイちゃんの持っていたゲームをやり始めた。

「二人とも、コーヒー入れようか?」

ケイちゃんの入れてくれたコーヒーを飲んでしばらく様子を見ることにした。

「ケイちゃんの叔母さん、いい人だね。」
僕が呟いた。


「せやろ、うち、叔母さん大好きやねん。一番頼りにしてるねん。」


「ケイちゃん…家族は?」


「………..、………、うちなぁ、お母さんもお父さんも知らんねん。小さい頃から叔母さんに預けられて育てられてん。」


「…… そうなんだ。」


僕は予想してなかった返事に返す言葉が見つからずに困ってしまった。

どういう事?

死別?生き別れ?

叔母さんってどっちかの姉妹?

一番触れて欲しくない話題だった?



「叔母さんな、和歌山で芸者さんをしてるねん。そんでな、いまでも時々電話してるんや。」
しんみりとした口調でそう言った。

「ふぅん、そうなんだ…」
続ける言葉に困った僕は
「さっきの電話で励まされたわ。オマケはオマケじゃない。頑張れ、って。」

ケイちゃんがニッコリと笑った。
「あはは。叔母さんらしいなぁ。うちもいつも元気をもらうねん。」


そんな話をしたり、テレビを見ていると12時近くになった。

突然、中井さんがムックリと起き上がり時計を見て驚いた。


「ケイちゃんごめんな。もう帰るわ。ほれ小野田ちゃん、起きて。」


なんとか小野田さんを起こして帰ることにした。


「ありがとうな。楽しかったよ、ケイちゃん。」

中井さんがお礼を言って千鳥足で寮まで帰って行った。


寮に帰るとすぐに布団を出して寝てしまった。

いつも元気いっぱいの笑顔だったケイちゃんの知らなかった人生を覗いてしまったような気持ちだった。


深い眠りに落ちていきながら、今日の会話が頭の中を駆け巡っていた。