その夜は朝まで眠れなかった。


やっと明け方ウトウトしたと思ったら、

警察が家にやって来て逮捕される、という夢を見て泣きながら目が覚めた。


次の日はビクビクして一日を過ごしていた。


勉強して心の動揺を誤魔化すしかなかった。

いつ警察がやって来るかドキドキしていた。

家族と顔を合わせるのが辛かった。

両親には心の中を読まれてしまいそうで目を合わせられなかった。


警察はやって来なかった。


きっと松本もうまく逃げたに違いない。

もしかすると違う事件でパトカーが近くを通っただけかもしれない。

とにかくもうあんな事はやめよう。


僕は少しづつ落ち着きを取り戻していった。


それから一週間ほどして学年出校日があった。


僕は出来るだけ冷静を装いながら登校した。

教室に入ると10人ぐらいが集まってヒソヒソと何か話していた。

「 どうしたの?」


「 夏休みの間に警察に補導された生徒がいるらしいぞ。それも3年生らしい。」


ドキンとした。

まさかあの時に松本が…


「 誰が補導されたの?なんで補導されたの?」


僕はすがり付くように聞いた。


「 それがよくわからないんだよ。噂っていうか…」


「 でも単なる噂じゃないぞ。PTAの役員の親が学校から聞いた話らしいぞ。」


それを聞いて僕は地の底に落ちて行くような気持ちになった…


終わりだ…

間違いない。


あの夜、松本は補導されたのだ、

松本は全てを話したに違いない。

もう何もかも終わりだ。

僕も松本も…


やがて僕ら3年生はみんな体育館に集合するように言われた。


校長が壇上に現れて、マイクで話し始めた。

「 先日、非常に残念な事がありました。我が校のある生徒が夜中に学校の施設に無断で入り込み、近隣住民の通報を受けた警察に補導されました。

我が校の校長としてとても残念に思います…」


後の話は耳に入らなかった…


やはりそうだ。

あの時、松本は警察に捕まったのだ。

そうか近くの住民が通報したんだ。

やっぱり悪い事はできないな。

どこかで誰かが必ず見ているんだ。

松本はここに来ているのだろうか?

彼女に謝らないとな、

悪いのは僕なんだから、

初めにプールに忍び込んだのは僕なんだ、

松本は悪くない、


僕は落ち込んだ気持ちの中で松本を探した。

松本のクラスの生徒を順番に見て探した。

でも彼女はいなかった。


校長は、夜中に家を出ないように、夜家を出る時は必ず親と一緒にいるように、繁華街や学校には夜行かないように、

そんな事を話していた。


きっと僕も先生に呼ばれるのだろう。

僕が生活指導を受けるのは仕方ない。

悪いのは僕なんだから…

だけど松本は悪くない、

むしろ彼女は被害者なんだ、

彼女は僕につられただけなんだ…


僕はうつ向きながらそんな事を考えていた。


やがて僕らは教室に戻り担任の先生から

改めて夏休みの過ごし方について細かく指導を受けた。

きっとこの後、僕は職員室に呼ばれるのだろう…


僕と松本はこれからどうなるんだろう。

停学とか退学とか、なるんだろうか…

親を悲しませてしまうな。

僕は悪い子だ、

ごめんね、父さん、母さん…


そんなことを考えてるうちに帰宅の時間になった。

みんな帰っていったが僕は教室に残っていた。


誰もいなくなった教室に一時間ぐらいいただろうか。


おかしいな…


もうみんないなくなったのに先生が呼びにこない。


どうしたんだろう?


しばらくして先生がやってきた。


「 どうしたんだ?どっか具合が悪いのか?」


「 ???? …いえ、ちょっと」


「 そっか、ならいいけど、もうカギをかけるから帰りなさい。」


「 はい。」


何故なんだ。

僕は不思議な気持ちで教室を出た。


学校の門を出る時に振り返って校舎を見た。


もしかして、松本、君は…


そこまで考えた時、涙が溢れて止まらなくなった。


それが夏休み最後の出来事だった。