あまり長い時間いては危ないと思った。
プールの近くには民家がいくつも建っていた。
近隣住民にとっては僕は不審者だ。
警察に通報されたらかなりまずい事になる。
停学処分を受けたら内申書に何を書かれるか分からない。
パンツを脱いで絞って水を切って服を着ると段々と冷静になってきた。
もうこれっきりにしよう。
僕はまたフェンスをよじ登って外に出た。
自転車にまたがると深夜の町を走らせて家に向かった。
真夜中の信号機だけが輝いていた。
緑色と赤色の光がとても美しく感じ、今夜のショータイムのエンディングを告げているようだった。
子供部屋の窓から家に入りベッドに潜り込んだ。
すぐに寝ようと思ったが興奮して眠れなかった。
真夜中のプールで泳いだあの快感。
自分がまるで水中生物になったようだった。
あぁ、楽しかったなぁ…
でも、もうあんな事しちゃ駄目だ。
これっきりにしよう。
結局、朝になるまで僕は眠れなかった。
僕は結局そのまま学校に行くことになった。
眠くてあくびが出た。
その日の午前中にプールの授業があった。
消毒液に浸かってから入ったプールは昨夜の秘密めいたプールではなく平凡な顔をしていた。
僕は先生の表情をずっと見ていた。
何かに気づいていないか、
何か不審に思っていないか、
大丈夫だ
いつもと変わらない
ほっとした
睡眠不足のせいか、その日の授業は全く頭に入らず、家に帰るとすぐに寝てしまった。
それからはいつもの生活に戻っていった。
だが真夏の深夜勉強はあまりはかどらなかった。
そんな時にあのプールの出来事がいつも思い出された。
う〜ん
う〜ん
もう一度だけ行ってみようか…
僕は再び家を抜け出して自転車でプールに向かった。
プールの近くに自転車を止めてフェンスを登って中に入った。
その時、プールの中に人の気配を感じた。
「 だれ?」
驚いて僕は言った。
返事はなかった。
だがプールに何かがいると思った。
「 だれ?」
もう一度聞いた。
少し間を置いて水を泳ぐ音がしてプールから人が顔を出した。
「 見つかっちゃった」
そう言ってプールから出てきたのは女の子だった。
心臓が止まるほど驚いた。
「 わたし知ってる。あなた3組の明くんでしょ?」
誰だ?この子は?
プールから上がったばかりの彼女は髪が濡れて幼く見えた。
僕は彼女の目元、鼻の形を見て懸命に考えた。
あっ、分かった!
「 君は1組の太田だろう?」
女の子はにっこり笑って
「 当たり!正解です」
と言って笑った。