新しい年が明け
やがて春が来た。
3月に僕らは母校を卒業した。
松本は一番の難関校と言われるA高校に合格したと聞いた。
僕は凡人クラスの行くO高校を受験し合格した。
卒業後の合格報告に中学校に行った時にみんなの中に松本を見つけた。
彼女は僕に気がつくとにっこりと笑った。
でもすぐに友達との会話に戻って行った。
それだけの事だったけどなんだか僕は救われたような気持ちになった。
結局僕らはまともに話すことなく別れた。
松本、君は偉いよ。
あんな事があったのに君は負けなかった。
周りの冷たい視線にも負けずに自分の信念を曲げずに自分の希望を叶えた。
僕は心から君を尊敬するよ。
僕は君といろいろ話せて本当に幸せだったよ。
ありがとう。
それが松本と会った最後になった。
僕らはそれぞれの生活の中で大人になって行った。
噂では松本は東京の大学に進学したらしいと聞いた。
僕は県内の私立大学に進学して社会人になった。
たまに中学の同窓会のハガキが届いたけど、出席する事は無かった。
中学での記憶は松本との思い出以外は薄く、他はあまり楽しいものでは無かった。
それに松本はクラスが違うから同窓会で会う事はないのだ。
卒業から10年経った時に全クラス合同の同窓会のお知らせのハガキが届いた。
そのハガキを見た瞬間に松本の顔が浮かんだ。
彼女、来るかな…
僕は悩んだ末に出席にマルをつけてポストに投函した。
会場は市内のホテルだった。
僕は精一杯のお洒落をして出かけた。
会場は沢山の若者で溢れていた。
久しぶりに会う懐かしい顔触れに自然と笑顔になり、昔話に花が咲いた。
楽しかった。
こんな事なら同窓会も出たら良かった。
当時の先生も10年の時を経て柔和なおじさんになっていた。
全部で100人ぐらいいただろうか。
あの時、6クラスで240人だったから半分にも足りなかったが多い方かもしれない。
松本は…?
見つけた。
彼女は花柄のシャツにベージュのジャケットを着てとてもお洒落だった。
驚くほど綺麗になっていた。
あの頃、日焼けしていた顔は色白で花が咲いたような可愛らしさだった。
松本は僕に気がつくとニッコリ笑った。
ドキドキした。
女の子に囲まれていた彼女になかなか話し掛けられず、やっと話せたのは一時間後ぐらいだった。
「 久しぶり。」
「 本当ね。本当に10年ぶりね。」
他愛のない話をしばらくしてやっと本当に言いたかった事を話した。
「 あの時は本当にごめんなさい。ずっと謝りたかったんだ。自分が始めた事なのに、君を巻き込んで、結局君だけに罪を負わせてしまって、本当にごめん。」
「 あぁ、あの事ね。いいのよあれで、あれが一番良かったのよ。」
「 そんな事ないよ。松本が逃げて、僕が捕まれば良かったんだ。…ずっと、松本に申し訳なくて…ずっと、謝りたくて、ずっと、後悔してたんだ。」
「 そんなに、悩んでいたの…。なんだかわたしの方が申し訳ないわ。」
「 だって悪いのは僕だから。」
「 あれは共犯なのよ。だからいいの。でも、あの時、男の子と一緒にいただろう、って何度も警察に言われたわ。」
ドキンとした。やっぱり分かっていたんだ。
「 それだけは嘘を突き通したの。だって、明くんといたって分かったら、大人はもっとゲスな事を考えるでしょ。私たちそんなやましい事してないし。わたし一人の事だったら受験勉強に疲れた中学生のイタズラで済むでしょ。だからいいのよ。」
「 ありがとう。でも…」
「 ねぇ、明くんはプールで泳いだこと、どう思ってる?」
「 えっ、うん、…あれは…最高の思い出だよ。中学時代の一番の思い出だよ。楽しかったし、あの夜の光景は一生忘れられない。」
「 うふふ、嬉しい。わたしも同じよ。明くんも同じ事思ってくれてたんだ。」
「 うん、大切な宝物だよ。だから、あれからずっと松本に会いたかったんだ。だから今日の同期会に来たんだ。」
「 わたしも。明くんに会えるかな、って思って。」
「 松本…、ありがとう。」
そろそろ同期会も終わりの時が近づいていた。
もっと松本と一緒にいたい。
なんとかしなくては。
「 松本、この後よかったらお茶でも…」
「 ごめん、明くん。もうすぐ彼氏が迎えに来るの。」
えっ?えっ?彼氏?
この展開で?
「 もう来る頃だから、じゃあね。今日は会えて嬉しかったよ。」
「 うん、僕もだよ…」
「 あっ、それからね。あの時黙っていたのはね。明くんを守りたかったの!」
そう言うと松本は出口に向かって去って行った。
松本…
君は…
君は、最高だよ
人は変わっていく
いつまでも昔のままではいられない。
あの頃、よく聴いたビョルンとベニーは
その後、二人の女性ボーカルを入れて四人組のグループになった。
彼らはヒット曲を連発し、誰もが知る世界的なグループになった。
彼らは四人の名前の頭文字を取ってグループ名にした。
彼らはアバと言う。
終わり